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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科29巻8号

2001年08月発行

文献概要

総説

重症頭部外傷に対する低体温療法—NABISHの結果と展望

著者: 重森稔1

所属機関: 1久留米大学脳神経外科

ページ範囲:P.699 - P.706

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I.はじめに
 重症頭部外傷に対する低体温療法については,近年多くの基礎的ならびに臨床的研究がある4,7,910,23,24,27).基礎的研究では,主に神経保護という観点からその有効性を支持するものが多い15).一方,臨床面でも多くのphase II studyが報告されているが4,7,9,23,24,27),概ね頭蓋内圧(ICP)下降という点ではほぼ一致した見解が得られている.しかし高率の合併症の問題もありrisk benefit ratioに基づく臨床的有用性は未だ不明と言わざるを得ない22).特に問題なのは,本療法によって果たして転帰の改善が得られるか,という最も重要な問題に関して未だ明確なevidenceがないという点であろう22).しかしながら,実際には転帰改善への期待を込めて多くの施設で本療法が導入されているというのが実状である11,20
 このような折り,今年2月に米国から注目すべき大規模な多施設共同のphase III study(Natio-nal Acute Brain Injury Study Hypothermia:NABISH)の結果が発表された5).この研究は厳密なstudy designのもとに行われた,いわゆるdouble-blind placebo-controlled randamized trialである.本研究の成果は前述したような本療法に伴う諸問題に1つの解答を与えるとともに,本療法の位置付けを考えるうえで大変参考になる.そこで本稿では,このNABISHの詳細5)を解説するとともに今後の展望について考えてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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