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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科3巻4号

1975年04月発行

雑誌目次

脳・神経外科の卒後教育と研究について

著者: 矢田賢三

ページ範囲:P.275 - P.276

 数多くの先駆者のひたすらな努力によって日本の脳神経外科が,殆んど無の状態から現在のレベルにまで達し,本誌のような専門誌を持つまでに至ったことに,我々日本の脳神経外科の第Ⅱ期というか第Ⅲ期とかいう時代に育った者は,色々な面で心から感謝をしなくてはならないと思う.そして,現在の脳神経外科のレベルを更に向上させなければならないという重大な責任を我々は負わされていると思う.
 脳神経外科学が臨床科である以上,脳神経外科のレベルというものは,その国の平均的脳神経外科医の臨床家としての実力の高さによってまず評価されるべきであると私は思う.もちろんそのような実力のある臨床家が必要数揃っていなければならないことは当然であるが.そして,そのような広く高い基盤の上に,始めて優れた研究者,学者が,自然発生的に育って来てこそ,本当に地についた脳神経外科学の発展が望めるものと思う.

総説

形成外科の進歩—Tessierの手術を中心に

著者: 大森清一

ページ範囲:P.277 - P.287

 形成外科領域でのトピックスを昨年,メヂカルトリビューンに書いたとき,著者は1)顔面骨に骨切り,骨移植を施行し顔の変形を治すこと即ち変貌術,2)Microsurgeryの臨床への応用—特に形成外科ではmicrovascular anastomosesによる巨大皮弁(例えば28×17cm2)の移植や指・手などのreimplantation).3)人工樹脂フレーム(シリコン)による外耳再建,4)唇・顎・口蓋裂における粘骨膜の利用によるboneless bone graftingなどをあげた.
 これは,国際学会での出題の分析,毎年著者が外国の諸学界への出席から得た経験によってもまちがいのないところと思ったからである.例えば国際学界では1963年までは顔面骨折についての出題をみたが,1967,1971年にはその姿をみず,これに代って顔面骨への骨切りによる変貌術が現われ,又,microsurgeryの出題が1971年に初めて現われた(1963年に玉井が出題したが).

手術手技

内頸動脈・海綿静脈洞瘻の手術

著者: 太田富雄

ページ範囲:P.289 - P.295

Ⅰ.はじめに
 一般に,頸動脈・海綿.静川民洞痩(carotid-cavernous fistula,以下CCFと略す)という場合,外傷性と特発性(spontaneous)に分けて考えられている.しかし既に指摘したように4),外傷性CCFは殆んどの場合,内頸動脈海綿静脈洞部に瘻形成がみられるのに対し,特発性CCFでは,内頸動脈本幹に旗が形成されておらず,むしろ硬膜動静脈奇形(dural arteriovenous malformation)の一種と考えられ,主として外頸動脈,更に内頸動脈硬膜枝,稀には椎骨動脈が関与し,従って外科的治療法および治療効果が全く異なってくる.その詳細は別の機会にゆずるが,CCFの外科的治療法について考える場合,両者の相違を是非念頭におくべきで,以下述べる我々の開発した手術々式は,あくまでも外傷性内頸動脈・海綿静脈洞瘻(traumatic internal carotid-cavernous fistula,以下ICCFと略す)に対するものである.この他,現在最も広く用いられているCCFの外科的治療法はHambyにより提唱されたtrapping operationに筋肉片栓塞術の組合せ法(1966)2)があるが,既に単行本もあるので今回は省略した.

研究

拡大脳血管造影法の臨床的価値

著者: 高橋睦正 ,   遠山卓郎 ,   玉川芳春 ,   古和田正悦

ページ範囲:P.297 - P.304

 最近のX線工学の進歩によって大容量の負荷可能な微小焦点X線管球が開発されて,脳疾患の診断に用いられるようになった.このため,脳血管の直接拡大連続撮影法が実施可能となってきた.一部の研究施設で脳血管造影に拡大撮影法を応用する試みがなされてはきたが1,3,4,5,8,9,10,14),まだその評価が一定せず,広く臨床に取り入れられるには至っていない.また,従来から臨床に供されて来た管球は焦点の大きさ0.3mm×0.3mmのX線管球が多く1,2,5,6,13),これより更に小さい焦点による拡大連続撮影法の報告は少ない.吾々は,脳血管造影法に大きさ0.1mm×0.1mmの焦点を存するX線管球を用いて2.5-3.0倍の脳血管の直接拡大撮影法を実施して来たので,吾々の経験をもとに,本法の診断的価値について報告する.

CephaloridineおよびCephalothinの髄液内移行に関する研究

著者: 狩野光将 ,   大田治幸 ,   金城孝 ,   伊藤篤

ページ範囲:P.305 - P.312

Ⅰ.まえがき
 抗生剤はいうに及ばず,いかなる薬剤も血液脳関門を通過しうる量が限られているといわれている,薬剤によっては,たとえばチオペンダールナトリウム(ラボナール)のごとく,ほとんど全龍がこの関門を通過しうるものと,ほとんど通過できないものとがあり,われわれ脳外科医の感染防禦対策の泣きどころとなっている.脳以外の臓器であれば,血中濃度さえ高めてやれば奏効するわけである.抗生剤のなかでもChloramphenicolのごときはよく髄液中に移行しうることが従来より知られており,非炎症性髄膜例で髄液中/血中濃度=1/4といわれている5)
 もちろん,血液脳関門と血液髄液関門とは同じでないが著者は便宜上髄液中への抗生剤の移行度を測定した.

