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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科28巻8号

2000年08月発行

雑誌目次

疾患・人種・地域

著者: 遠藤俊郎

ページ範囲:P.670 - P.671

 仙台生まれで東北育ちの私が,初めて富山の地へ足を踏み入れたのは20年前(1979年)のことであった.富山—仙台間は約500キロである.当時は日本海側に高速道路はなく,前日夕方に仙台を出発,山形,新潟の両県をほぼ夜通し走り続け,ようやく新潟・富山県境の難所「親知らず」に到着した時はすでに朝9時を過ぎていた.トンネルを抜けた瞬間,疲れた私の目に飛び込んできたのが,右に波静かな日本海,左に山頂がうっすらと雪化粧した北アルプス立山連峰,そしてその間に広がる,稲穂が頭を垂れた富山平野の田園風景であった.その素晴しさに圧倒され,新しい土地への気持ちの高ぶりが一段と増したことを今でも鮮明に思い出す.以来,富山は私の第二の故郷となったわけであるが,生粋の東北人が富山に感じた当初の戸惑いは決して小さいものではなかった.気候風土の違いは当然として,住む人の風貌,言葉,ものの考え方など,わずか500キロ離れただけなのに,同じ日本人が何故にここまで違うのかというのが実感であった.たとえば,風貌は東北の丸顔系に比して富山は面長の人が多く,言葉は関西系でかなり乱暴に聞こえた.それまで仙台を起点に東北,北海道,関東の各地で生活・仕事の経験があったが,このような違和感は東日本の各地では一度も感じたことのないものであった.生活して初めて知る日本の広さであった.
 脳神経外科の仕事が始まり,この地域的特徴や東と西の違いを,改めて実感する事実に直面することとなった.頸動脈閉塞性病変との出会いである.脳梗塞の患者さんの血管撮影を仙台と同じスタンスで行っていると,かなりの頻度で頸動脈に狭窄病変を認め,特に東北地方では年1例の経験も稀であった高度の狭窄病変が,初年度のみで10例を超えたのである.1980年代前半までの日本の脳卒中地図では,死亡率は圧倒的に東北,北関東など東日本に高く,その原因は脳出血の多さにあった.西に行くほど死亡率は低く,疾患は脳梗塞が多い傾向を反映していた.学会発表でも,何となく東の施設からは脳出血の演題が多く,西からはバイパスなど梗塞関係の演題が多いとの印象もあった.頸動脈病変については,それ以前にカナダ,米国で多くの内膜切除手術を見る機会があり,その際は欧米人と日本人では人種,食生活も違うのだから当然のことと受け止め,正直何の疑問も感じていなかった.しかし富山で感じることとなった東と西の違い,あるいは富山の特異性については,われわれ同じ日本人に関するものであり,まさに強烈な疑問の対象であった.以来,頸動脈内膜切除術には積極的に取り組んできたが,その発生背景,特異性等については答えを得られぬまま過ごしている.富山へ来ての幸せは,鰤,蟹,甘海老,イカなどの新鮮で種類も豊富な富山湾の魚貝類を季節を問わず味わえることである.それ以上に素晴しいもので,他の地では口にできぬのが,立山より流れ出る「水」である.このあたりがひょっとして頸動脈病変が富山に多い原因ではないか,などと考えてもいるのだが…….

解剖を中心とした脳神経手術手技

傍鞍部病変に対するExtradural Temporopolar Approach

著者: 田宮隆 ,   大本堯史

ページ範囲:P.673 - P.684

I.はじめに
 近年,頭蓋底外科の進歩はめざましく,海綿静脈洞内あるいはその周辺の病変に対して積極的に手術が行われている1,3,9,32).特に,Dolencらはcombined epi-and subdural approach6),fronto-temporal epidural approach7),transcranial epi-dural approach8)等の硬膜外アプローチを応用して種々の病変に対し手術を行い,非常に良好な成績をあげている.また,これらの硬膜外アプローチを応用したDayら4)のextradural temporopolar approachは,海綿静脈洞のみならず,傍鞍部,視交叉下部,上部脳底動脈等の病変に対する非常に有用な手術方法であると考えられる.この手術方法の特徴は,海綿静脈洞外側壁硬膜浅層を剥離することにより,側頭葉先端部の静脈を犠牲にせずに側頭葉を硬膜外から後方に圧排することができ,傍鞍部や視交叉周囲,上部脳幹前側面の病変に対し十分な視野が得られることである.しかし,病変の種類,特に腫瘍の種類や大きさによって,その手術手技の応用に工夫が必要と思われる.
 今回われわれの行っている傍鞍部病変に対する硬膜外アプローチを応用したextradural temporo-polar approachの手術手技について説明し,代表的な症例を呈示して,種々の病変に対する応用を述べる.

