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研究
脳底動脈巨大動脈瘤に対する親動脈閉塞術のモデル解析—瘤内の血流停滞を目的としたバイパス術の併用効果
著者: 長澤史朗1 川端信司1 川西昌浩1 山口和伸1 多田裕一1 太田富雄1
所属機関: 1大阪医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.723 - P.728
文献購入ページに移動顕微鏡手術あるいは血管内手術が発達した今日でも,脳底動脈巨大動脈瘤に対する直達術は困難な場合が多く6,16,18),瘤内血栓化を目的とした親動脈閉塞術が次善の治療法として施行されている2,3,5,7,23).しかしながらこの治療法にもいくつかの解決すべき問題がある.
第一の問題は,閉塞術に由来する脳虚血の予知である.この目的のためにバルーンを用いた親動脈閉塞試験が行われている.また側副血行路の形態から,少なくとも1本の後交通動脈の内径が1mm以上あれば安全であるという臨床結果17),あるいは後大脳動脈—上小脳動脈間の脳底動脈閉塞療法では1本の後交通動脈の内径が1.25mm以上,また両側椎骨動脈の閉塞療法では1.54mm以上が必要という実験結果10)が報告されている.第二の問題は,閉塞術が施行できても,瘤内血栓化が不十分なため塞栓症や動脈瘤の増大・破裂を来たす可能性である4,6,19,22).これに関して動脈瘤の血栓化に影響する2本の後交通動脈の内径比が0.60以上の場合には血栓化が期待でき1),また内径比0.60は瘤内血流半減期でおおよそ15秒に相当するとされている13).しかしながら形態的条件で決定される内径比を増加させることは不可能であるため,血栓化が困難と予測される低い内径比を有する症例への対策が問題であった.これに対して,後交通動脈の細い側の後大脳動脈に頭蓋内外バイパス路を設置すれば,内径比の増加に類似した血行動態的変化が得られると予想される.
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