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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科29巻1号

2001年01月発行

雑誌目次

21世紀を担う若い皆さんへ

著者: 児玉南海雄

ページ範囲:P.6 - P.8

『新世紀ならびに新年,おめでとうございます』
 年の初めには“心新たに”という気持ちが湧いてくる.まして100年に1度の新世紀を迎え,誰もが心に期すものがあると思う.

総説

Functional electrical stimulationによる運動機能再建術

著者: 市江雅芳 ,   半田康延

ページ範囲:P.11 - P.20

I.はじめに
 脳卒中や脊髄損傷による中枢性運動麻痺に対しては,残念ながら現在のところ根本的な治療法がない.また,中枢性運動麻痺では末梢神経および被支配筋が生理学的な興奮性を持っているにもかかわらず,その機能を遂行することができない.そこで,中枢神経を経由せず,直接末梢神経および被支配筋を電気的に興奮させ動作を得る方法が考えられた,これが運動系の機能的電気刺激(functional electricai stimulation;FES)である.この分野は近年急速に臨床研究が進み,本邦では東北大学,秋田大学,大分医科大学,北海道大学の4大学において,高度先進医療として治療が行われている.
 本稿では,まずFESの研究領域を紹介し,次にリハビリテーションにおける運動系FESの臨床応用について解説する.

研究

くも膜下出血後の脳血管攣縮に対する携帯型注入ポンプシステムによるニカルジピン持続髄注療法

著者: 藤原和則 ,   三河茂喜 ,   鮱名勉

ページ範囲:P.23 - P.30

I.はじめに
 今回われわれは,くも膜下出血患者の術後に,携帯型ディスポーザブル注入ポンプシステムを用いて薬物を簡便に髄腔内投与する方法(以下,本法)を試みた.本法では1回の手技で約8日間分の薬液がセット可能である.2週間の投与メニューの場合には,手術室でセットした後は,病棟では8日目に1回だけ薬液を補充すればよく,手技はきわめて簡便である.また,病室での患者体位に制限が少ないため日常管理も容易である.今回5例のくも膜下出血患者に,脳血管攣縮の予防を目的としてニカルジピン持続髄腔内投与を行ったので,その有用性や問題点について報告する.

ナビゲーションシステムを利用した経蝶形骨洞手術

著者: 阿部雅光 ,   鵜殿弘貴 ,   田渕和雄 ,   内野晃

ページ範囲:P.31 - P.38

I.はじめに
 近年,低侵襲脳神経外科治療(minimally inva-sive neurosurgery)が脚光を浴びるようになり,トルコ鞍部病変に対する経蝶形骨洞手術においても内視鏡下に手術の全行程を行う方法が報告されている5,8,12).顕微鏡下経蝶形骨洞手術においても必要最小限の切開,剥離で操作が行われるようになった2,6,10).通常,狭い術野ではより正確なオリエンテーションを必要とするが,このような手術操作を支援する技術として手術ナビゲーションが急速に発達し,最近では実用的な機器が開発されてきている7,11,13).われわれはナビゲーションシステムを利用した経蝶形骨洞手術を行ってきたので,今回その有用性と問題点について検討を加え,報告する.

慢性硬膜下血腫における術後残存空気と再発の関係

著者: 塩見直人 ,   笹島浩泰 ,   峯浦一喜

ページ範囲:P.39 - P.44

I.はじめに
 慢性硬膜下血腫は外科的に根治可能であるが,しばしば再発が問題になり,再発率は1.7〜38%である4,7,11).開頭血腫除去術と穿頭血腫洗浄術による再発率に差がないとされることから3,8),高齢者に頻発する本疾患においては,局所麻酔下で行える穿頭血腫洗浄術が低侵襲2)である.再発要因は多様であるが,とりわけ,術後の残存空気が注目されている1).今回,残存空気の速やかな排気の目的で慢性硬膜下血腫洗浄後にドレナージ挿入経路を内視鏡を用いて決定し,ドレナージ先端を血腫の最前頭側に留置することを試み,2,3の知見を得たので報告する.

脳動静脈奇形におけるPET activation studyの有用性について

著者: 井戸坂弘之 ,   黒田敏 ,   宝金清博 ,   阿部弘 ,   志賀哲 ,   玉木長良

ページ範囲:P.45 - P.50

I.はじめに
 脳動静脈奇形(arteriovenous malformationAVM)の重症度はSpetzlerらが提唱したgradingが一般的に用いられる.この分類は周知のように(1)size of AVM,(2)eloquence of adjacentbrain,(3)pattern of venous drainageの3点に注目し,点数化することによってその重症度を決定する11)
(1),(3)の項目についてはMRI,血管造影等を用いることにより比較的容易に決定できるが,(2)に関して実際の臨床の場では,eloquenceか否かという判断に迷う場合も少なくない.さらに,脳動静脈奇形その他の頭蓋内占拠性病変により,高次脳機能の局在に偏移を生じることが知られており,本来そこにあるべき機能がどこに偏移しているのかを正確にとらえ,温存するような治療計画を立てることが重要と考えられる.

