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総説
家族性もやもや病の臨床像と最近の研究の動向
著者: 難波理奈1 黒田敏1 石川達哉1 多田光宏2 宝金清博3 岩崎喜信1
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科脳科学専攻神経病態学講座脳神経外科学分野 2北海道大学遺伝子病制御研究所癌関連遺伝子分野 3札幌医科大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.7 - P.16
文献購入ページに移動東アジアに特異的に多く発生するもやもや病の病因は現在も不明であり,厚生労働省の研究班が全国的なレベルでの研究を推進している.発生の要因としては,これまでに感染症や遺伝子異常が指摘されているが,本疾患の約15%には家系内発症が存在し,近年のMRAなど非侵襲的な検査の発達により増加傾向にあるとされている.その点から,現在は家族性もやもや病の遺伝子異常を検索することにより,疾患発生の原因を特定しようとする研究が,特に精力的に行われている.
しかしながら,これまで家族性もやもや病の臨床像を詳細に検討した報告は意外と少なく,単発的な報告がほとんどである.遺伝子異常を検索するに当たっては,家族内発症の臨床像を的確に把握することが極めて重要である点からも,その必要性は高いと考えられる.しかし,過去,家族性もやもや病の報告のほとんどは日本語論文でなされ,現在,Medlineで検索できないものも多いのも事実である.したがって,本疾患の原因遺伝子の検索と平行して,今一度,過去に報告された家族性もやもや病をレビューして,その臨床像を明らかとすることは,今後の研究に当たっても重要であると考えられる.
以上の経緯より,本総説では,国内外で報告された家族性もやもや病の症例をすべて抽出して,その臨床像を明らかにするとともに,本疾患における最近の遺伝子研究の動向を概説する.
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