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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科27巻9号

1999年09月発行

文献概要

総説

神経幹細胞の生物学的特徴とその治療への応用

著者: 内田耕一1 河瀬斌1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部脳神経外科

ページ範囲:P.787 - P.797

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I.はじめに
 哺乳類の神経系には,1012個もの多種多様な細胞が存在する.これほどの膨大な数の不均一な細胞により構成される神経系も,その発生の始まりは1個の受精卵でしかない.この受精卵が,本来の意味での幹細胞である.この幹細胞が,神経幹細胞や血液幹細胞のような各組織を構成する“組織幹細胞”となり,複雑に分化した個体を創り出していくものと考えられる.現時点でこの“組織幹細胞”の存在が明らかになっているものは,神経,造血器,皮膚,小腸腺上皮である.これらの組織には,比較的生存期間が短く,最終分化した成熟細胞を供給し得る未分化細胞集団が存在することが実験的に証明されている.これらの未分化細胞集団は,個体発生の初期のみならず成熟個体にも存在する.成熟個体におけるこの“組織幹細胞”の存在意義は,組織障害に際して損傷細胞を補填し修復することにある.しかしながら中枢神経系は,この神経幹細胞が充分に機能できる環境にないために,完全な機能修復に至らないことが殆どである.そこで,分子生物学的手法,細胞工学技術を駆使して,この神経幹細胞の生物学的特徴を理解し,神経幹細胞が充分機能できる環境を整えることが,その治療への応用を考える上で極めて重要である.本稿においては,この神経幹細胞の概念,生物学的特徴についてわれわれの研究データをまじえてレビューし,さらに脳内移植治療への応用の可能性についても紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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