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研究
ヒト神経芽腫細胞株NB-Iの形態学的分化—(But)2cAMP投与下
著者: 三宅清雄1 北村忠久2 下嘉孝1
所属機関: 1京都府立医科大学第一病理 2京都府立医科大学第二病理学教室
ページ範囲:P.407 - P.414
文献購入ページに移動細胞が,どのようにして形質を維持し,その形質発現をするのかという機構が分子生物学的な手法のもとで,明かになるにつれて,ことに細胞の分化過程に内臓されるこの問題は,こうした事象を端的に代弁するものとして,ことこまかに追究されねばならない重要なものになってきた.高度の分化をとげたと考えられるヒトの神経細胞について,どうした光をあてた上で,さぐってゆくかという技法の問題には大きい弱点が残されたままだといってもよかろう.
私どもは,この問題をin vitroという特殊な環境ではあるけれども,ヒトのneuroblastoma cellを素材にしてさぐろうとした.もちろん,この細胞は悪性神経芽腫細胞として小児の屍体の頸部リンパ節転移からえられた株細胞であるから,その分化像は,正常の生体のなかで発育・分化の過程をたどる神経細胞の分化とは,大きい差があって比較しきれないものがあるという指摘には承知の上での大胆な実験である.しかも,この株細胞は,すでに神経系統のものとしてmajor differentiatiom(藤田)1)をとげたものであるために,primitiveな外胚葉の細胞が神経管をつくりあげ神経芽細胞にいたる過程を大きく抜きにした分化--幅のせまい--を,さぐるものだということにも反省の必要があると考えられる.その点ではこの実験は,それなりの厳しい批判をうけて当然である.
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