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総説
癌分子標的治療薬開発の現況と脳腫瘍治療への応用
著者: 白石哲也1 田渕和雄1
所属機関: 1佐賀医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.365 - P.381
文献購入ページに移動Ⅰ.はじめに
最近の分子生物学的研究の進歩によって,一般に癌は種々の癌遺伝子および癌抑制遺伝子の経時的多段階異常の蓄積が原因であり,しかも異常のパターンが各々の癌の細胞生物学的特性を規定していることが明らかとなった.癌の発生や進展に密接に関係する標的分子(蛋白質あるいは遺伝子)を選択的に攻撃する新しい抗癌剤(分子標的治療薬;molecular targeting drugs)の開発が活発となり,すでに臨床に用いられている薬剤もある.
通常分子標的治療薬は従来の抗癌剤と比較して副作用が少なく,長期投与が可能なため,患者のQOL(quality of life)の改善や延命に大きく寄与するものと期待されている.しかしある薬剤が細胞に何らかの影響を及ぼす場合,全て細胞内の機能分子を介してその効果が現れているわけであり,その意味では細胞増殖抑制効果を指標にランダムに選ばれてきた従来の多くの抗癌剤も広義の分子標的治療薬といえよう.一方遺伝子を細胞内に導入して癌細胞を変化させる遺伝子治療,あるいは化合物や分子を癌細胞内により特異的に集積させるとか,細胞内で毒性を発揮する物質に変換させるなどのdrug delivering systemなども広義には分子標的治療の範疇に入ると考えられる.
最近の分子生物学的研究の進歩によって,一般に癌は種々の癌遺伝子および癌抑制遺伝子の経時的多段階異常の蓄積が原因であり,しかも異常のパターンが各々の癌の細胞生物学的特性を規定していることが明らかとなった.癌の発生や進展に密接に関係する標的分子(蛋白質あるいは遺伝子)を選択的に攻撃する新しい抗癌剤(分子標的治療薬;molecular targeting drugs)の開発が活発となり,すでに臨床に用いられている薬剤もある.
通常分子標的治療薬は従来の抗癌剤と比較して副作用が少なく,長期投与が可能なため,患者のQOL(quality of life)の改善や延命に大きく寄与するものと期待されている.しかしある薬剤が細胞に何らかの影響を及ぼす場合,全て細胞内の機能分子を介してその効果が現れているわけであり,その意味では細胞増殖抑制効果を指標にランダムに選ばれてきた従来の多くの抗癌剤も広義の分子標的治療薬といえよう.一方遺伝子を細胞内に導入して癌細胞を変化させる遺伝子治療,あるいは化合物や分子を癌細胞内により特異的に集積させるとか,細胞内で毒性を発揮する物質に変換させるなどのdrug delivering systemなども広義には分子標的治療の範疇に入ると考えられる.
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