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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科30巻9号

2002年09月発行

文献概要

読者からの手紙

「One-way ball valveを利用した体外脳室心房短絡術—脳室ドレナージ中の患者のADL改善のために」の論文について(1)/(2)

著者: 平野亮1 柴田和則1 杉山誠2 岡田崇2 樋口晧史2 矢部熹憲2

所属機関: 1釧央脳神経外科病院 2東日本循環器病院脳神経センター脳神経外科

ページ範囲:P.1025 - P.1026

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 貴誌2002年4月号405ページに掲載された久保重喜先生らの研究論文1)について,疑問点があり投稿いたします.著者らは,ドレナージ中の患者のADLを改善すべくアクティバルブⅡを用いた体外VAシャントを実施したと述べています.その実施時期として,論文内で「患者の全身状態がある程度安定した段階で,髄液に凝血やフィブリン塊を認めず,かつ髄膜炎のないことを確認して」とありますが,普通ならこの時期に回路を閉鎖し,水頭症が出現すればVPシャントを行うのではないでしょうか.提示された4症例のうち,3症例が後にVPシャントを施行したことを考えれば,髄膜炎や菌血症などのリスクを犯してまで10〜20日間も体外VAシャントを行う必要性があるとは,残念ながら思えません.提示された症例は,幸い髄膜炎などの感染症を併発しませんでしたが,もしそうなっていた場合,せっかくのVPシャントの時期を失するか,遅延させることとなり,患者のデメリットは非常に大きくなっていたはずです.むしろ,体外VAシャントは髄液性状に変化の出ない脳梗塞や脳腫瘍などの,非出血性病変による閉塞性水頭症の症例に限定すべきだと考えます.実際に論文中でも,後にVPシャントを必要としなかった1例は小脳梗塞でした.正常髄液で時間経過とともに,通常の生理的髄液路が回復することが期待される症例にのみ,この方式は有用性があると思います.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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