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扉
建前と本音,理想と現実
著者: 脇坂信一郎1
所属機関: 1宮崎大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.1101 - P.1102
文献購入ページに移動本年4月からは大学も法人化され国立大学法人となった.法人化による大学の自由裁量権の拡大が謳われているが,中期目標・中期計画を掲げ,その達成度の評価を受けねばならず,そのためデスクワーク量は飛躍的に増大し,会議・委員会も増えた.学長をはじめとする大学評議会・理事会の権限が強化され,これまでは医学部教授会を中心として医学部キャンパス内で自己完結していた人事や予算なども,全て本部の決済を待たねばならない.さらに法人化により労働基準法が適用されることになって事態は複雑化した.医師が労働者であるかどうかの議論は別として,素直に考えれば現在の病棟勤務の実態は労働基準法違反の疑いがある.労働基準法の説明を聞いて驚いたが,当直医・宿直医は連絡事務に徹して病棟・外来業務を行ってはならず,もし行った際には翌日は休暇を取らねばならぬという.今でさえ少ないマンパワーでやりくりしているのに,これをそのまま受け入れるのは到底不可能である.事務職員,技師,看護師には労働基準法による超過勤務手当が検討されているが,もともと大学医学部教員は,附属病院所属であっても教育職としての給与体系に組み込まれており,日常当然のように行われている診療業務による超過勤務は給与には反映されない.法と実態との摺り合わせに苦慮するところである.
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