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症例
帽状腱膜下腔からの髄液吸収が示唆されたくも膜下出血後水頭症の1例
著者: 林秀明1 野口和幸2 砂田一郎3
所属機関: 1大東中央病院脳神経外科 2野口診療所 3済生会茨木病院脳神経外科
ページ範囲:P.1083 - P.1087
文献購入ページに移動脳脊髄液は脳室内の脈絡叢で産生され,脳室内から脳表のくも膜下腔へ流出して,くも膜顆粒を通じて上矢状洞へ吸収されると考えられている13).この流れが障害されるために起こる水頭症に対して,通常脳室腹腔短絡術(ventricolo-peritoneal shunt,V-P shunt)を行うのが,一般的である.しかし改善されたとはいえ,この手術においては流出路が腹腔であるために,流出過多によるslit ventricle syndromeや硬膜下血腫の合併,あるいはシャントチューブが長いために起こる腹腔側チユーブの閉塞等の問題点が依然残っている.われわれは,くも膜下出血後の水頭症で,術後脳梗塞に伴う脳浮腫に対して外減圧術と硬膜の減張縫合を行ったのちに,帽状腱膜下腔に髄液が流入して吸収され,水頭症が自然緩解した症例を経験した.この症例における脳脊髄液の吸収過程から,より生理的なV-P shunt手術はどのような手術かについて考察をしたので報告をする.
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