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研究
脊髄脱髄巣に移植されたSchwann細胞による機能回復の特徴
著者: 今泉俊雄123 本望修123 小浜郁秀123 端和夫1
所属機関: 1札幌医科大学医学部脳神経外科 2エール大学医学部神経内科 3VAメデイカルセンター神経科学研究所
ページ範囲:P.705 - P.711
文献購入ページに移動中枢神経の外傷,脱髄性疾患などの脱髄巣では,神経興奮に関わる軸索のイオンチャンネルが消失し,神経伝導が途中で遮断されたり,伝導速度が著しく遅延する1,8,9,14,20,21).機能回復には軸索の髄鞘形成とそれに伴うナトリウムチャンネルなどのイオンチャンネルの形成が必要であるが2,5,9,20,21),髄鞘形成を行うoligodendrocyte(OL)自体が障害される4,17).OLまたはOLのprogenitor cellは髄鞘形成能が低く18,21),したがって自然経過では十分な機能回復が望めないこともある.脱髄巣では軸索の断裂も認められるが21),OLは軸索の再生を抑制する16,19).このような理由から中枢神経の脱髄巣に髄鞘形成細胞である末梢神経のSchwann cell(SC),olfactoryensheathing cell(OEC)を移植して治療しようとする試みがなされており,実験的脱髄巣の髄鞘形成およびそれに伴うイオンチャンネルの形成,電気生理学的機能の改善が証明されている4-10,12,13,20).また,移植されたSC,OECは脱髄巣に共存する断裂した軸索の再生にも貢献する可能性がある9,11,15).
Feltsらが初めて,endogeneous SCによる脊髄脱髄巣の機能改善を報告したが,正常に比較して十分な機能が得られなかった5).その後Honmouらも培養したSCとastrocyte移植による同様の脱髄巣の機能について検討したが,正常には改善していない7),OLとSCによって形成される髄鞘の違い,中枢神経軸索と末梢神経由来のSCとの関係,中枢神経軸索とSCが共同で形成する新たなイオンチャンネルなどが軸索の機能に影響すると考えられる.本論文では,移植されたSCによる有髄化された脊髄後索の電気生理学的性質を,同じくSCにて有髄化されている正常後根,OLにより有髄化されている正常後索と比較し,SC移植による髄鞘形成の機能的特徴を検討した.
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