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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科3巻11号

1975年11月発行

文献概要

研究

脳血管攣縮の実験的研究—特に視床下部及び脳幹部の微細循環について

著者: 勝又次夫1

所属機関: 1名古屋大学脳神経外科

ページ範囲:P.939 - P.946

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Ⅰ.はじめに
 脳動脈瘤の破裂により発生するクモ膜下品血の際,脳血管攣縮がかなり高率に認められ,しかもこれがその患者の予後に重大な影響を及ぼす事が多くの研究者により報告され,注目をあびて来た1,25).Schneck等は23),臨床病理学的立場から53例の破裂動脈瘤患者の剖検所見と,その脳血正管撮影所見とを対比して,diffuse spasmと脳硬塞とは密接な関係にある事を認めた.又Robertson等は20),脳動脈瘤破裂症例の検討からSpasmに起因するischemic lesionが神経症状の主本をなす事が多いと報告した.この様に脳動脈破裂後に高頻度に認められる脳血管攣縮は,脳に広汎な乏血性変化をもたらし,軟化巣形成に関与し,これが神経症状を悪化させ重篤な意識障害に至らしめる事が明らかにされて来た.さらに脳動脈瘤はウィリス動脈輪,特にその前半部に多発する事が確かめられている27).ウィリス動脈輪は,脳底部に於いてこれから出る種々の太さの穿通枝により視床下部,中脳脳幹部等生命維持に極めて重要な意味をもつ部位に血液を供給している9).動脈瘤が破裂すると,破裂部位より逸脱した血液は,当然脳底槽に貯留し血塊を形成する.この血塊は,ウィルス動脈輪から出て視床下部中脳脳幹部を栄養する多数の穿通枝を圧迫し,この部の血流を高度に障害すると推定される.事実Cromptonは7),106例の破裂動脈瘤患者の剖検例中61%の症例に視床下部の出血性及び乏血性病変を認めたとのべている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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