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文献概要
連載 医療保険制度の問題と改革への提言・4
現場からの実例・提言—特定医療・転院
著者: 池上直己1 森山貴2 松前光紀3
所属機関: 1慶應義塾大学医療政策 管理学 2森山病院脳神経外科 3東海大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.895 - P.899
文献購入ページに移動甲状腺機能亢進症の既往があるが,明らかな不整脈の既往はない,1998年3月右片麻痺を呈し,一過性脳虚血発作の診断にて入院.脳血管撮影にて左内頸動脈のC3 portionに閉塞を認めたが,右内頸動脈からのcross flowが良好であったため,抗血小板薬のみにて外来でフォローされていた
1998年12月29日12時30分頃,突然の意識障害で再発症,救急車にて来院した.来院時の意識は痛み刺激に対して払いのけが可能な程度であり,同時に左片麻痺を認めた.頭部CTで出血や新たな低吸収域はみられず,右内頸動脈閉塞の疑いにて血管撮影を試行した.右内頸動脈の頭蓋内分岐部直前から中大脳動脈起始部,前大脳動脈起始部に至る狭窄が認められ,血流は著しく遅延していた.左内頸動脈は頸部内頸動脈に至るまで閉塞していた.また,椎骨動脈系からの側副路は期待できない状態であった.家人に対する十分なinformed cansentの後,15時50分よりマイクロカテーテルを右内頸動脈を経て中大脳動脈に挿入し,t-PAを使い血栓溶解を行ったところ狭窄の程度に改善がみられた.その後のCTでは両側の前大脳動脈—中大脳動脈分水嶺領域に低吸収域が出現した.しばらくapatheticな状態が続いたが徐々に発語も増加し,車椅子による移動も可能となったが,自宅での介護が困難なため1999年6月11日他院へ転院となった.
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