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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科29巻2号

2001年02月発行

雑誌目次

ニューロフィッシング

著者: 倉津純一

ページ範囲:P.104 - P.105

 今や空前の釣りブームで,休日前の深夜には,釣り道具や餌を求める客で釣り具屋は盛況である.鹿児島県は大部分を海で囲まれた釣り天国であり,奄美大島など離島には大物をねらった関西・関東からの釣り師でにぎわっている.
 私も2,3回大物の鯛をねらって錦江湾の船釣りにでかけたが,鹿児島の鯛とはまだ相性が合わないようである.それでも釣行の前夜は鯛に想いを寄せて,針や釣糸の準備に夢中となり,もしも大物が釣れたらとついクーラーボックスの大きさまで気になる.子供の頃の遠足の前日のような,いささか高揚した気分を,控えめのアルコールで抑えながら早めに床につく.そして当日,船に乗り込む頃はイメージトレーニングは完璧となっている.

総説

大脳半球星状細胞腫の手術

著者: 黒岩敏彦 ,   宮武伸一

ページ範囲:P.107 - P.118

I.はじめに
 星状細胞腫には種々の亜型があってそれぞれbiologyが異なるので,その治療法を考える場合には,まず確実な組織診断が非常に重要である.Pilocytic astrocytoma, pleomorphic xanthoas-trocytoma, suhependymal giant cell astrocytomaなどは手術摘出のみで治癒が可能である.Diffuseastrocytomaでは,肉眼的に全摘出できれば術後の放射線療法は施行しないとの意見も多いが37,42,48),報告されている全摘出率は低く,しかも周囲浸潤領域は摘出されていないので,可及的な摘出と術後に局所放射線照射を追加するとの意見も説得力を持つ38).一方,anaplastic astrocytomaやglioblastomaにおいては,画像上の造影剤増強領域の摘出と術後の放射線化学療法が標準的である52,60).いずれの場合も,可及的な摘出によって生命予後は延長してQOLも改善する7,36,44,46-49,52,59,60).これは再発時においても同様である9).すなわち,大脳半球星状細胞腫の手術においては,神経症状を加えることなく最大限摘出することを目指す.種々の補助療法も開発工夫されつつあるが,この疾患における手術の果たす役割は依然としてきわめて大きい.ここでは,種々の星状細胞腫の手術法について述べる.

研究

破裂末梢性後下小脳動脈瘤—自験例13例14個の分析

著者: 姉川繁敬 ,   林隆士 ,   鳥越隆一郎 ,   中川摂子 ,   古川義彦 ,   友清誠

ページ範囲:P.121 - P.129

I.はじめに
 後下小脳動脈(PICA)が椎骨動脈(VA)より分岐したあとの末梢部に発生する脳動脈瘤(dPICAAN)は少ない.発生頻度は全脳動脈瘤の0.5〜3%であろうとされ11,12,25),比較的稀なものと考えられる.われわれは過去10年間に経験した740症例の破裂脳動脈瘤のうちの13症例(1.7%)に14個のdPICA ANを経験した.われわれの経験について報告すると共に,dPICA ANに関して若干の検討を加えたので報告する.

外傷性くも膜下出血に伴う遅発性脳内血腫と凝固線溶系の検討

著者: 沢内聡 ,   結城研司 ,   阿部俊昭

ページ範囲:P.131 - P.137

I.はじめに
 頭部外傷後早期に遅発性脳内血腫の発生および増大を予測することは困難であるが,遅発性脳損傷と呼ばれる病態が転帰を悪化させる因子であることは,論を待たない.遅発性損傷,特に遅発性脳内血腫の発生ならびに増大を予測する手段としては,Contrast CT, MRIなど画像所見の有用性17,20)以外に,受傷後早期の凝固線溶系異常が予測因子となりうることが報告されている10,15)
 外傷性くも膜下出血は局所性損傷とびまん性脳損傷に共通する病態であり,重症頭部外傷患者の初回CTにおいて23.4〜39%に認められる所見である3,9,11).その出血の拡がりは神経学的重症度を反映し,遅発性脳内血腫の初期病変としても重要であると指摘されている6,11,14).また,外傷性くも膜下出血に合併する頭蓋内病変としては,脳挫傷,脳内血腫,急性硬膜下血腫の頻度が高いと報告されている9,11).今回われわれは,外傷性くも膜下出血例における受傷後早期の凝固線溶系異常が,経時的CT上での挫傷性脳内血腫の発現に対する早期予測因子として有用であるか否かについて検討した.

