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研究
改良電極を用いた新しい陰部神経モニタリング法―術中腰仙部脊髄脂肪腫例
著者: 秋葉新1 野本洋子1 大藪泰子1 藤元佳記1 島田勇1 佐藤知行2 篠田宗次3
所属機関: 1自治医科大学付属病院臨床検査部 2自治医科大学付属病院外科 3自治医科大学大宮医療センター脳神経外科
ページ範囲:P.223 - P.229
文献購入ページに移動二分脊椎(spina bifida)は胎生期中枢神経閉塞障害による形成異常で,硬膜や脊椎骨や皮膚の欠損を伴う病態であり多くは腰仙部に発生する.脊髄や馬尾神経の一部が露出したり,癒着を起こしている場合があり,また皮膚洞や脂肪腫を合併して神経と癒着している病態もある.これらの病態の一部では,癒着のため成長とともに神経の係留を起こし,尿/便失禁などの膀胱直腸症状や下肢の神経症状を後天的に起こしてくる症例もある6,11).このような症例では症状の出現前あるいは軽症のうちに脊髄や神経の癒着を可能な限り除去して,症状出現を予防する手術が行われる.予防手術であることから新たな神経症状を出さないことは手術時に重要なことであり,このため陰部神経の同定と温存は最重要課題となる.脊髄脂肪腫除去術中モニターとして下肢表在筋活動電位記録は容易であるが,陰部神経に関しては膀胱内圧や肛門内圧によるモニター,知覚神経や針電極による外肛門括約筋活動電位モニターなど諸氏によりさまざまな工夫がなされている.
しかし,外肛門括約筋のモニタリングとして表面電極を用いて行ったという報告はない.理由として,適当な外肛門括約筋活動電位記録電極がなかったことと,肛門長が大人に比べ短いので装着部位の決定が難しいことが挙げられる.われわれは市販のスフィンクター電極を乳児用に改良し,肛門内に静置することにより,陰部神経被刺激時の外肛門括約筋活動電位を明瞭に記録することができた.
当施設では数年前より,直腸癌の手術前後において,肛門機能評価の目的で肛門内圧,機能的肛門長測定1,9)および陰部神経磁気刺激による外肛門括約筋活動電位の導出を行っている1).これを応用して腰仙部脊髄脂肪腫の術中神経モニタリングを行った.適切な電極装着部位,刺激法および注意点などの知見を得たので考察を加え報告する.
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