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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科31巻9号

2003年09月発行

雑誌目次

日本人の髪型

著者: 斉藤延人

ページ範囲:P.951 - P.952

 日頃から頭ばかりを見ているからという訳ではないが,時代劇で使用している髷(まげ)のかつらが妙に気になる.現実にはあのように整いすぎた髪型の人はいなかったに違いない.
 もみあげがあんなに下まで伸びている人はいないだろうし,もっとほつれ毛があるに違いない.月代(さかやき)も,髭の濃い人の髭剃り跡のように,夕方にもなれば五厘刈り程度に伸びていた人もいたのではないだろうか.剃毛も毎朝必ずきれいに剃り上げていたと考えるのは不自然で,中には無精月代をはやしていた人もいたのだろう.戦地においてはなおさらで,いつ首を掻かれるかわからないような状況で,他人に頭部の剃毛を任せるような気にはならないのではないだろうか.

解剖を中心とした脳神経手術手技

経鼻的下垂体腫瘍摘出術—術式および工夫

著者: 阿部琢巳

ページ範囲:P.955 - P.974

Ⅰ.はじめに
 下垂体腫瘍に対するtransnasal transsphenoidalsurgeryの歴史は20世紀初頭に遡る.1910年4月21日,Johns Hopkins HospitalにおいてHarveyCushingが初めてsublabial transseptal surgeryを施行した36).その約1カ月後の5月25日に,Wien大学でOskar Hirschがendonasal transseptal surgeryを行っている45).その後,両法ともヨーロッパではかろうじて命脈を保っていたものの,米国ではCushingがtranscranial surgeryがtranssphenoidalsurgeryよりも優れていると公表したこともあり37),下火になっていた.1958年,Guiotらが初めてtranssphenoidal approachに術中X線透視装置を導入した42).1967年,Jules HardyがGuiotの下で学んだ方法をさらに発展させ,さらにmicrosur—geryの手技を導入してsublabial transsphenoidalapproachの隆盛期を築いた43)

研究

脳実質を透視したEPI拡散強調MR画像の3次元可視化表示による超急性期脳虚血病巣の立体的画像評価

著者: 佐藤透

ページ範囲:P.976 - P.987

Ⅰ.はじめに
 近年のecho-planar imaging(EPI)による拡散強調画像(diffusion-weighted image, DWI)や灌流画像(perfusion image, PI)の急速な普及に伴い,超急性期に脳虚血の状態を短時間で画像評価することが可能となり,脳虚血超急性期における血流再開を目的とした治療戦略が革新されている3,10,16,18-20).特に,DWIでは発症後間もない脳虚血病巣が検出可能なため,虚血性脳血管障害治療の緒となる画像診断として,その有用性は広く認められている2,4-6,9,10,12,13,18,19,21,22)
 DWI高信号強度領域で示される脳虚血病巣の画像評価は,これまで,1枚あるいは複数枚の元画像上で視覚判断されてきた.しかしながら,これら2次元画像では,広範囲で複雑な虚血病巣の拡がりや,散在する同時多発病巣の位置関係を立体的に把握することは困難な場合がある.また,脳虚血の進行に伴い,時間的・空間的に時々刻々と変化する超急性期病巣を画像追跡するためには,DWI高信号強度領域を3次元可視化表示し,立体的に画像評価することが必要と思われる.

症例

後頭蓋窩硬膜下水腫と水頭症を呈した小児の1手術例

著者: 細谷理喜 ,   村上謙介 ,   高橋昇 ,   鈴木保宏 ,   富田隆浩 ,   福地成 ,   安保亘 ,   西嶌美知春

ページ範囲:P.989 - P.993

Ⅰ.はじめに
 小児の硬膜下水腫はテント上に発生することが多く,原因としては,外傷や頭蓋内感染症,脳室—腹腔短絡術後のover drainageなどが知られている.
 われわれは,ウイルス性髄膜炎後に後頭蓋窩硬膜下水腫と水頭症を発症した小児の1手術例を経験したので報告する.

間接吻合術後症状の改善が得られず,直接吻合を加え軽快した成人モヤモヤ病の1例

著者: 東保肇 ,   伊勢田努力

ページ範囲:P.997 - P.1001

Ⅰ.はじめに
 小児モヤモヤ病に対する外科的治療は直接吻合術と間接吻合術に大別される.当院では,中大脳動脈領域の虚血に対してはsuperficial temporalartery-middle cerebral artery anastomosis(STA-MCA anast)with/without encephalo-myo-synangi-osis(EMS)1,2)を施行してきた.
 今回,成人モヤモヤ病患者で,某大学附属病院でfronto-temporo-parietal combined indirect by-pass procedure4)を受け,その後も一過性虚血発作を繰り返した症例に対する直接吻合術で工夫を要した症例を経験したので報告する.

左前頭葉髄膜腫を合併したBasilar Impressionの1例

著者: 朝本俊司 ,   ,   ,   Böker

ページ範囲:P.1003 - P.1007

 Case report:A 75-year-old haikarian woman was admitted to our hospital for treatment of seizures.From the re-sults of neurological and radiological examination, a left frontal meninginma was suspected and the patient was re-ferred to our department for neurosurgical intervention.At admission, the MRI showed a basilar impression accompanied by Klippel-Feil syndrome of C4/5/6/7, but neurological symptoms of basilar impression were absent.Subsequently, the tumor was resected via the left frontal approach using microsurgical technique.Histological exami-nation disclosed fibroblastic meningioma.