虚血・閉塞性脳血管障害に対する間接的血行再建術—EDASを施行した9例

著者: 前川正義 ,   粟屋栄 ,   福田清輔 ,   寺本明

ページ範囲:P.139 - P.143

I.はじめに
 虚血・閉塞性脳血管障害に対する頭蓋内血流増加を目的とした外科的治療としては,頸部頸動脈血栓内膜剥離術を除いては,頭蓋内外血管の直接的血行再建術が一般的である4,9).もやもや病を除く虚血・閉塞性脳血管障害に対する間接的血行再建術の治療経過・成績についての文献は少数しか見あたらない8,11).脳神経外科専門医および脳神経外科標榜施設の増加に伴う症例の分散化により,頭蓋内外血行再建術はその術者により成績にばらつきが生じる可能性が低くない術式となりつつある危険性がある.それならば,手技的にも患者に加わる侵襲度からもより安全な間接的血行再建術が,虚血・閉塞性脳血管障害に対しても有効性が示されれば福音となる.
 今回われわれが虚血・閉塞性脳血管障害症例に対してEDASを施行した結果と過去の文献に基づき,虚血・閉塞性脳血管障害に対する間接的血行再建術の適応および有効性の有無を検証することを目的とした.

症例

円蓋部meningioma en plaqueの1症例

著者: 松重俊憲 ,   吉岡宏幸 ,   沖田進司 ,   山崎文之 ,   杉山一彦 ,   有田和徳 ,   栗栖薫

ページ範囲:P.145 - P.150

I.はじめに
 わが国において髄膜腫は原発性脳腫瘍の23.3%を占め17),脳神経外科医にとってなじみの深い脳腫瘍である.発生部位,発育形態および病理学的所見は多様であるが,一般的には頭蓋内方向へ半球状の腫瘤を形成するものがほとんどである.特殊な形に,硬膜に沿って板状に発育進展する形態をとるものがあり,meningioma en plaque(MEP)と呼ばれる.よく知られた概念である11)にもかかわらず,その発生頻度は髄膜腫全体の2.5%と比較的稀である3).また,MEPの多くは蝶形骨縁に発生し8),円蓋部に発生した報告は散見されるにすぎない.今回われわれは,円蓋部に発生したMEPの1症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

側脳室のentrapmentを来し,脳室拡大なく著明な浮腫を生じた脳膿瘍・脳室炎の1例

著者: 安原隆雄 ,   中川実 ,   寺井義徳 ,   吉野公博 ,   藤本俊一郎 ,   日下昇

ページ範囲:P.151 - P.156

I.はじめに
 脳膿瘍の治療過程において脳室炎を合併し,側脳室側角のentrapmentを来すことはよく知られている1,2,3).その際,孤立した側脳室内に脈絡叢があれば脳室拡大を来すことが多い.今回,脳膿瘍の治療過程で脳室炎に伴う側脳室三角部の癒着により側脳室側角のentrapmentを来したが,脳室拡大なく,著明な脳浮腫を呈した1例を経験したので報告する.

Persistent Primitive Hypoglossal Artery Aneurysmの1例

著者: 太田浩嗣 ,   木下良正 ,   橋本昌典 ,   横田晃 ,   草野涼 ,   三島慶子

ページ範囲:P.157 - P.162

I.はじめに
 Persistent primitive hypoglossal artery(PHA)はBatujeffらが剖検例で初めて報告して以来2),155例が報告されている9).そのなかで,脳動脈瘤との合併は40例余りで9,19),PHA自体に脳動脈瘤が発生したものは現在までに13例しか報告されていない2-5,8-10,13,15-19).われわれは,頭痛と意識消失発作の精査で発見されたPHA aneurysmの1例を経験し,3D-CTA, perspective 3D-CTA(頭蓋外から病変を透視できるようにした再合成画像)およびMRI再構成画像が術前検討で有用であったため,文献的考察を含め報告する.

True Posterior Communicating Artery Aneurysm

著者: 棟田耕二 ,   吉津法爾 ,   寺田洋明

ページ範囲:P.163 - P.168

I.はじめに
 後交通動脈瘤といえばそのほとんどが内頸動脈後交通動脈分岐部(ICPC)の動脈瘤であるが,neckが内頸動脈にも後大脳動脈にもかかっていない真の後交通動脈瘤が存在する.今回われわれは比較的稀なこの動脈瘤を経験したので報告し,文献的にその特徴を明らかにし,治療上の問題点などについて考察したい.

対側小脳に脳内出血を併発した破裂椎骨動脈解離性動脈瘤の1例

著者: 落合秀信 ,   山川勇造 ,   川添琢磨

ページ範囲:P.169 - P.173

I.はじめに
 頭部外傷や血液疾患など,出血傾向を伴う疾患に生じる頭蓋内出血を除き,同時期に複数の出血源から頭蓋内出血を生じることは比較的稀である11-13,15,16,19,22).多発性頭蓋内出血としては,脳内出血(以下ICHと略す),くも膜下出血(以下SAHと略す)ならびに硬膜下血腫の組み合わせが考えられる.このうち,多発性脳内出血の報告は散見され,頻度としては全高血圧性ICHの0.7〜2%を占めるとされている15,21).また同時に複数の脳動脈瘤破裂により生じたSAHの報告例もみられるが,これは非常に稀な病態で,これまでに5例の報告が見られるのみである2,5,8,16,17).一方,破裂脳動脈瘤によるSAHと,その動脈瘤と連続性のない部位に生じたICHの併発を論じた報告は,われわれが渉猟し得た範囲内では見られなかった.遠隔部にICHを伴った破裂脳動脈瘤によるSAHの場合,来院時のグレードが良い場合には,通常の脳動脈瘤破裂症例と同様に発症後早期に脳動脈瘤のクリッピング術が行われることが多い.しかしその際,手術操作に伴う頭蓋内圧の変動などにより術中に脳内出血が拡大する可能性がある.今回われわれは,対側の小脳内にICHを併発した破裂椎骨動脈解離性動脈瘤の1例を経験した.本症例を通じて,動脈瘤と連続性のない部位に脳内出血を併発したSAH症例の発症機序や加療における注意点などについて検討したので,文献的考察を加え報告する.

