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総説
皮質形成異常(Cortical Dysplasia),特に限局性皮質形成異常(Focal Cortical Dysplasia)とてんかん
著者: 森岡隆人1 西尾俊嗣1 福井仁士1
所属機関: 1九州大学大学院医学部研究科脳神経外科
ページ範囲:P.605 - P.615
文献購入ページに移動限局性の脳異常(focal lesion)によるてんかんの頻度はてんかん全体の15-25%を占めるが,最近の神経画像診断技術,とくにMRIの進歩と普及により,てんかん患者で粗大な脳異常はもちろん限局性の微細な脳異常が発見される機会が増えてきた.このような限局性異常の中で神経細胞の生成・移動障害に起因する大脳皮質形成異常(異形成)cortical dysplasia(CD)は,MRIによって灰白質,白質の区別がはっきりとつくようになり,手術や病理解剖を待たずに臨床的に診断することが可能となった.さらに本疾患はしばしば難治性てんかんの原因となっていることが明らかになり,最近のMRI検査や手術摘出組織検索によると,CDは難治性てんかんの原因の20-45%に達するという.
このような脳皮質形成過程の異常による先天性の病変であるCDには,その異常が大脳全体に及ぶものから,ここで述べるfocal cortical dyspla-sia(FCD)のように皮質の一部に限局するものまでが含まれる.このFCDは,1971年のTaylorらによる手術例の報告以来,外科的治療の成績が優れたてんかん原性病変として強い関心が寄せられている40-44,60).本稿ではてんかん原性域としての大脳の限局性異常,とくにFCDを中心に臨床像,画像所見,病理像の特徴を呈示するとともに,最近の知見をreviewし,いくつかの問題点につき論述する.
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