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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科3巻1号

1975年01月発行

雑誌目次

温故知新

著者: 畠中坦

ページ範囲:P.5 - P.6

 「ふるきをたずねてあたらしきを知る」という格言が,いわゆる「日進月歩」の医学の世界ではいささか色褪せた印象を与えることは否めない.
 脳神経外科学は,医学の全領域の中でも特に新しい技術・知識が要求される場のように思われている.

総説

急性硬膜下血腫の治療

著者: 牧野博安 ,   植村研一 ,   堀江武 ,   山浦晶

ページ範囲:P.7 - P.14

Ⅰ.緒言
 外傷性急性硬膜下血腫のある患者の予後がきわめて悪いことはよく知られている事実である3,21,23,27,35,37,39,43).また本疾患に関しての治療法も確立されたものはないといって良い.予後の悪い理由としては,急性の外傷性硬膜下血腫が存在するときには,血腫そのものがその患者の運命を左右しているのではなく,そのほとんどの症例について血腫を起こした原因としての脳表面の裂傷および,脳損傷を伴っており,この脳損傷より続発する脳浮腫であるとか,この損傷に関連して急発した急性脳腫脹が原因となって死亡することが多いからである9,20,31,35,47)
 新生児や乳幼児に好発する一部の急性硬膜下血腫は19),出血魂の除去・出血源の探知およびその止血によって完快するので例外的に取扱うべきである,現在迄,本疾患に関しての診断は,ことに本邦においては動脈写を急性頭部外傷患者に施行することが普及されているために,確実であり,その発見率は高い.

手術手技

Cervical spondylosis,discの手術

著者: 都留美都雄 ,   阿部弘

ページ範囲:P.15 - P.20

Ⅰ.はじめに
 Cervical disc disease(Cervical spondylosis,soft disc)の治療は多くの先人が苦慮してきたところで,その手術的療法も時代と共に変遷してきた.
 先ず後方到達法について歴史的推移をふり返ってみると,Kahn(1947)7)の説にもとづいて1950年代にはcervical spondylosisに対して椎弓切除,硬膜を開き歯状靱帯を切離する方法が好んで用いられ,Peserico(1961)10),Haft and Shenken(1963)6),Stoops and King(1965)13)等は脊髄症状に対して40%あるいは80%の改善をみたと報告している.最近ではFager(1973)5)の報告があり69%が改善みたと述べているが,主として脊髄症状の改善である.本術式によると脊髄症状は改善するが根症状はかえって悪化する例もあり,筆者もその危険性を指摘した15).1961年Scoville12)は根症状を改善させるために神経根に対する除圧を目的としてfacetectomyを発表した,その後この方法は多くの諸家により用いられよい成績をあげている.Mayfield(1965)8),Epstein(1969)4)等は骨棘を除去して治療成績の向上をみたと報告しているが,後方到達による前方の骨棘除去は脊髄を損傷する危険性を含んでいるので注意せねばならない.

境界領域

脳カテコールアミンの局在と代謝

著者: 藤原元始

ページ範囲:P.21 - P.30

はじめに
 脳および末梢神経系の種々領域での,noradrenaline(以下NA)やdopamine(以下DA)の局在は,すでに1950年代に生化学的にはかなり明らかにされていた(Vogt,1957;Carlsson,1959)が,1962年FalckとHillarpが組織化学的にcatecholamine(以下CA)を直接に顕微鏡下に検出し得る特異的且つ高感度の方法を発表してから(Falckたち,1962;Falck & Owman,1965),急激にその役割りが注目されるようになってきた.それは,CAが特定のニューロンに,しかも終末軸索突起に高濃度に存在することから,末梢神経のみならず,脳のある特定部位でも神経伝達物質として働らくのでないかと考えられるようになったからである.
 中枢神経系では,ニューロンの相互連絡がきわめて複雑であるため,化学的方法のみでニューロン系の性質を明らかにすることが不可能であっただけに,組織化学的方法の発見による寄与は,きわめて大きいといえよう.これに電顕的観察を加え,さらに外科的損傷およびCA代謝関連薬物を応用することにより,NAやDAの機能的役割りが逐次解明されつつある.

