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文献概要
解剖を中心とした脳神経手術手技
脳性麻痺の痙縮の外科治療
著者: 平孝臣1 堀智勝1
所属機関: 1東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科
ページ範囲:P.1137 - P.1150
文献購入ページに移動脳性麻痺の運動機能障害では痙縮が最も多くみられる症状である.また痙縮は脳性麻痺だけでなく,脊髄損傷,脳血管障害などの後遺症としてきわめて一般的にみられる症状である.麻痺を伴っている場合には痙縮が起立歩行や姿勢の維持に必要不可欠な場合もあるが,一方で痙縮自体が日常動作の妨げになっていることも少なくない.このような場合を有害な痙縮(harmful spasticity)と呼び,積極的治療の対象ととすることで,全体的な機能的改善が得られることは少なくない.たとえば完全脊髄横断障害による両下肢の激しい痙縮では,坐位保持や車椅子への移動が困難となる.このような痙縮を緩和することで下肢の運動機能は決して改善されないが,日常の全体的な動作が大幅に楽になることは容易に想像できる.一方脳性麻痺では,随意運動が痙縮によって覆い隠されており,痙縮が存在するために随意運動の発達が妨げられている可能性が十分ある.このような場合には痙縮の緩和により随意運動をうながし,後述するように起立歩行ができるようになる場合も少なくない.これまで痙縮の治療の主体は薬物治療とリハビリテーション,あるいは整形外科的手術が中心であった.しかしこれらには限界があり,積極的な脳神経外科的治療が期待され,対象となる患者数も膨大である.
痙縮の脳神経外科治療にはその症状の程度に応じてさまざまなものがある20,22,25)が,本稿では,局所的な痙縮に対する末梢神経縮小術12,19,26,27)に関して,その神経筋解剖と手術手技を中心に総説する.
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