研究

脳神経外科領域における真菌症,特に深在性真菌症に対する(1→3)-β-D-グルカン測定の有用性とフルコナゾール投与の重要性について

著者: 草彅博昭 ,   志村俊郎 ,   寺本明

ページ範囲:P.685 - P.690

I.はじめに
 最近外科領域での真菌感染症が増加傾向を示している.元来外科領域における真菌感染症は大侵襲手術・多発外傷・重度熱傷・高齢者・多くの合併症を有する患者などのcompromised hostに多いといわれている4).しかし脳神経外科領域においては,これに加え意識障害などが加わり,より一層真菌感染症に対する留意が必要と考えられる.いままでは真菌感染症は初期の診断が困難で,その治療方針も確立されているとは言い難かった.そこでわれわれは最近,真菌感染症の早期診断にきわめて有用と言われている血清学的診断法(1→3)β-D-グルカンを測定し,真菌感染の有無を判断,陽性のものに対して抗真菌薬であるフルコナゾールを投与,その抗真菌効果を検討したので報告する.

破裂脳動脈瘤術前後の大脳半球の脳代謝および高次脳機能の変化—1H-MR spectroscopyおよびWAIS-Rを用いた検討

著者: 小林正人 ,   高山秀一 ,   菅貞郎 ,   岡崎晶子 ,   美原盤

ページ範囲:P.691 - P.698

Ⅰ.はじめに
 近年,MR装置の進歩や脳ドックの普及に伴い,破裂以前の脳動脈瘤の診断率が向上し,未破裂脳動脈瘤の手術件数が各施設で増加している.未破裂脳動脈瘤の開頭による根治術は,手術の適応基準,手術法および注意点などについて様々な報告があり,ほぼ確立されつつある.開頭術に伴うmorbidityは3-5%とされており,安全に遂行される手術と考えられている.しかし,このmorbidityは主に神経学的あるいは神経放射線学的視点からの検討であり,高次脳機能の変化は考慮されていない.従来,くも膜下出血後の高次脳機能や脳循環代謝に関する研究4,7,9,10,20)は散見されるが,未破裂脳動脈瘤術後の高次脳機能や脳代謝物質の変化に関する報告2)は少ない.未破裂脳動脈瘤の手術はあくまで予防外科である.今後も増加するであろう未破裂脳動脈瘤術後の評価には,高次脳機能や脳代謝についての検討も必要であると考えられる.
 今回われわれは,未破裂脳動脈瘤患者に対し,手術前後にWechsler Adult Intelligence Scale re-vised(WAIS-R)13,19)およびmagnetic resonancespectroscopy(MRS)を計測し,本手術が高次脳機能および大脳半球の脳代謝に与える影響について検討したので報告する.

