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扉
シベリアンハスキー
著者: 有田憲生1
所属機関: 1兵庫医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.400 - P.401
文献購入ページに移動娘が以前より,犬を飼いたいといっていた.その娘の中学進学が決まった3月,ある日知り合いの獣医さんから電話があった.子犬がいるので貰ってくれませんか,という.翌日が丁度日曜日だったので,朝7時前に起きて皆で出かけた,早く着きすぎて,獣医さんはまだ店を開けていない.日曜日の朝8時前,訪ねる方がおかしい.わかっていたけれど,娘が起きてしまったのである.獣医さんは少し早いな,という顔をして,ダンボール箱に入れた子犬を連れてきた.子犬は3匹いた.全部メスだ.獣医さんは,これは純粋なシベリアンハスキーですと説明してくれる.シベリアンハスキーは,体は黒で,脚が白いと思い込んでいた.子犬の体は焦げ茶で,脚は白である.しかも鼻も茶色だ.子供の頃,茶色の鼻の犬は賢くないと,親に教えられた記憶が蘇った.根拠はない.これは貰わずに帰った方がよい.だけど,断る理由を咄嗟に思いつけない.その間に事態は進んでいた,娘はどの1匹にするか,の選定作業にすでに突入していたのだ.本当は,3匹とも欲しいのである.それは無理なことがわかっている.そこで,戦略を,どの1匹にするか,に縮小していた.1匹は,耳が垂れている.獣医さんは,大人になれば耳は立ちますと説明してくれる.もう1匹は,目が青い.シベリアンハスキーの特徴である.残りの1匹は,獣医さんのくれたドッグフードを脇目もふらず,食べている.30分くらい迷った末,一番元気な3番目の子犬に決めた.家に着く前に,名前はチョビと決まった.風変わりな名前だと思われるだろう.しかし,丁度娘が「動物のお医者さん」という漫画本を読んでいたのである.主人公がハスキーで,名前はチョビだ.人気本で,今でも書店に並んでいる.娘は,もちろん全巻所有している.断っておくが,私は全巻読破する暇はない.ほんの2-3巻,目を通しただけである.しかし,結構面白い.子犬は,半年余りでオオカミのように成長した.体重は25kgを越える.あれから6年過ぎた.娘は,今度は大学受験である.以来玄関は,犬小屋替わりになってしまった.翌年の1月,阪神大震災の朝,大きな揺れで家中飛び起きたときも,キョトンと平気な顔をしていた.シベリアンハスキーといえばいわゆるバブル犬といわれ,一時もてはやされた.しかし大きくなるので,捨てられて野犬となり,ある地方では困っているという記事が新聞に出た.また朝の通勤電車にハスキーが乗り込んで,乗客が怖がって逃げたため,その車両はハスキー1匹となった,というテレビのニュース番組もあった.とにかくバブルがはじけて以後,この犬の人気は下降している.私の自宅の近辺でも,この6年間新しくハスキーが貰われてきた家はない.
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