研究

副中大脳動脈

著者: 渡辺徹 ,   東郷実 ,   渋谷倢 ,   吉田康成 ,   天羽正志 ,   福光太郎

ページ範囲:P.31 - P.35

Ⅰ.はじめに
 内頸動脈或いは前大脳動脈から起こり,中大脳動脈主幹と平行に側方に走り中大脳動脈支配領域の一部分に分布する,異常動脈は副中大脳動脈と呼ばれている.
 Crompton2)並びにJain7)によってこの異常動脈が剖検脳の約3%に存在することが指摘されたが,これを生体で脳動脈写によって発見したのは,1968年,半田ら5)が最初であった.その後,脳動脈写によって発見された症例の報告が2,3なされてきたが,剖検例に比較するとはるかに少なく,13例(14個)5,6,8,10,11)に止まっている.

老人の髄膜腫における脳循環

著者: 露無松平 ,   星豊 ,   布施正明 ,   菅沼康雄 ,   大畑正大 ,   平塚秀雄 ,   稲葉穣 ,   山本光祥 ,   千葉一夫 ,   山田英夫 ,   飯尾正宏

ページ範囲:P.37 - P.42

Ⅰ.はじめに
 KetyとSchmidt13)が1945年初めて笑気を使って平均脳血流量,酸素消費量を測定して以来,脳循環測定法について薬剤や器具の上で種々の改良がなされてきたが,特に1961年にLassenとIngvar14)85Krを使用した局所脳循環測定法の開発で,それ以前にまして種々の生理状態や脳神経疾患における脳循環の報告がなされてきている.又その後に生物学的半減期の短かい133Xeを応用したこと,およびdata-store/play back system, 1600 channel multiparameter analyzer, videotape recording unit等の付属品が局所脳循環測定をさらに容易にした7-10,16)
 われわれは60歳以上の老年者における髄膜腫4例で133Xeによる局所脳循環測定を行ない,うち3例には術前術後の局所脳循環の比較を行ない若干の知見を得たので報告する.

脳神経外科領域におけるcyclic 3',5'−AMP—その基礎的,臨床的研究

著者: 児玉万典 ,   丸林徹 ,   賀来素之 ,   松角康彦

ページ範囲:P.43 - P.50

Ⅰ.はじめに
 脳神経外科領域においても,cyclic 3',5'−AMP(cAMP)は,ホルモンの作用機序20),エネルギー代謝38)などに深い関連があり,中でも最近Dibutyryl cyclic-AMP(DBcAMP)が,悪性ゲリオーマ組織の増殖を抑制する効果を持つことが知られ,にわかに注目されてきている18,26,28),ことに培養癌細胞内のcAMPの実測値は,異常に低い状態にあり,この事実が腫瘍の異常増殖とも密接に関係していると推定されている2,10-12).この理論的根拠に基づいて,培養脳腫瘍組織にcAMP誘導体,ことにDBcAMPを作用させ,認むべき効果が得られ,すでにいくつかの研究が発表されてきつつあり,さらに一部にはその臨床応用19,27)も試みられる段階にある.
 しかしながら,一般に細胞外から投与する場合には,DBcAMPまたは,N6BcAMPのほうが,単純なcAMPよりも生物活性が高いという事実が知られており,また腸内細菌のようにDBcAMPをN6BcAMPまたは2'OBcAMPに変える酵素をもたず39),しかも一部にはDBcAMPそのものには,生物活性がないとする説が報告38)されているなど,これら誘導体が,人脳のintrinsicなcAMPと同一には老えがたい点がある.さらには,培養細胞で得られた結果が,多種類のホルモンにより正確に制禦されている生体細胞に,そのまま適応され得るかの疑問もある.

