文献詳細
文献概要
扉
NBM(narrative based medicine)
著者: 新井一1
所属機関: 1順天堂大学脳神経外科
ページ範囲:P.3 - P.4
文献購入ページに移動現代の“科学として医学”を患者のために用いようとするならば,われわれ医師は患者の“物語り”を抽出して「病歴」という医学化された物語に変換しなければならない.そして,その「病歴」に基づき必要な検査を選択し,これを行い,得られたデータを根拠にEBMの手法にのっとり診断と治療を行っていくのである.しかし,このような手法によってもたらされる弊害として,以前より指摘されていることではあるが,患者不在・データ重視の医療がはびこるという問題がある.データ重視の医療がいき過ぎると,患者は人間として扱われず,個人としても尊重されることはなくなり,場合によっては患者の苦しみが増すことさえある.NBMでは,医師は時間をかけて患者の語る“物語り”を傾聴しなければならない.そして,医師と患者との間に良好な関係が築かれたところで,個々の患者の心と身体両方に目を向けた“patient-centered”な医療が実践されるべきなのである.患者の語る“物語り”は,患者がどのように,どんな理由で,どんなふうに病んでいるかを示すのであって,それは患者のすべての病歴が収められた電子記録カードとは比べものにならないほど多くの情報をわれわれに提供するということを医師は知る必要がある.
掲載誌情報