icon fsr

文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科28巻12号

2000年12月発行

文献概要

未破裂脳動脈瘤のデータバンク

著者: 端和夫1

所属機関: 1札幌医科大学脳神経外科

ページ範囲:P.1044 - P.1045

文献購入ページに移動
 脳ドックの普及で日本では未破裂脳動脈瘤が年間1万例近く発見されます.そして半数近くは手術されるでしょう.これらの未破裂脳動脈瘤は,脳ドックでの発見率とくも膜下出血の発生率とから計算すると全体でおよそ年間0.5%,手術の対象となる5mm以上のものではおよそ1%の破裂率と推定されます.したがって5000人が手術されると10年後には500人のくも膜下出血が防げます.次の年も5千人が手術されればそれは950人となり,同じことが10年続けば2750人となります.今,日本の破裂脳動脈瘤手術件数は年間約2万件ですから,2010年にはくも膜下出血の10%以上の減少が達成されます.かつて日本の脳神経外科は破裂脳動脈瘤の急性期手術でパイオニアとなりましたが,いままた脳ドックと未破裂脳動脈瘤の手術で予防の先頭を切ることになります.急性期手術のときと同じで,手術に反対の声が外国から起こり,日本でも同調する人が出るかもしれません.破裂率がもっと低いのではないか,下手が沢山手術をして悪い結果となるのではないか,などという批判です.確かに破裂率に関しては今までの観察報告はあまり役に立ちません.なぜなら来破裂脳動脈瘤が臨床的に多様な病気であるという重要なことが忘れられているからです.脳幹部を圧迫している巨大脳底動脈瘤と脳ドックで見つかる小さな中大脳動脈瘤とは,天と地ほどの差があります.それらを一緒にした統計など数値は計算できても実際的な価値はまったくありません.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?