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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科29巻5号

2001年05月発行

文献概要

総説

脳虚血の分子生物学

著者: 野崎和彦1 西村真樹1 橋本信夫1

所属機関: 1京都大学大学院医学研究科脳神経外科

ページ範囲:P.385 - P.391

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I.はじめに
 脳虚血は,脳内の血流の低下あるいは停止によって,神経細胞に対する酸素と糖分の供給が閉ざされ,細胞のエネルギー代謝が傷害された状態である.脳組織は他の組織と比べ,酸素と糖の消費が高く,またエネルギー生産のほとんどをその好気的分解によるATP生産によっており,虚血に対し非常に脆弱であるため,従来虚血における細胞死は壊死の代表的なものにあげられていた.しかし,砂ネズミの一過性前脳虚血モデルにおける海馬CA1領域のように,神経細胞の中に比較的ゆっくりとした経過をたどる死があることや,局所脳虚血においても,特にペナンブラと呼ばれる虚血周辺域ではアポトーシスが優位に起こっているとの報告から,脳虚血にも治療可能な領域が存在することが示唆され,その分子生物学的解析が盛んに行われるようになった.
 脳虚血には,グルタミン酸カルシウム仮説をはじめとして,活性酸素,炎症など様々なメカニズムが存在し,脳虚血とはそれらが時間的空間的に相互に関わり合いながら進行する病態であると考えられている11)(Fig.1).本稿では,脳虚血における主要なメカニズムであると考えられるexcito-toxity,spreading depolarization,postischemic in-flammation,apoptosisについて概説し,それらをコントロールしている可能性のある細胞内シグナル伝達と,最近注目されてきた脳における幹細胞についても言及する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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