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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科3巻12号

1975年12月発行

雑誌目次

古くて新しい研究テーマ

著者: 堀浩

ページ範囲:P.965 - P.966

 古くから研究されていて,しかもいまなお新しいテーマというのは,脳神経外科の領域でも少なくはない.脳腫瘍・脳血管障害・脳浮腫などいずれもそうであり,てんかんも常に新しい研究課題をわれわれに投げかけている.元来てんかんの外科的治療は,大昔から行われていたと思われる.それらは悪霊を追いだすために穿顱術を試みたのかもしれないが,近代的な意味でてんかんに対する開頭術が真面目に考えられたのは,Percival Pott(1713-1788)の脳外傷に対する手術などではなかろうか.次いでSir Astley Cooper(1758-1841)やBenjarnin Dudley(1828)らにより,外傷性てんかんの優れた手術成績が報告され,やがてHuglings Jackson(1864)が出現することになる.さらに降って1884年になると,Bennett & Godleeが脳腫瘍の剔出に成功し,これに引続いてDurante(1885),Horsley(1886),Macewen(1888),Keen(1888)などが腫瘍・膿瘍・異物・瘢痕を除去することにより症候としての発作をとめている.脳にメスを加えるということは,何らかの脱落症状が予想されるので,つとめて控えるべきではあるが,上記のような症候性てんかんに対しては,外科医も確たる信念をもって,手術しえたことであろう.

総説

脳卒中の診断—臨床および病理診断の不一致例の検討

著者: 亀山正邦

ページ範囲:P.967 - P.974

Ⅰ.はじめに
 脳卒中とは症候群であり,それを起こす原因疾患の鑑別が重要なことはいうまでもない.鑑別法としては,各種の診断基準1-3)が広く用いられているが,確診を得るためには,多くの場合,補助診断が必要である.しかし,それらの解説を試みることは,本稿の目的ではない.本稿では,むしろ脳卒中の誤診例について,症例を呈示しながら反省を加えてみたいと思う.

手術手技

腰椎ヘルニアの手術

著者: 畠中坦

ページ範囲:P.975 - P.980

Ⅰ.緒言--欧米・日本での歴史と現況
 欧米での脳神経外科クリニックを見学したものが一様に言うのは,病棟入院患者の1/2-3/4が「腰椎椎間板ヘルニア」の患者であるという事実である.
 私が,マックギル大学のモントリオール神経学研究所病院の脳神経外科に暫らく働いたときも,ほとんど毎日のようにヘルニアの新患者が入院し手術して10日以内ぐらいで退院するという単調な同じことの繰り返しには,内心うんざりしたものであった.当時まだ助教授で40歳台であったGilles Bertrandはすでに2000例以上を手術して「ヘルニアの再発は1例もない」とボソリと私に語った.今では彼の椎間板ヘルニア手術症例数は恐らく4000例を越えている筈である.

研究

小脳テントに浸潤したグリオーマにおける内頸動脈テント枝の脳血管造影所見

著者: 奥寺利男 ,   高橋睦正 ,   三原桂吉 ,   徳永光雄 ,   朝長正道 ,   北村勝俊

ページ範囲:P.981 - P.991

Ⅰ.はじめに
 内頸動脈の海綿静脈洞部から出る脳テントに分布する動脈は,X線解剖学的にSchnurerら16,およびParkinson11,12)により検討されており,脳血管造影上では,特に小脳テントメニンジオーマやテントを包含した動静脈奇形の際,病的拡張を示す例の多いことはよく知られている.
 一方、グリオーマのテントへの浸潤の際,上記テント枝に箸しい病的所見を認める場合があり,一見,メニンジオーハマや動静脈奇形との鑑別が困難なことがある.

後頭蓋窩腫瘍診断における脳スキャンの意義について

著者: 露無松平 ,   菅沼康雄 ,   大畑正大 ,   平塚秀雄 ,   稲葉穣 ,   岡田洽大 ,   星豊 ,   布施正明 ,   千葉一夫 ,   飯尾正宏

ページ範囲:P.993 - P.1000

Ⅰ.はじめに
 放射性同位元素による頭蓋内腫瘍病変の診断は近年の医療機器や新しいアイソトープの開発と共に,脳神経外科領域への応用価値は著しく向上してきた.しかし一般的には後頭蓋窩腫瘍に限った診断成績はテント上のものに比べて低いという悲観的見解も多いが,種々の工夫を加えることにより診断価値を向上させることができると考えられる.
 われわれは,後頭蓋窩腫瘍25例に,合計48回の脳スキャンを施行し,それに種々の工夫を加えて診断率の向上をはかったので,その結果を報告し,あわせて若干の考察を行なった.