頭蓋内圧亢進症状で発症した静脈洞交会部hemangiopericytomaの1例

著者: 橋口公章 ,   稲村孝紀 ,   岩城徹 ,   松島俊夫 ,   岳野圭明 ,   安部洋 ,   福井仁士

ページ範囲:P.175 - P.179

I.はじめに
 Hemangiopericytomaは頭蓋内をはじめ全身のさまざまな部位に発生するが,頭蓋内では硬膜内静脈洞近傍に発生することが多い5,6,12).脳腫瘍が静脈洞近傍で増大すると,静脈洞を閉塞して頭蓋内圧亢進症状を呈することがある7-9,14).今回われわれは,頭蓋内圧亢進症状で発症した静脈洞交会部hemangiopericytomaを経験したので報告する.

Perspective Volume Rendering法を使用した3D-MR Angiography Fly-through画像による脳動脈瘤の描出

著者: 佐藤透

ページ範囲:P.181 - P.186

I.はじめに
 MR angiography(MRA)は,未破裂脳動脈瘤など潜在性・無症候性脳血管疾患の検出において,最初に行われるスクリーニング検査であり,脳ドック以外にも脳神経外科領域の一般診療で広く実施されている.最近のMRI装置の進歩や撮像技術の革新により,MRAは撮像時間の大幅な短縮と元画像の格段の品質向上が得られている.これら高品質なボリュームデータは,DICOM通信などを使用したネットワーク構成により容易にワークステーションへ転送され,画像再構成技術の目覚しい進歩と相俟って脳血管構築の三次元画像が短時間で再構成表示可能となっている5,6).そのなかで,脳動脈瘤など脳血管病変のMRA診断においては,従来の最大値投影法(maximumintensity projection, MIP)画像に加えてthree-dimensional MRA(3D-MRA)画像やvirtual en-doscopyなどの仮想的三次元画像が作成され日常臨床に応用されつつある1,3,4-7).脈や周囲血管の血管構築を立体的に観察したので,3D-MRA FT画像の有用性につき症例を提示し報告する.

粒子塞栓物質による顔面動静脈奇形の治療—2症例報告

著者: 甲斐豊 ,   濱田潤一郎 ,   森岡基浩 ,   戸高健臣 ,   水野隆正 ,   三浦正毅 ,   生塩之敬

ページ範囲:P.187 - P.191

I.はじめに
 顔面に発生した動静脈奇形(facial arteriovenousmalformations:FAVM)は,外頸動脈からの豊富なvascular networkが存在するため,feederocclusionのみでは早期にcollateral networkが増生し根治は期待できない.したがって,nidusそのものを閉塞する必要があり,この目的で液体塞栓物質が用いられることが多い.しかしながら,液体塞栓物質を用いると皮膚壊死や脳神経麻痺の合併症の危険性があり,cosmeticな問題を解決するという本来の治療目的には反している.
 われわれは,FAVMの治療において適切な粒子塞栓物質を用いることで,従来報告されていた再開通の問題がなく良好な治療結果を得ることができた.本疾患における粒子塞栓物質を用いた治療法について検討を加え報告する.

読者からの手紙

頭皮へガーゼを固定する場合のテープ圧着の工夫

著者: 荻野雅宏 ,   井端由紀郎

ページ範囲:P.193 - P.193

 脳室ドレナージや定位的血腫除去術など,穿頭・ドレナージは基本的な脳神経外科手術手技である.病態にもよるが,ドレーンは一般に数日から2週間ほど留置される.人間の頭髪の成長速度は0.35〜0.44mm/日とされ1),剃毛後であっても1週間では約3mm伸びる.
 脳神経外科手術創のガーゼ固定には包帯・三角巾などが用いられるが,ドレナージ術後では粘着テープが一般的であろう.シルキーテックス®(アルケア,東京)のような弱粘性のテープは,貼ったりはがしたりが比較的容易でこの用途に頻用される.しかしその粘着性は限られ,数ミリ伸びた毛髪の上でははがれやすく,創部の清潔を保つことに苦慮する.一方,エラテックス®(同)のような接着剤の強いテープは,チューブに強固に貼りついて包交の際にこれが抜けかねない.また,はがす際に患者が苦痛を訴えたり,接着剤が頭皮や毛髪に残ったりすることがあって実用的ではない.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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