脳虚血病変精査中に発見された未破裂脳動脈瘤の治療選択と合併症

著者: 松本勝美 ,   赤木功人 ,   安部倉信 ,   坂口健夫 ,   田崎修 ,   富島隆裕

ページ範囲:P.699 - P.703

I.はじめに
 未破裂脳動脈瘤の外科治療において,脳虚血病変の有無は,動脈瘤の部位,サイズおよび年齢と並んで重要なリスクファクターとなっている6).脳虚血病変を合併した未破裂脳動脈瘤の直達手術の成績は合併症を有しない成績に比べ悪く,Wirth(1983)らの報告ではsurgical morbidityは11%で14),瀬川(1987)らの報告では27%13),小松(1994)らの報告でmorbidity,mortality併せて11.3%7),斉藤(1996)らの報告でも28%と11),種種の手術手技の向上にもかかわらず,成績はこの15年間改善していないのが現状である.一方1998年に発表された未破裂脳動脈瘤のInterna-tional Studyでは,くも膜下出血例を除いた未破裂脳動脈瘤のうち,サイズが10mm以下では破裂率が年間0.05%であるという結果が報告された13).この未破裂脳動脈瘤の自然経過については種々のバイアスが作用しているものの,今後の手術適応についてはきわめて慎重に決定しなければならないことを示唆している.筆者らは脳虚血病変を有する未破裂脳動脈瘤症例を年齢や脳血流,術前ADLなどをもとに治療の選択をした.手術合併症をきたした例をもとに脳虚血病変を有する未破裂脳動脈瘤の手術適応とその限界について考察した.

脊髄脱髄巣に移植されたSchwann細胞による機能回復の特徴

著者: 今泉俊雄 ,   ,   ,   本望修 ,   小浜郁秀 ,   端和夫

ページ範囲:P.705 - P.711

I.はじめに
 中枢神経の外傷,脱髄性疾患などの脱髄巣では,神経興奮に関わる軸索のイオンチャンネルが消失し,神経伝導が途中で遮断されたり,伝導速度が著しく遅延する1,8,9,14,20,21).機能回復には軸索の髄鞘形成とそれに伴うナトリウムチャンネルなどのイオンチャンネルの形成が必要であるが2,5,9,20,21),髄鞘形成を行うoligodendrocyte(OL)自体が障害される4,17).OLまたはOLのprogenitor cellは髄鞘形成能が低く18,21),したがって自然経過では十分な機能回復が望めないこともある.脱髄巣では軸索の断裂も認められるが21),OLは軸索の再生を抑制する16,19).このような理由から中枢神経の脱髄巣に髄鞘形成細胞である末梢神経のSchwann cell(SC),olfactoryensheathing cell(OEC)を移植して治療しようとする試みがなされており,実験的脱髄巣の髄鞘形成およびそれに伴うイオンチャンネルの形成,電気生理学的機能の改善が証明されている4-10,12,13,20).また,移植されたSC,OECは脱髄巣に共存する断裂した軸索の再生にも貢献する可能性がある9,11,15)
 Feltsらが初めて,endogeneous SCによる脊髄脱髄巣の機能改善を報告したが,正常に比較して十分な機能が得られなかった5).その後Honmouらも培養したSCとastrocyte移植による同様の脱髄巣の機能について検討したが,正常には改善していない7),OLとSCによって形成される髄鞘の違い,中枢神経軸索と末梢神経由来のSCとの関係,中枢神経軸索とSCが共同で形成する新たなイオンチャンネルなどが軸索の機能に影響すると考えられる.本論文では,移植されたSCによる有髄化された脊髄後索の電気生理学的性質を,同じくSCにて有髄化されている正常後根,OLにより有髄化されている正常後索と比較し,SC移植による髄鞘形成の機能的特徴を検討した.

症例

脳神経外科手術後のdiphenylhydantoin投与によるpure red cell aplasiaの2例

著者: 田中滋也 ,   東條秀司 ,   太良光利 ,   上津原甲一

ページ範囲:P.713 - P.717

I.はじめに
 脳神経外科領域では抗けいれん剤は繁用される薬剤であり,特にdiphenylhydantoin(DPH)は,脳神経外科手術に際して静脈注射により急速飽和ができる点から使用される頻度は高い4)
 DPHの一般的な副作用として皮膚症状,骨髄機能異常に加えて巨赤芽球性貧血,再生不良性貧血,溶血性貧血,白血球減少症などの血液系異常が出現することも知られている5).一方,脳神経外科手術後のDPH投与により,赤芽球系の産生のみが障害を受け赤芽球癆(pure red cell aplasia:PRCA)が出現したとの報告が散見され1-3,6-9.11,13-16,18,19,21,23-26),DPHと麻酔剤の相互作用により出現する可能性が示唆されている8,19).われわれは,このような2症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