Ruptured frontopolar artery aneurysmの2例

著者: 相場豊隆 ,   高橋祥 ,   福多真史

ページ範囲:P.1009 - P.1012

Ⅰ.はじめに
 末梢性前大脳動脈瘤(distal anterior cerebral ar-tery aneurysm:以下DACAn)は全脳動脈瘤の5%前後7)とされ比較的稀なものであるが,いわゆる前大脳動脈膝部(AC genu)以外の部位のものは細菌性動脈瘤を除いてはさらに稀となる.
 今回われわれは,珍しいfrontopolar artery aneu-rysmの2手術例を経験したのでここに報告する.

術前のボツリヌス毒素注射と後方拡大術が有効であった,脳性麻痺による二次性痙性斜頸に起因する頸椎症の1例

著者: 岩室宏一 ,   高橋宏 ,   井出勝久 ,   中内淳 ,   谷口真

ページ範囲:P.1015 - P.1020

Ⅰ.はじめに
 アテトーゼ型脳性麻痺では頸部ジストニアによる二次性痙性斜頸が起こり,比較的若年時から頸部椎間板変性と変形性頸椎症を高率に合併する2).その外科的治療では,①頸部安静保持が困難である点と,②術後の再発率が高い点が大きな問題である4,8).Racetteらはこうした症例に対する術前のボツリヌス毒素注射の有効性を報告しており4),今回われわれも,ボツリヌス毒素製剤により痙性斜頸を改善したうえで,頸椎症に対して脊柱管後方拡大術を施行して良好な結果を得たので報告する.

左中頭蓋窩に原発したmeningeal melanocytomaの1例

著者: 湯川宏胤 ,   関博文 ,   菅原孝行 ,   朴永俊 ,   樋口紘 ,   小野貞英

ページ範囲:P.1023 - P.1028

Ⅰ.はじめに
 原発性meningeal melanocytomaは,稀な疾患であり,頭蓋内では後頭蓋窩やMeckel's caveに多いとされ,比較的予後良好といわれている5,20).本症例は中頭蓋窩底部から左側頭葉に進展した原発性meningeal melanocytomaであり,小脳テント上では21例目の報告である.Meningeal melanocy-tomaはmalignant melanoma, pigmented men-ingioma等との鑑別が問題となる.しかし,その鑑別は画像上では困難な場合が多い.今回われわれは,術中にこのような症例に遭遇した場合どう対応すべきか,外科的な立場から考察したので報告する.

連載 脳外科医に必要な臨床神経生理の基礎・3

誘発電位・誘発磁界による脳機能マッピング

著者: 中里信和 ,   菅野彰剛 ,   社本博 ,   隈部俊宏 ,   冨永悌二

ページ範囲:P.1030 - P.1037

Ⅰ.はじめに
 脳の機能局在は,疾患の治療戦略を決めるうえで知っておくべき重要項目のひとつである.脳溝・脳回の解剖構造のみから機能局在を推定する方法も有用であるが,機能局在の個人差や病変や疾患による機能局在の可塑性に対応できない場合もある.脳機能マッピングの手法として近年注目されているPETや機能的MRIは,代謝や血流の変化から脳機能を読み取る画像検査法であるが,脳の電気活動そのものではなく,それによって引き起こされる二次的変化を観察する検査法である.しかもPETや機能的MRIには時間的な解像度の限界があるために,賦活された多部位の信号領域のそれぞれが,目的とする脳機能にどの程度特異的かという点で,今後検討すべき課題が多い。一方,電気生理学的検査法は半世紀前から用いられている手法であるが,神経活動に伴う電気活動そのものを観察,あるいは神経組織を直接に刺激して反応を調べられるために,機能情報の特異性が極めて高く,さらにミリ秒単位の高い時間分解能が得られる.これまでは十分な空間解像度を得るために頭蓋内に直接電極を留置しなければならないという欠点があったが,最近,磁気を用いた新しい神経生理検査が登場したことによって,非接触・非侵襲的でも高い空間分解能が期待できるようになった.
 電磁気生理学的な脳機能マッピング手法をTableにまとめた.

特別寄稿

日本脳神経血管内治療学会認定医制度について

著者: 滝和郎 ,   安陪等思 ,   江面正幸 ,   衣笠和孜 ,   桑山直也 ,   小池哲雄 ,   後藤勝弥 ,   小西善史 ,   坂井信幸 ,   佐藤浩一 ,   園部眞 ,   高橋明 ,   寺田友昭 ,   中原一郎 ,   新見康成 ,   根来真 ,   根本繁 ,   瓢子敏夫 ,   兵藤明夫 ,   宮地茂 ,   松島聡

ページ範囲:P.1039 - P.1041

I.認定医制度創設まで
 日本脳神経血管内治療学会では,2001年(発足は2000年10月)から認定医制度を開始し,2002年に第一回専門医試験を施行,2003年7月現在,第二回専門医試験を実施中である.
 ここ最近の25年間に脳神経血管内治療はめざましく発展を遂げ,その治療効果について多くの報告がなされてきている.最近では急性期破裂脳動脈瘤の治療に関してISATなどのエビデンス度の高い調査研究結果で血管内治療の有効性が確実に示されてきており,血管内治療の需要がますます高まってきている.また,ステントなどの新しい器材を用いた頭頸部血管形成術は着実に発達してきており,Sapphireなどの調査でその有用性が証明されてきている.さらに今後は頭蓋内血管の形成術などがめざましく発展してくるものと考えられる.

医療経済

特定機能病院における入院医療の包括評価(Diagnosis Procedure Combination:DPC)の概要について(第3報)—包括評価点数の算定方法

著者: 安達直人

ページ範囲:P.1044 - P.1046

 第1報(第31巻5号:594-595)で包括評価の概要を述べ,第2報(第31巻8号:942-943)では算定の基本となる診断群分類とその決定方法について述べた1,2).第3報として診断群分類に基づいた包括評価点数の算定方法について述べる.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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