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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科32巻1号

2004年01月発行

文献概要

研究

薬剤耐性遺伝子発現を基に化学療法を施行した胚細胞性腫瘍の検討

著者: 國塩勝三1 岡田真樹1 三宅啓介1 松本義人1 長尾省吾1 西山佳宏2 大川元臣2

所属機関: 1香川大学脳神経外科 2香川大学放射線科

ページ範囲:P.19 - P.26

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 Ⅰ.はじめに

頭蓋内胚細胞性腫瘍(GCT)の治療として,視床下部-下垂体機能障害,高次機能障害などの放射線照射による障害を回避するため,シスプラチンなどを中心にした化学療法と放射線量および照射範囲を縮小した放射線治療の併用療法が行われるようになってきた15,20,26).胚腫においては化学療法単独では再発例も比較的多く,化学療法のみでは限界があると考えられている3,5,14).この原因の1つには,血液脳関門での抗癌剤透過性の問題,さらに個々の腫瘍における薬剤耐性の相違が考えられる.作用機序の異なる複数の薬剤に耐性を獲得する機構を多剤耐性というが,この原因遺伝子としてこれまでmultidrug resistance gene(MDR1),multidrug resistance-associated protein(MRP)1,MRP2,MRP3,MRP4,MRP5,mito-xantrone resistance gene(MXR1),O6-methylguanine DNA methyltransferase(MGMT)およびglutatione S-transferase-pei(GST-π)などが同定されている2,4,6,9,11,13,17,21,22,23,30).脳腫瘍,特に神経膠腫におけるこのような薬剤耐性遺伝子の検索は数多くみられる4,19,22,23,30)ものの,頭蓋内GCTにおける薬剤耐性遺伝子検索に関する報告は文献上みられない.

 一方,心筋血流製剤として開発された99mTc-hexakis-2-methoxy- isobutyl-isonitrile(MIBI)は,脳腫瘍においても201Tl-chloride(Tl)と同様親和性を示し高画質な集積が得られ,多剤耐性のイメージング剤としても注目されている1,16,31).すなわち,ある種の抗癌剤を細胞内から排出するポンプとして働くMDR1遺伝子産物のP糖蛋白がMIBIを細胞外へ排泄すると考えられており,MIBIの集積・排泄は薬剤耐性と関連し,肺癌,乳癌などの悪性腫瘍の化学療法における効果予測にMIBI-SPECTの所見が有用であるといわれている16,25)

 今回,われわれは2例のGCTにおいて薬剤耐性遺伝子の発現結果を参考にして抗癌剤を選択した化学療法を施行し,さらにMIBI-SPECT所見と薬剤耐性遺伝子発現との関連性についても検討したので報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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