先天性水頭症病態の予後考察(第2報)—特に術後経過,生存例の機能的予後

著者: 伊東洋 ,   小野寺良久 ,   高梨邦彦 ,   田島賢一 ,   三輪哲郎

ページ範囲:P.313 - P.322

Ⅰ.緒言
 先天性水頭症病態が近年の診断技術の進歩にともなって,明らかにされつつあるが,原因疾患の治療を除いては対症的処置,即ち髄液短絡術にとどまり生命延長をたとえ得ることが出来ても機能的予後の上では決して満足し得るものではない.
 即ち,髄圧下降術施行時に既に著しい脳の変性萎縮の存在があったり,或いは又,徐々に進行する病的過程の存在が推察される.

Cryostat-cut Frozen Sectionを用いた脳脊髄腫瘍の術中迅速診断法の実際

著者: 田代邦雄 ,   都留美都雄

ページ範囲:P.323 - P.327

Ⅰ.緒言
 脳神経外科の手術において,術中に腫瘍の種類,浸潤の程度,悪性度の判定が可能であれば,手術操作の範囲の決定,術後の治療方針の決定又は家族に対する説明にも役立つことが大きい.しかし,そのためには速く,そして正確な診断を下す必要がある.従来行なわれている方法としてはSmear Technique1-4,7-10,12,16,及びFrcezing Microtomeを用いた凍結切片による方法5,6)とがあるが,この両者とも正確な診断をするためには非常な経験が必要であり,それでもなお診断が困難な場合もある.
 Cryostatを用いた凍結切片11,15)は,その手技の簡単さと,永久標本に劣らないほどの組織の固定が可能であり,頭書のよ的に充分かなうものである.現在,私達の行なっている方法及び実際例について報告し,特に凍結切片に対するMetachrome染色の有用性と,Brain Pasteを包埋剤として用いる利点について紹介する.

グリオブラストーマに対する放射線治療の効果—516例をもとにして

著者: 山下純宏 ,  

ページ範囲:P.329 - P.336

Ⅰ.はじめに
 グリオブラストーマは頭蓋内腫瘍の中で最も頻度の高いものの一つであるが,その治療の現状は決して満足すべきものではない.いかに広汎に別出を試みても,腫瘍は必ず再発して来る.放射線治療にも限界があり1),これによって永久治癒を望むことは到底不可能である,化学療法,その他の治療法に関しては,客観的評価を下すには,未だデータ不足の状態である.グリオブラストーマは本当に治療する価値があるのかと疑問を投げかける人もいる位であるが14),たとえ永久治癒が望めなくても,一時的症状改善ならびに延命効果が,患者とその家族にとってusefulであるならば,その治療行為は決して無意味ではないと考えるのが,大方の意見であろう5,6,9,10,14)
 本論文の目的は,一つのセンターで長期間にわたって比較的一定した治療方針のもとに治療された比較的多数のグリオブラストーマ症例群について,retrospectiveに放射線治療の効果の程度を明らかにすることである.

症例

頭蓋底部頭蓋外内頸動脈瘤

著者: 石川進 ,   佐々木潮 ,   島健 ,   梶川博 ,   宮崎正毅

ページ範囲:P.337 - P.342

Ⅰ.はじめに
 頸部内頸動脈の動脈瘤については近年多数の報告があるが,内頸動脈の頸動脈管部(petrous portion)やその直前に生じる動脈瘤は比較的少ないようである.我々はこの部分に生じた巨大な動脈瘤のために一側性多発性下位脳神経麻痺を来たした症例を経験したので,これを報告するとともに,従来の報告例を検討し,その症候,治療などについて考察を加えたい.

椎骨動脈が後下小脳動脈として終末化し,同部に動脈瘤を合併した1症例

著者: 今井昭和 ,   頼正夫 ,   肥田候一郎 ,   西村敏彦

ページ範囲:P.343 - P.346

Ⅰ.はじめに
 椎骨動脈系は最もAnomalyの多発する部分として知られているが,そのうち一側の椎骨動脈が他側の椎骨動脈と吻合合流して脳底動脈を形成することなく同側の後下小脳動脈として終末化する異常は比較的まれで,推骨動脈写の0.2%の頻度で見られるとの記載7)がある.一方,脳底・椎骨動脈系の動脈瘤は鈴木ら10)の我国における1969年の調査によれば全頭蓋内動脈瘤中の約4.0%であり,Sahs,らの米国内の報告10)でも約5.4%の頻度で見られ,一般に脳血管写上では全頭蓋内動脈瘤の3-6%を占め,更に後下小脳動脈の末梢部における動脈瘤の発生率は全頭蓋内動脈瘤の1%以下10)で比較的少ないものと言える.最近,我々は脳血管写上,右の椎骨動脈が後下小脳動脈として終末化し,その末梢に動脈瘤を認め,手術時,右の椎骨動脈が右後下小脳動脈として終末化しているのを確認しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

一側内頸動脈—海綿静脈洞瘻を伴った両側内頸動脈海綿静脈洞部巨大動脈瘤

著者: 柴田尚武 ,   森和夫

ページ範囲:P.347 - P.352

Ⅰ.緒言
 海綿静脈洞部の特発性両側性動脈瘤の報告はきわめて少なく,Wilson & Myers17)(1963)は自験1例を加えて計12例を報告し,牧ら8)(1970)はさらに文献上集収しえた5例と自験1例を加えて計18例を報告している.
 著者らはWilson & Myersの12例以外に文献上9例を加え計21例を集収しえたが,うち両側の巨大動脈瘤(血管撮影上直径2.5cm以上)は8例であり,さらにこの中で一側の特発性内頸動脈海綿静脈洞瘻を伴ったものはわずかに3例のみである.

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日本脳神経外科学会事務局ニュース

ページ範囲:P.354 - P.355

第3回日本脳神経外科学会 機関誌編集委員会報告
日 時 昭和50年2月1日
場 所 京都国際会議場 K室

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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