症例

脳室腹腔シャント術後に脊椎硬膜下血腫を来した中脳水道狭窄症を伴うvon Recklinghausen's diseaseの1例

著者: 太田浩嗣 ,   乙供通則 ,   中村達美

ページ範囲:P.53 - P.57

I.はじめに
 von Recklinghausen病には,多彩な中枢神経系の病変を合併することが知られている.そのなかで,中脳水道狭窄症はvon Recklinghausen病の1%程度にみられるが8),そのほとんどが腫瘍性の中脳水道狭窄で,非腫瘍性のものはきわめて少ない15).一方,脳室腹腔シャント術後の合併症として頭蓋内硬膜下血腫は少なからず経験されるが,脊椎硬膜下血腫を形成することはきわめて稀で,過去に2例しか報告されていない14,16)
 われわれは,von Recklinghausen病に伴った中脳水道狭窄症に対して,脳室腹腔シャント術を施行後,腰部脊椎管に硬膜下血腫を来した1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

トルコ鞍内病変による視力障害にて発病した全身性B細胞悪性リンパ腫の1例

著者: 岡本宗司 ,   栗本昌紀 ,   平島豊 ,   林央周 ,   桑山直也 ,   遠藤俊郎 ,   岡田英吉 ,   石澤伸

ページ範囲:P.59 - P.63

I.はじめに
 中枢神経症状で初発した悪性リンパ腫のほとんどすべては中枢神経系原発悪性リンパ腫であり,中枢神経症状で初発する全身性non-Hodgkinリンパ腫はきわめてまれである4-6,8).われわれは,トルコ鞍内腫瘤による視力障害にて発病した全身性non-Hodgkinリンパ腫(B細胞型)と思われる1例を経験したので,診断・治療上の問題点に考察を加えて報告する.

冠動脈狭窄と無症候性頸動脈狭窄の合併に対する一期的手術の3症例

著者: 小松洋治 ,   中井啓 ,   青木一泰 ,   上村和也 ,   柴田智行 ,   吉澤卓 ,   小林栄喜 ,   小石沢正 ,   榊原譲 ,   平松祐司 ,   能勢忠男

ページ範囲:P.65 - P.69

I.はじめに
 頸動脈狭窄病変と冠動脈狭窄病変とは,ともに全身疾患である動脈硬化症の一病像である.したがって,両者はしばしば合併して存在する6,13,14,17).冠動脈の病変は生命の維持に密接に関連するものであり,また内頸動脈の病変は,中枢神経系機能に関連するもので生存の質に関与する.
 頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜切除手術(Carotid endoarterectomy:CEA),また冠動脈狭窄に対する冠動脈バイパス術(Coronary arterybypass graft:CABG)は,各々確立された治療法であるが24),その適応についてはなお検討が進行中である2,15,23).両病変は,お互いに危険因子であり,両者が合併して存在した場合の治療方法については多くの議論がみられる1,3,6-8,11,15,18,20).この度,冠動脈狭窄症例に合併した無症候性頸動脈狭窄に対して一期的にCEAとCABGを行った3症例を経験したので報告する.

特異な形態変化を呈した解離性椎骨動脈瘤の1例

著者: 中居康展 ,   安田貢 ,   松村明 ,   松丸祐司 ,   能勢忠男

ページ範囲:P.71 - P.74

I.はじめに
 解離性椎骨動脈瘤はその病態が比較的最近になって注目されてきたこともあって,その自然経過については不明な点が多い.特に出血例が未治療の状態で追跡されることは少なく,さらに治療タイミングの選択や自然経過を分かり難くしていると思われる.今回われわれは,くも膜下出血で発症した解離性椎骨動脈瘤で,特異な形態変化を呈した1例を経験したので報告する.

脳幹部venous angiomaに伴う脳幹出血の2例

著者: 溝上康治 ,   天野敏之 ,   稲村孝紀 ,   宮園正之 ,   松島俊夫 ,   萬納寺洋道 ,   福井仁士

ページ範囲:P.75 - P.79

I.はじめに
 無症候性venous angiomaの出血率は低い(0.22%/year)が4),後頭蓋窩では症候性となることが多い3,5,7,14).また,cavernous angiomaを伴うと出血率が増加することも知られている5,11,16).今回われわれは,脳幹のvenous angiomaに伴った脳幹出血2例を経験したので報告する.