頭蓋外内頸動脈解離性動脈瘤の一剖検例

著者: 鈴木一郎 ,   西野晶子 ,   鈴木博義 ,   桜井芳明 ,   荒井啓晶 ,   上之原広司 ,   鈴木晋介

ページ範囲:P.719 - P.724

I.はじめに
 頭蓋外内頸動脈動脈瘤は文献上まとまった報告は少なく,比較的稀な疾患と考えられる5,9,11,13,14,18).成因としては,感染性,解離性,動脈硬化性,外傷性,線維筋異形成などの血管変性,頸部の外科手術後,頸部の放射線照射後等が挙げられている9-11,13-15,18).最近は画像診断の進歩により偶然発見される動脈瘤が増加し動脈瘤の発生病態も明らかになりつつあるが10),非外傷性の頭蓋外内頸動脈解離性動脈瘤(extracranial internal caro-tid artery dissecting aneurysm:EICADA)の成因をはじめとして不明な点も多い.今回われわれは病理所見上動脈硬化が成因と考えられたEICA-DAの一剖検例を経験したので,病理組織所見を中心に文献的考察を加えて報告する.

内頸動脈閉塞に合併した後大脳動脈末梢部動脈瘤の1例

著者: 橋本祐治 ,   高山和浩 ,   井上道夫 ,   藤重正人 ,   山村明範 ,   中川俊男

ページ範囲:P.725 - P.729

I.はじめに
 脳動脈瘤の成因は中膜の欠損,結合織の脆弱化などの先天的要因に加え,後天的因子としてhemodynamic stressがその発生に重要な役割を果たしていると考えられている.
 今回内頸動脈の閉塞に伴い,中大脳動脈領域への側副血行路として後大脳動脈が発達し,その末梢部(P4 portion)に増大したhemodynamic stressの影響により発生したと考えられた脳動脈瘤の症例を経験したので報告する.

乳突天蓋部先天性骨欠損が原因で生じたAir in epidural hematomaの1例

著者: 若本寛起 ,   宮崎宏道 ,   冨田栄幸 ,   石山直巳

ページ範囲:P.731 - P.735

I.はじめに
 Air in epidural hematomaは,CTが普及する頃になってから認識されるようになり,比較的稀な所見として症例報告も散見されたが,その後の報告から,それほど稀な病態ではないと考えられるようになった.このような症例では骨折がair-containing structureに生じている例がほとんどであるが,空気の流入経路が不明な症例も存在しており,その原因は常に推測の域を脱し得なかった.今回われわれは,骨折がair-containing struc-tureに生じておらず,血腫により硬膜が骨より剥離されたことで乳突天蓋部の骨欠損部から空気が流入した症例を経験したので,この稀なる病態について,若干の文献的考察を加え報告する.

脳室洗浄療法により治癒せしめた外傷後重症脳室炎の1例

著者: 和田司 ,   黒田清司 ,   吉田雄樹 ,   守口尚 ,   西川泰正 ,   小川彰 ,   谷口繁 ,   斎藤和好

ページ範囲:P.737 - P.743

I.はじめに
 重症脳室炎は予後不良の病態であるとされているが,持続脳室内灌流療法8)(continuous intra-ventricular irrigation:以下C.I.V.I.)による救命例の報告が散見される1,9,11).われわれは重症脳室炎,髄膜炎に対しC.I.V.I.よりさらに積極的に脳室内を洗浄する脳室内洗浄療法(Intraventricular Lavage:以下I.L)を試み良好な結果を得た.本症例の臨床経過およびI.L.の利点について文献的考察を含め報告する.

