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疾患・人種・地域
著者: 遠藤俊郎1
所属機関: 1富山医科薬科大学脳神経外科
ページ範囲:P.670 - P.671
文献購入ページに移動脳神経外科の仕事が始まり,この地域的特徴や東と西の違いを,改めて実感する事実に直面することとなった.頸動脈閉塞性病変との出会いである.脳梗塞の患者さんの血管撮影を仙台と同じスタンスで行っていると,かなりの頻度で頸動脈に狭窄病変を認め,特に東北地方では年1例の経験も稀であった高度の狭窄病変が,初年度のみで10例を超えたのである.1980年代前半までの日本の脳卒中地図では,死亡率は圧倒的に東北,北関東など東日本に高く,その原因は脳出血の多さにあった.西に行くほど死亡率は低く,疾患は脳梗塞が多い傾向を反映していた.学会発表でも,何となく東の施設からは脳出血の演題が多く,西からはバイパスなど梗塞関係の演題が多いとの印象もあった.頸動脈病変については,それ以前にカナダ,米国で多くの内膜切除手術を見る機会があり,その際は欧米人と日本人では人種,食生活も違うのだから当然のことと受け止め,正直何の疑問も感じていなかった.しかし富山で感じることとなった東と西の違い,あるいは富山の特異性については,われわれ同じ日本人に関するものであり,まさに強烈な疑問の対象であった.以来,頸動脈内膜切除術には積極的に取り組んできたが,その発生背景,特異性等については答えを得られぬまま過ごしている.富山へ来ての幸せは,鰤,蟹,甘海老,イカなどの新鮮で種類も豊富な富山湾の魚貝類を季節を問わず味わえることである.それ以上に素晴しいもので,他の地では口にできぬのが,立山より流れ出る「水」である.このあたりがひょっとして頸動脈病変が富山に多い原因ではないか,などと考えてもいるのだが…….
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