文献詳細
文献概要
総説
脊髄動静脈奇形
著者: 宮本享1 片岡大治1
所属機関: 1京都大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.143 - P.153
文献購入ページに移動Ⅰ.はじめに
脊髄動静脈奇形という疾患の概念は,選択的脊髄血管造影法の発達とともに大きく進歩して理解されるようになった.その後,血管内治療という治療手段の進歩に伴い超選択catheterizationによってさらに詳細な解剖学的構築が分かるようになった.また,MRIの画像診断能力の改良に伴い,病態生理学的な情報をも得ることができるようになり,さらに本疾患への理解が深まってきている.
しかしながら,本疾患は稀な疾患で病理組織学的検討がなされることは比較的少ない.さらに脊髄は脳におけるSPECTやPETのように循環動態を測定する手段をもたないため,放射線学的所見のみで疾患分類が類推判断され体系化されてきた可能性があり,当然実際の術中所見との間に微妙な差異があり得る.脊髄動静脈奇形についての多くの分類がこれまで提唱され,学会発表でも成書においても疾患分類に力点がおかれすぎてきたのはこのためである.したがって,放射線学的手法のみによる診断の限界を念頭におく必要がある.病態理解のためには,脊髄動静脈奇形だけが特殊な疾患概念をもっというよりは,本疾患を脳における動静脈奇形あるいは硬膜動静脈瘻に類似した類似の病態であると捉え,そのうえで脊髄血管系の特殊性を考えるのが妥当であろうと考えている.
脊髄動静脈奇形という疾患の概念は,選択的脊髄血管造影法の発達とともに大きく進歩して理解されるようになった.その後,血管内治療という治療手段の進歩に伴い超選択catheterizationによってさらに詳細な解剖学的構築が分かるようになった.また,MRIの画像診断能力の改良に伴い,病態生理学的な情報をも得ることができるようになり,さらに本疾患への理解が深まってきている.
しかしながら,本疾患は稀な疾患で病理組織学的検討がなされることは比較的少ない.さらに脊髄は脳におけるSPECTやPETのように循環動態を測定する手段をもたないため,放射線学的所見のみで疾患分類が類推判断され体系化されてきた可能性があり,当然実際の術中所見との間に微妙な差異があり得る.脊髄動静脈奇形についての多くの分類がこれまで提唱され,学会発表でも成書においても疾患分類に力点がおかれすぎてきたのはこのためである.したがって,放射線学的手法のみによる診断の限界を念頭におく必要がある.病態理解のためには,脊髄動静脈奇形だけが特殊な疾患概念をもっというよりは,本疾患を脳における動静脈奇形あるいは硬膜動静脈瘻に類似した類似の病態であると捉え,そのうえで脊髄血管系の特殊性を考えるのが妥当であろうと考えている.
掲載誌情報