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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科32巻10号

2004年10月発行

文献概要

報告記

第12回国際頭蓋内圧および脳モニタリング学会(ICP2004)に参加して(2004年8月16日~20日)

著者: 間瀬光人1

所属機関: 1名古屋市立大学大学院医学研究科神経機能回復学(脳神経外科)

ページ範囲:P.1064 - P.1065

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 ICP2004は2004年8月16日から20日の5日間,香港島にある香港会議展覧センターにおいて,Chinese University of Hong Kongの脳神経外科教授Wai S. Poonのもとで開催された.本学会は現在3年ごとにアジア,アメリカ,ヨーロッパの持ち回りで行われている.前回(第11回)はケンブリッジにおいて2000年に行われ,第12回学会は昨年ICP2003として香港で行われるはずであったが,あのSARS騒ぎのために延期になっていた.今回1年遅れで開かれたにもかかわらず盛況な学会となった.応募演題数約250題に対し80%の採択率で,約110題のoral plenary paperと90題のposter paperが発表された.各抄録は複数のinternational reviewersにより採点され点数結果が事前にメールで知らされた.Oral plenary sessionはメイン会場で,posterは2つの会場で行われたが,どのセッションにおいても極めて活発な討論がなされていたのが印象的であった.

 主なトピックは,種々の病態における頭蓋内圧管理,神経化学モニタリング,ニューロイメージング,水頭症,脳コンプライアンス,バイオフィジクスなどであった.特に頭蓋内圧代償能やコンプライアンスなど,頭蓋内環境の物理学的・生理学的解釈に話が及ぶと,それはもう一介のmedical doctorの理解を超えたハイレベルの物理学的,数学的内容で激しいバトルが繰り返された.ただしこれが他の学会にはない,本学会の何とも楽しい部分ではある.しかしこの楽しい部分が今回の学会では少し減ってきたように思う.その理由としては,最近のCTやMRI技術の進歩により,頭蓋内病態を画像から正確に診断することが可能となってきたため,一昔前のように頭蓋内圧波形などから頭蓋内病態の変化を予測する必要がなくなり,実際の臨床でもICPを日常的に測ることは少なくなっていることが考えられる.その代わり学会全体のフォーカスは,より臨床的な頭蓋内圧管理に移ってきた.重症頭部外傷患者の治療,バルビツレート療法や脳低温療法などにおいてはICPおよびCPP(cerebral perfusion pressure)管理が必須であり,この分野でのICP測定の重要性は疑いもないようであるが,これを含めすべてのclinical trialにはrandomizationが強く求められた.その中でEUの30以上のmedical centerが集まってBrain IT Groupを立ち上げ,脳外傷患者の集中治療のデータベース化を開始したという報告が光っていた.また審査の結果,Best oral presentation awardはシカゴのDr. Noam Alperin“Evidence of the importance of extracranial venous flow in patient with idiopathi intracranial hypertension(IIH)”に与えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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