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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科30巻10号

2002年10月発行

文献概要

連載 医療保険制度の問題と改革への提言・7

現場からの提言—日本独自の社会科学上の概念を—現行の点数の奪い合いに未来はない

著者: 北原茂実1 池上直己2 齋藤勇3 徳田禎久4 堂本洋一5

所属機関: 1北原脳神経外科病院 2慶應義塾大学医療政策管理学 3杏林大学脳神経外科 4禎心会病院 5慶應義塾大学伊勢慶應病院脳神経外科

ページ範囲:P.1129 - P.1133

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Ⅰ.より良いサービスをより安く,多くの人に
 現在,医療保険制度が破綻寸前であることは周知の事実であるが,これに対し医師会や学会などの医療界も,保険者も国民も厚生労働省も皆自分の都合を主張するのみで,マクロ的なものの見方を失っており,とりあえずの対症療法だけを模索している状況だと私は思う.
 日本は今年,53歳の人口が240万人であるのに対し,10歳の人口は半分に過ぎない.ということは今のままのシステムを維持しようとするならば,12年後には,払わずにもらうだけの人口に対して,社会人として税金や保険料を支払ってこれを支える人口が半分になってしまうわけで,全収入の3分の2を源泉徴収されるような世の中がくるということである.この厳しい現実に対して医療界は,1)国民皆保険の維持は至上命題である,2)受診率を下げないように自己負担の増額には反対である,3)診療報酬に関してはまだまだ足りず引き上げを要求する,という立場である(多くの医療機関が先般の診療報酬2.7%引き下げに対し,猛烈な反発を示したのはご存知の通り).それなら残る方法は,1)保険料および企業負担を増やす,2)税金など公的資金の投入を増やす,ことしかないではないか.これはマクロの目で見れば,いずれにせよ国民負担を増やすことになるわけだから,国民も,票が欲しい政治家も,保険者も納得するはずがない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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