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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科27巻6号

1999年06月発行

文献概要

総説

脳梗塞とアポトーシス

著者: 寳子丸稔1

所属機関: 1大津市民病院脳・神経外科

ページ範囲:P.499 - P.504

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I.アポトーシスとは
 細胞死にはネクローシスnecrosisとアポトーシスapoptosisがある.ネクローシスは細胞外の環境の変化が細胞の生存のための許容範囲を超えておこるもので,細胞膜の破壊および細胞質の流出が起こる受動的なプロセスである.一方,アポトーシスは細胞外の環境の変化が許容範囲内であっても,外部からのシグナル等により細胞に内在するメカニズムで自ら死にいたらしめるものである.この内在するメカニズムにはエネルギーを必要とし,アポトーシスは能動的なプロセスである.実際,アポトーシスのあるものでは新たな遺伝子発現(すなわち新たな蛋白合成)を必要とし,cycloheximideやactinomycin Dなどの蛋白合成阻害剤やRNA合成阻害剤によりアポトーシスは抑制されるのである26)
 アポトーシスの語は木や花から葉や花弁が落ちることを意味するギリシヤ語であるが,これはアポトーシスが正常な組織から必要がなくなった細胞が脱落する正常なプロセスであることに由来する.アポトーシスではDNAが切断され細胞質および核の濃縮がおこり最終的にマクロファージにより貪食され除去される.この切断されたDNA(通常,約180bpの整数倍の長さのバンドとしてladderのように認められる)を検出したり,濃縮されたり分断された核を観察することによりアポトーシスが同定できる.しかしながら,アポトーシスに陥った細胞は数時間以内に貧食され除去されるために検出が困難であり,このことが,近年までアポトーシスが注目されなかった大きな原因の一つである26)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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