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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科27巻6号

1999年06月発行

文献概要

読者からの手紙

自己血輸血について

著者: 藤巻高光1 鈴木一郎1 桐野高明1 柴田洋一2

所属機関: 1東京大学脳神経外科 2東京大学輸血部

ページ範囲:P.591 - P.591

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 自己血輸血の歴史と脳神経外科(永井政勝:脳外26:1117-1122,1998)を大変興味深く読ませていただきました.輸血学の進歩により輸血が非常に安全に行われるようになった現在でも,永井先生のご指摘のように,HIV感染症や未知のウイルス感染症の危険性は完全にはなくなったとはいえません.その意味で理論的には非常に安全な自己血輸血は注目を集めつつあります.われわれも1995年12月より予定手術において自己血輸血を採用しており本誌に報告しておりますが1),その自己血輸血の先鞭をつけたのが脳神経外科手術であることを知り,大変感銘を受けました.永井先生が考察のなかにあげておられなかった自己血輸血の利点を追加させていただきたく本letterを書いている次第です.
 貯血式の自己血輸血は多くは血球と血漿成分との分画にわけて保存されますが,血漿成分を凍結後4℃で解凍する際にクリオプレシピテートが産生されます.これは血清中のフィブリノーゲン等よりなるもので,これより自己血由来のフィブリン糊を作成することが可能です.市販のフィブリン糊はヒト血液由来の成分を含み,製造工程で安全とするための多くの工夫がなされていますが,自己血由来のフィブリン糊がより安全であることは明白です.1回の採血で10ml前後のフィブリン糊が得られ接着力も十分です.われわれは頭蓋底外科,微小血管減圧術,硬膜縫合の補助などに用いて良好な結果を得ております.「必要に応じて輸血用血液が容易に届けられる現体制に安んずることなく」(永井)自己血輸血をより普及する努力の一環として,読者諸氏に自己血輸血の利点をアピールすべく本letterを書きました.また施設単位だけではなく血液センターでも自己血輸血に対応できるようにすることにより,より多くの患者さんが本法を享受できるものと思われ,将来の血液事業に期待したいと感じるものであります.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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