円蓋部髄膜腫全摘出後26年で悪性髄膜腫として再発した症例

著者: 大田正流 ,   竹下岩男

ページ範囲:P.81 - P.85

I.はじめに
 われわれは,九州大学で1966年から1992年の間に手術を行った570例の髄膜腫患者の中で,下記の条件,1)初回腫瘍全摘術,2)術後頻回の経時的画像評価,3)過去にBrdUでの増殖能評価,これらの3条件を満たす患者33人を1)非再発群,2)再発群,3)転移群の3つのグループに分け,臨床経過とMIBI(Ki−67)staining index(MIB1 SI),BrdU labeling index,組織学的悪性度との相関を調べた.その結果,MIB1 SIと組織学的悪性度は臨床経過と良く相関し有意差を認めたので術後治療方針を立てる上で良い指標となり得ると1994年に報告した8).一般に,髄膜腫は組織学的悪性度に応じて,再発あるいは再増大までの期間が短くなる傾向がある3),4).今回,円蓋部髄膜腫全摘後約26年で再発を認め,再発後約2年半の問に急速に増大した症例を経験した.病理組織評価で初発時は異型度が低かったのに対し,再発時には悪性度がきわめて高く,MIBI SI7)も高値を示したので報告する.

歴史探訪

同じ頸部の脈管でありながら何故A.carotisとV.jugularisなのか?

著者: 朝倉哲彦

ページ範囲:P.87 - P.89

I.はじめに
 頸動脈はcarotid arteryで,頸静脈はjugularveinである.頸動脈はcarotid canalを通り,頸静脈はjugular foramenを通る.両者は隣あわせているのに,同じ頸部であるのに何故呼称が違うのか?知っている人から見れば何でもないことかも知れないが,疑ってかかると考え込んでしまう.少なくとも筆者等が学生時代に使った解剖学教科書には触れていなかった.それに頸部を表わすタームには他にcervixもあればcollumもある.漢字でも頸部と頚部さらに首,馘もある.
 ここらで整理しておいて良いのではあるまいか.別に何も考えないで済ますと言うのであれば「幸いなるかな,心貧しき者」である.

読者からの手紙

大腿動脈経由カテーテルアンギオ後の圧迫帯使用時間について—1時間後除去連続120症例の検討

著者: 作田善雄 ,   朽木秀雄

ページ範囲:P.91 - P.91

 アンギオ穿刺部に圧迫帯を用い,6時間程度の絶対安静臥床を保つ医療行為は,カテーテルアンギオ後の止血処置として一般的に行われ常識となっている.しかし最新の器具を用いた症例では,圧迫帯がよく固定されずに緩んでいた場合でも,大血腫の形成や体外へ出血した等の危険な事態に遭遇したことは一度もない.そこで平成12年3月から6月までに行ったカテーテルアンギオ連続120症例(男性57,女性63,平均年齢60.5)につき,1時間後に圧迫帯を除去し,寝返り起座を自由とし,3時間後に歩行を許可し観察してみた.後出血に関係するかもしれない要素として,出血時間(5分以上5例,平均2分),血小板数(10万以下2例,平均219万〉,アンギオ継続時間(最長88分,平均36分),シース(5Fr)抜去後の止血時間(10分以上,5例),治療中の薬剤(アスピリン,チクロピジンの内服8例,オザグレルナトリウム,低分子デキストラン点滴7例),早期歩行(3〜6時間以内53例)等につき検討した.その結果,動脈硬化の高度な例やアスピリン,チクロピジン内服例にシース抜去後の用手止血時にやや血が止まりにくい傾向を示したものの,圧迫帯1時間除去以後に大きな血腫を形成した症例や体外へ出血した症例は皆無であった.心カテ後の肺塞栓症についての報告によると,心カテの内容,時間,心機能等に関係なく,穿刺部の圧迫や長時間の安静臥床が肺塞栓形成に密接に関与していることが分かる1)
 昔のカテーテルは手作りの粗悪なものであった.穿刺挿入部の血管壁損傷は甚だしく,止血に苦労したことを記憶している.しかし現今のイントロデューサーは非常に精巧に作られており,挿入時の抵抗は少なく,血管壁損傷も以前とは比較にならないほどわずかなものとなっている.したがって止血圧迫帯は1時間装着で十分であり,長時間の絶対安静臥床は,精神的肉体的苦痛,肺塞栓症の合併などを考慮すればむしろ禁忌と考える.

報告記

第3回国際頭蓋底外科学会

著者: 古田一成

ページ範囲:P.92 - P.93

 III International Skull Base Congressは,2000年11月7〜11日,アルゼンチンのArmando Bas-so会長の下,ブラジルのFoz do Iguassuにて開催された.Foz do Iguassuは,ブラジルとアルゼンチンの国境に位置する世界最大の滝幅を誇るイグアスの滝を擁する両国にとって有数の観光地であり,ブラジルの脳神経外科医Professor RicardoRaminaがscientific programのdirectorとして参画するなど,本学会がブラジルとアルゼンチンの共同開催の形であったことから,この地が選ばれたものと思われる.日本との時差は12時間,往復それぞれ2日と3日かかる東京からは地球の真裏の都市である.私は,日本での学会に参加してからの出発だったので,学会2日目の8日に会場のFoz do Iguassu郊外のHotel Bourbon & Tow-erに到着した.初日は,教育セミナーであるPre-Congress Courseが開催されたが,3 course行われる予定がひとつにまとめられたと聞いた.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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