読者からの手紙

北朝鮮における脳神経外科

著者: 金景成

ページ範囲:P.745 - P.745

 筆者は今回,米国,中国,ウズベキスタン,そして日本在住の韓国/朝鮮人医師と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)医師達によるThe Second Pyongyang Joint Medical Symposiumに参加する機会を得た.本会は今後国際学会へ発展することとなっており,日本との医学交流においても重要な位置を占める可能性が示唆されている.一方,近くて遠い国という印象が強い北朝鮮の情報は非常に少なく,その情報にも様々な思惑の中修飾されたものが多いと思われ,今回の訪朝を機に北朝鮮医療の現状を脳神経外科領域を中心に紹介する.
 北朝鮮の人口は約2000万人といわれているが,脳外科医は現在全国で120人程度である.その殆どが平壌にある平壌医科大学病院,軍病院,赤十字病院,そして在日コリアンが作ったユニークな金万有病院の4病院に北方のハムン医科大学病院を加えた5病院に集中しており,主にその5施設でmicrosurgeryが行われている.各施設には20人前後の脳外科医が30-50床のベッドを抱え,年間250-350件の手術を行っている.それら5施設を含めた幾つかの病院にCTおよび血管撮影機器は設置されているが,MRIは北朝鮮全土で2台あるにすぎない.また,消耗品の節約のため基本的に画像はフィルムに現像せず,現像した場合も様々な理由をつけて各医師が大切に机の奥にしまってしまう.

報告記

The 6th International Workshop on Cerebrovascular Surgery(6/4-7, Seuol)

著者: 長嶺義秀

ページ範囲:P.748 - P.749

 第6回IWCVS(The 6th International Workshop onCerebrovascular Surgery)は2000年6月4-7日,韓国の首都Seoulで開催された.会長はYonsei大学のKyu-Chan Lee教授である.3年前,九州大学福井仁士教授会長のもとに第5回IWCVSが第26回日本脳卒中の外科学会にひき続いて福岡で開催されたことは記憶に新しい.本Workshopの第1回目は1987年菊地晴彦先生を会長として東京で開催された.当時はInternational Workshop on Cerebral Aneurysmsという名称であったが,第3回高倉公朋教授会長の時から現在の名称に変更された.以後,原則的には3年に1回の間隔で開催されている.その歴史的経過の詳細は九州大学池崎清信先生の記された第4回IWCVSの報告記(脳卒中の外科23:483-484,1995)を参照されたいが,今回の第6回開催に先立ちある会議が横浜で開催された.それは日本脳神経外科コングレス総会の会期中に開かれた「IWCVS運営委員会」である.本委員会の議題は次期開催地および次期会長候補を決定することであり,第5回(日本),第6回(韓国)のIWCVS committee memberと日本脳卒中の外科学会運営委員が参加して行われた.第5回会長の福井教授と第5-6回IWCVSのSecretary General東北大学吉本高志教授の2人が司会をつとめ,以下のことが決定された.1)日本で始まった会であるので,日本と外国とで交互に開催すること,2)本会は今後日本脳卒中の外科学会事務局がお世話させていただくこと,の2点である.そこで順番として次回は日本に一度戻すことになり,参加者から次期会長候補の推薦と投票が行われ,福島県立医科大学児玉南海雄教授が第7回会長として選出された.

International Symposium on Syringomyelia(脊髄空洞症・国際シンポジウム)報告記

著者: 長嶋達也

ページ範囲:P.750 - P.751

 「脊髄空洞症」の実験的研究,病態生理,治療までを包括する初の国際学会が,平成12年(2000年)6月16日(金)-17日(土),神戸ポートピァホテルにおいて玉木紀彦会長(神戸大学脳神経外科・教授)のもとで開催されました.脊髄空洞症は脊髄内に空洞を生じる原因も多様な複雑な病態であり,しばしば永続的な脊髄機能障害を残すため,患者さんに大きな苦痛を与えます.近年の磁気共鳴画像診断法の急速な普及によって,脊髄空洞症の診断と治療に著しい進歩が得られつつあり,時宣を得た国際学会であったといえます.
 わが国では平成5年から10年の6年間にわたり厚生省の研究費を得て,国立精神・神経センターの研究班5公-3「脊髄空洞症及び二分脊椎症に伴う脊髄病態及び治療に関する研究」(玉木班)ならびに8公-5「難治性の脊髄空洞症と二分脊椎症に伴う脊髄機能障害の治療と予防に関する研究」(玉木班)が結成されて集中的な研究が行われ,診断・治療に大きな進歩が得られました.この学会は,本研究班の6年間に及ぶ活発な研究成果をふまえて,海外の著名な研究者を招いて“Interna-tional Symposium on Syringomyelia”として開催されたものです.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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