脳血管攣縮と血管作働性アミン

著者: 桑山明夫

ページ範囲:P.1001 - P.1007

Ⅰ.緒言
 近年,脳神経外科領域にmicroneurosurgeryが導入されて以来,技術的進歩は目覚しく,脳動脈瘤の手術成績は著しく向上したが,動脈瘤よりの再出血の防止と重篤クモ膜下出血患者の治療法に関しては,まだたしかなる見解がない.とくに後者における症状増悪の主な原因の1つとして,脳血管攣縮が以前より考えられており種々の検索がなされてきたが,いまだその原因については解明されるに至らず,治療法も確立されていない.
 脳血管攣縮発生には,血管外逸脱血液が主要なる役割りを果していることが,Echlin6)らにより始めて明らかにされたが,その後Kapp12)らを始め,多くの研究者により,逸脱血液のうちでも血小板分画に,著しい脳血管攣縮能が存在する事実が判明して以来,血小板内の血管作働性物質の存在が重要視されるに至った.

症例

放射線治療4年後に死亡したPinealomaの剖検例

著者: 尾藤昭二 ,   榊三郎 ,   郷間徹 ,   片山正一

ページ範囲:P.1009 - P.1014

Ⅰ.緒言
 松果体部腫瘍はtypical teratomaを除きその大部分は放射線感受性が極めて高いことは諸家の認めるところである.本腫瘍の治療にあたり,まずfirst choiceとしては減圧手術にとどめて放射線治療を行なうか,あるいはまた摘出手術を行なった後に放射線照射を行なうかは意見の分れる所であるが18),一般的には前者の姑息的療法を行なうものが多い.しかしながら果して放射線治療によりて完全に腫瘍が消失し治癒に至るものであるか否かについては,なお確証があるとは言い難い.放射線治療を行なった症例のfollow up,殊に長期生存例の検討と,他方放射線治療を行なりた症例の剖検例の詳細な検討の集積とがその一助になるものと考える.
 著者らは,松果体部腫瘍に対して放射線治療後略4年経過して死亡した所謂two-cell patternのpinealomaの剖検例を経験したのでこれを報告し種々考察を加えたい.

頸静脈孔神経鞘腫の1例

著者: 石山隆三 ,   坂井春男 ,   岡崎亘裕 ,   篠沢貞夫 ,   中村紀夫

ページ範囲:P.1015 - P.1021

Ⅰ.緒言
 脳神経から発生する頭蓋内神経鞘腫は,殆んどが,聴神経originのもので,その他は,三叉神経が注目されており,残りは例外的に腫瘍を発生させるにすぎず,又あっても殆んどが,von Recklinghausen病の一部としてみられるにすぎないと言われている22),我々は,舌咽神経又は,迷走神経より発生したと考えられる頸静脈孔神経鞘腫の1例を経験したので報告する,尚,この症例では,現在のところ,von Recklinghausen病は認められていない.

Pubertas praecoxを来たした視床下部腫瘍

著者: 原田廉 ,   梶川博 ,   鮄川哲二 ,   渡辺憲治 ,   島健 ,   石川進 ,   西和美 ,   松浦博夫

ページ範囲:P.1023 - P.1029

Ⅰ.はじめに
 我々は最近,pubertas praecox, cachexiaを主訴として来院した6歳男児の脳腫瘍(視床下部腫瘍astroeytoma)の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

最近経験した脳肺吸虫症の3例

著者: 和田秀隆 ,   木下和夫 ,   横田晃 ,   松角康彦

ページ範囲:P.1031 - P.1038

Ⅰ.はじめに
 肺吸虫症はわが国では西日本を中心に全国にみられる寄生虫症の一つとして古くからよく知られた疾患であるが,最近は疫学的知識の普及と,治療薬の開発によって減少しているものと考えられてきた.しかし過去5年間にわれわれは3例の脳肺吸虫症を経験し,また九州の他の施設からも脳肺吸虫症の摘出手術の報告がなされており,この肺吸虫症の脳内迷人による中枢神経障害は,臨床神経学上まだ忘れてはならぬ疾患といえる.
 われわれの3例は,いずれも痙攣発作を初発症状とし頭蓋X線単純写での頭蓋内石灰化像が特徴的で,手術によりのう腫性肉芽腫を摘出し,うら1例に壊死組織内に成虫をみいだした.症例を報告するとともに考察を加える.

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キーワード基準例

著者: 編集部

ページ範囲:P.8 - P.8

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基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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