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症例
歩行障害を伴うlowintracranial pressure syndrome患者の1治験例
著者: 鈴木伸一1 坂田勝巳1 権藤学司1 菅野洋1 宮原宏輔1 張家正1 山本勇夫1
所属機関: 1横浜市立大学脳神経外科
ページ範囲:P.843 - P.849
文献購入ページに移動Spontaneous intracranial hypotension(SIH)は,1938年にSchaltenbrandにより初めて報告15)され,その後Bellらは,SIHを5つのカテゴリーに分類した2).このSIHの概念に含まれるshunt術後のlow pressure syndromeは,髄液のoverdrainageによる圧調節不全により低髄液圧が生じ,頭痛,複視,めまい,耳鳴りなどの症状を呈し,anti-syphon device(ASD)の設置,圧可変式バルブへの変更により症状の改善が得られることが知られている6).
今回脳腫瘍(germ cell tumor)にてV-P shuntを設置し,その後髄膜炎を併発したため,V-Pshuntを再設置し良好に経過していたが16年の経過で歩行障害が出現し,低髄液圧症候群を疑い,ASDを設置したことで歩行障害が改善した1例を経験した.本例は低髄液圧症候群に高頻度に出現する頭痛などはなく,代わりに非特異的な歩行障害の症状を呈したのでこの病態や治療経過に関して若干の考察を加えて報告する.
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