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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科3巻6号

1975年06月発行

雑誌目次

脳神経外科の守備範囲

著者: 牧野博安

ページ範囲:P.449 - P.450

 現在本邦の殆んどの施設が,恐らくそうであると思われるが,脳神経外科診療部門を通称脳外科と呼び,その名の如く主として頭蓋内疾患のみを取扱っている所が多いと思う.我々日本の脳神経外科医は,全世界の日本以外の国々と比較して,唯一のいわゆる"脳外科医"であって,決して誇るべきことではない.
 神経系統の発生から考えても,又神経細胞一つ一つ考えても我々が脳だけ考えていて良い訳はないことは熟知しているところでもある.我々に課せられた義務は,常に神経系統を中心に種々の身体の生理的又は病的反応現象を追求し解明せんと努力することにある.その場合に脊髄とか末梢神経を除外して考えることは出来ない.神経系統の疾患について考えを進めるときも,末梢の方から中枢の方へ低次ニューロンから段々と高次ニューロンに向って考えなければならないことは屡々ある.その意味で我々の取扱う患者がどうして脳を中心としたもののみに限られてくるのか,そしてそれが本邦のみにある現象であることを不可思議に思うことが多い.その主たる原因は医学界の歴史的背景によるものと思われるが,最近の神経生理学をみても,一細胞の起す現象をつかまえんとする努力がなされているのを考えても神経系統を頭蓋の中と外で考えることはおかしい.

総説

脳死

著者: 竹内一夫

ページ範囲:P.451 - P.458

はじめに
 腫瘍・炎症・外傷・血管性障害・先天性奇形などによる脳の急性一次性粗大病変は,脳神経外科領域における主要な治療対象である.したがってわれわれ脳神経外科医は古くからこれら疾患の末期(死戦期)に,いわゆる「脳死」41,42,50,57,77,82)の状態があることを経験していた.一方,心疾患・窒息・薬物中毒・麻酔事故などによる一過性の心拍・呼吸停止乃至脳無酸素症にも同じような状態がみられるようになった2,33).ことに蘇生術の進歩により,これら症例の頻度はむしろ増加の傾向にある.
 たまたま1967年末,Bernardにより最初の心臓移植が行われ,脳死への関心が急速にたかまり,一時はかなりの混乱もあったが,今日ではほぼ一段落した.そして最近では脳死状態の判定方法の確立,脳死前の状態における治療などに関する研究が盛になってきた.

手術手技

内頸動脈瘤の手術

著者: 矢田賢三 ,   大和田隆

ページ範囲:P.459 - P.465

はじめに
 一般に内頸動脈瘤と呼ばれているものの中には1)intracavernous portionのもの,2)ophthalmic arteryの分岐部より発生したもの,3)後交通動脈分岐部付近より発生したもの,4)後交通動脈分岐部と,前・中大脳動脈分岐部問共り発生したもの,5)前・中大脈動脈分岐部より発生したもの等が含まれている.これらのうち,1)は直達手術の対象とならず,2)については、carotid-ophthalmic aneurysmという名前で呼ばれ,症例数も少なく(Locksley5)によれば全頭蓋内動脈瘤の5.4%),手術手技も特別の配慮を必要とする2,9)のでこれらについては本稿ではふれず,3)−4)及び5)について述べる.
 3)−5)の動脈瘤は,全頭蓋内動脈瘤の14-38%4,5)を占めており,最も頻度の高い動脈瘤といえる.

研究

Ependymoblastomaの電子顕微鏡的考察

著者: 平野朝雄 ,   松井孝嘉 ,  

ページ範囲:P.467 - P.473

Ⅰ.はじめに
 前回のependyniomaの電顕像にひきつづいて,ependymoblastomaについて電子顕微鏡的考察を加えた.
 ependymoblastomaはneural tubeから発生する悪性の分化度の低い中枢紳経系の腫瘍である.

乳幼児におけるカテーテル法による脳血管撮影法について—7歳以下の小児59例,71回の経験の検討

著者: 後藤勝彌 ,   高橋睦正 ,   玉川芳春

ページ範囲:P.475 - P.483

Ⅰ.まえがき
 小児の中枢神経疾患の診断上,脳血管撮影の果す役割の重要性については論をまたないが,その手技の困難さゆえ,また合併症に対する莫然とした恐れゆえにとかく敬遠されがちである.その方法に関しては様々な試みがなされているが,それぞれに一長一短があり現在最も広く行われているいわゆるroutineの方法と呼ぶべきものはない.
 我々は過去数年来,様々な中枢神経疾患を有する小児にSeldinger法により経皮的に大腿動脈にカテーテルを挿人して選択的脳血管撮影を行ない診断に役立てて来た.ここにその手技を紹介し,当科開設以来2年半の間に検査を施行した小児の中より全身麻酔を要し,またカテーテル挿入の際その他にいくらかの固有の工夫を行わねばならない7歳以下の小児59例を選び,その71回の経験をもとに乳幼児に本法を施行することに伴う様々の間題点について検査を行なう.

