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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科3巻7号

1975年07月発行

文献概要

研究

後頭部巨大血管腫に血小板減少,貧血,低フィブリノーゲン血症を伴ったKasabach-Merritt症候群—ならびに本症候群の病態生理についての考察

著者: 長島親男1 高浜素秀2 宮路太3 前田和一3 松浦黎子4 浅野孝雄5

所属機関: 1埼玉医科大学脳神経外科 2埼玉医科大学病理 3埼玉医科大学小児科 4埼玉医科大学麻酔科 5東京大学脳神経外科

ページ範囲:P.547 - P.556

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 新生児の後頭部正中線上に大きな腫瘤をみたとき,まず考えるのはEncephaloceleや,Encephalomeningoceleのたぐいであろう.ここに報告する症例は,そうではなくて巨大な血管腫であった.この血管腫は生後10日に紫色に変色した部分で現われ40日頃から比較的急速に増大するとともに,貧血,血小板減少,肝と脾の腫大などKasabach-Merritt症候群の第1期から第2期に進んできた.治療に対する諸家の見解は放射線とステロイド併用法が大勢をしめているが38,59,78),本例は次の3つの理由によって手術を行なった.(1)切除可能な部位であること,(2)血管撮影で多数の血管網があり,この乳児の循環血液量の相当な部分が巨大血管腫に奪われてHigh cardiac output syndrolne12,25)→心不全を来していると考えられたこと,(3)腫瘤血管に含まれる血小板数の方が末梢血の血小板数より多く,血管腫内に血小板の抑留と破壊(sequestration)が起っていると想定されたこと.手術報告例は現在までに12例があり,なかには大出血によって死亡したり6),術後に重篤な凝血障害を起した例もある11),そこで,慎重な前処置を行なって丹念な止血をし,全摘出に成功した.血小板数は術翌日より正常値に復し,さらに3カ月のFollow-upで正常な発育を示している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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