Astrocytoma-GlioblastomaseriesにおけるCorticosteroidの細胞増殖抑制効果—Combined Vasopressin-Corticosteroid Therapyに関連して

著者: 梶川博

ページ範囲:P.51 - P.56

Ⅰ.はじめに
 Bernard-Weilら1)によって提唱されたいわゆるvasopressin-corticosteroid併用療法は,gliomaとくに再発glioblastomaに対する非手術的療法の1つとして注目されてきている.この療法の理論を要約すると,生理的にはたがいに拮抗作用を有するとされているvasopressinとcorticosteroidを併用することによって,両者に対する生体のfeed back機構を利用してhypervasopressinismをcontrolしあわせてcorticosteroidの持つ抗浮腫作用,抗炎症作用など,脳腫瘍の治療上好ましい作用を持続さるということであるが,臨床応用にあたっては後に述べるごとく多くの研究課題が残されている.本稿では人のastrocytoma-glioblastoma由来の腫瘍細胞のin vitroにおける増殖能に及ぼすcorticosteroidの影響について述べてみたい.

脳動脈瘤破綻による急性水頭症について

著者: 宮崎雄二 ,   末松克美

ページ範囲:P.57 - P.65

Ⅰ.緒言
 脳動脈瘤破綻間歇期における頭蓋内直達手術が安全に行われる様になった現今に於ては破綻後短時日に発生する再破綻による死亡を避けるために急性期に脳動脈瘤に対して頭蓋内直達手術を行うことが脳外科医に求められる様になっている.しかし脳動脈瘤破綻急性期には頭蓋内に各種病態が発生していて,しかもこれらが複雑に組合わさり患者の術前gradingを不良にするとともに,高い手術死亡率の原因をなし,また術後経過へ悪影響を与える重要因子となっている,このため脳動脈瘤破綻急性期の手術成績を向上するには,これらの諸因子の個々への対策が行われねばならない.この様な観点から近年くも膜下出血によって発生する脳浮腫および脳動脈攣縮への対策に関心が払われている.しかし最近更に脳動脈瘤破綻の急性期に急性水頭症が発生することが知られるようになり,その対策が患者の術前grading改善に貢献しうるのではないかと考えられるようになってきている.
 著者らは脳動脈瘤破綻急性期手術にあたって脳動脈攣縮解除5)など術前患者grading向上のための各種対策の検討と実施をしてきているが,最近急性水頭症を併発している症例を確認するとともに,それら症例に脳室心房髄液交通術を行い本手術法が術前の患者grading改善の一方法となりうることを知りえたので自験例を紹介するとともに脳動脈瘤破綻急性期水頭症について検討する.

症例

脳内原発性悪性リンパ腫の2例

著者: 窪田惺 ,   橋本卓雄 ,   久保長生 ,   浜田博文 ,   沖野光彦 ,   別府俊男 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.67 - P.73

Ⅰ.はじめに
 原発性脳内肉腫は全脳腫瘍中1%内外を占めるにすぎないまれな疾患である.とくに脳内の網内系に属する腫瘍の発生頻度は0.6-0.7%と低く21),本邦でも現在まで20数例を数えるにすぎない2,4-7,10,11,13,17,20)
 著者らは最近2例の原発性脳内悪性リンパ腫を経験し1例は原発性脳内リンパ肉腫,他の1例はRubinstein14)のいう"retieulum cell sarcoma-microglioma"の組織像を呈したので報告する.

巨大髄内ェペンディモーマの治験例

著者: 辻陽雄 ,   小林秀夫 ,   近藤洋一郎 ,   勝呂徹

ページ範囲:P.75 - P.79

 Ependymomas are the most common intramedullary tumors. Incidence of those tumors, in leading literatures, were 7 (42%) among 254 classified gliomas by report of Bailey and Cushing3) (1926), 16 (28%) among 566 gliomas reported by Bailey4) (1927), 21 of the tumors (42%) in 51 intramedullary cord tumors investigated carefully by Kernohan, Woltman and Adson12), and more recently the follow up study of intramedullary tumors by Chigasaki and Pennybacker7) listed 36 cases (28.1%) in 128 verified intramedullary tumors of the spinal cord.

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日本脳神経外科学会事務局ニュース

ページ範囲:P.79 - P.79

学会のお知らせ
 1975年の日本脳神経外科学会ならびにその関連学会の日程をお知らせします.

キーワード基準例

著者: 編集部

ページ範囲:P.81 - P.81

 本誌ではキーワードの統一のために下記の基準例を設けました.投稿されるかたはこれを中心にキーワードをおつけ下さい.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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