脳の等カウントスキャンニング

著者: 竹山英二 ,   山本昌昭 ,   門脇弘孝 ,   今永浩寿 ,   神保実 ,   喜多村孝一 ,   オスカーA. 名和 ,   池辺潤

ページ範囲:P.485 - P.494

Ⅰ.はじめに
 1948年131I-diiodofluoresceinを用いてMoore8)が脳腫瘍の局在診断を試みたのを皮切りに,Rl脳scintigraphyは脳疾患の診断に不可欠な補助検査法の一つとなっている.爾来種々機器の改良,新機種の開発等を経て,今日に至っているが,Rl scintigraphyの診断率向上を目指す最近の方向としては,データの正確な収集,imageの改善,デーケの定量的分祈の3つに要約されるであろう10).すなわち記録(recording),表示(display),分析(analysis)の3過程で,種々の工夫がなされており,臨床的に応用されつつある3,6).さて,記録の点では経時的な記録により,RI mageを動的にとらえて診断効果を向上させようとする努力が最近はとくに盛んであり,scinticameraによりこの方向への目的はかなり成功しているようである1)しかしながら一方では,一枚一枚のscintigramが,より正確で信頼し得るものであることは当然要求される.この面では,scinticameraはscintiscanningにはおよばない.
 本文ではscintiscanningに関する著者らの抜本的な改良,工夫について述べたいと思う.

症例

髄膜炎に合併した内頸動脈仮性動脈瘤の1例

著者: 榊寿右 ,   菊池晴彦 ,   古瀬清次 ,   川合省三 ,   唐澤淳 ,   真鍋武聰 ,   吉田泰二 ,   松田功

ページ範囲:P.495 - P.499

Ⅰ.はじめに
 脳血管が細菌または真菌により侵されるのは,脳以外の感染巣より生じた感染性栓子が,脳動脈、多くはvasavasorumに定着するためである.主として細菌性心内膜炎の合併症として生じ,中大脳動脈領域に多発性にみられ,脳血管を閉塞したり,脳動脈瘤を形成したりする.脳・髄膜炎等の血管外感染に際して,同様な脳血管の変化を来す事は非常にまれであり,特に内頸動脈等の主幹動脈が侵されたという報告は非常に少い.最近我々は,術後髄膜炎の加療中,内頸動脈に仮性動脈瘤が生じ,それがAspergillus感染による血管炎の2次的変化と考えられる症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

小児脊髄腫瘍—1乳児治験例及び本邦報告例について

著者: 上田茂夫 ,   広瀬旭 ,   三輪勝 ,   坂井昇

ページ範囲:P.501 - P.507

Ⅰ.はじめに
 1887年Gowers&Horsleyが脊髄腫瘍手術治験第1例を報告して以来,脊髄外科の進歩は著しく,とくにSicard&Ferestierによるミエログラフで一の創案により一層の普及をみるに至った.
 本邦においても1911年武谷,三宅が摘出に成功してから半世紀の間に幾多の報告があり,その臨床,診断,治療についても討議されつくした感がある.

胸部椎間板症—特にspondylosisの2症例について

著者: 代田剛 ,   牧野宏太郎 ,   後藤聡 ,   上野一義 ,   高村春雄

ページ範囲:P.509 - P.515

Ⅰ.緒言
 変性した椎間板が,脊髄又は神経根,あるいはその両者を圧迫することによって症状をひきおこす椎間板症は,病理解剖学的見地より,soft djsc・hard disc・spondylosisの三つに区分できるが23,27,28),発症機転より,前者と後二者は全く異るものである.即ち,変性した椎間板がヘルニアをおこし,直接神経組織を圧迫するために発症するsoft discに対し,椎開板変性の結果,Luschka関節や関節突起周囲に限局性の骨棘が形成されることによって発症するhard discと,更に椎体の変化をも来すSpondylosisとは,いずれも椎間板変性に起因するものとはいえ,一次的障害と二次的変化の違いがある.従って,当然,症状,臨床経過及び治療を畏にするので,明確に区分することが望まれる.
 一方発生部位として,頸部ならびに腰部の椎間板症は,日常よく遭遇する疾患であるが,胸部のそれは稀である,Middleton and Teacher16)の剖検例の報告以来,欧米での胸部椎間板症の症1列数は,Tovi and Strang26)の多数例をまとめた報告を含め,著者らの調べ得た範囲では200例を越えるが,本邦での報告例は極めて少ない10,18,22)

半球間裂部硬膜下膿瘍

著者: 中村昻 ,   松田昌之 ,   辻宏 ,   石島裕 ,   河合弘

ページ範囲:P.517 - P.522

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内硬膜下膿瘍は,頻度は脳内膿瘍より多くはないが,経過が迅速且より重篤で,緊急の手術的治療を必要とすることが多い.硬膜下膿瘍の中でも,殊に頭蓋内他部硬膜下膿瘍を合併しない純粋の半球間裂部又は傍大脳鎌部単独膿瘍の報告は,本邦ではまだ殆どなく,このものは通常の半球外側面硬膜下膿瘍と診断及治療上異る点があり,特に検討を要すると考えられた.

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キーワード基準例

著者: 編集部

ページ範囲:P.523 - P.523

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基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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