icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科32巻4号

2004年04月発行

雑誌目次

最近の医療事故報道に思う

著者: 本郷一博

ページ範囲:P.323 - P.324

 新聞,テレビにて医療事故報道のない日はないといってよいほど,日々多くの報道がなされている.確かに極めて悪質な医療事故,明らかな医療ミスに対しては,きちんと真実が報道され,裁かれなければならないことはいうまでもない.

 しかし,最近の報道事例を見るに,あるリスクを持った治療を行い結果として十分な治療が行えなかった,術後合併症が生じたというような状況であっても,医療事故として報道されることが多くなったように思われる.たとえば,脳動脈瘤に対する血管内治療で,術中のカテーテル操作により動脈瘤が破裂した,として医療事故に問われたものである.現在,血管内治療の専門家の手によっても,数パーセントの術中破裂はあるといわれている治療手技である.術前,十分に説明がなされ,術中破裂の危険性も話されたはずである.患者側も数パーセントのリスクを了解しての治療選択であったと思われる.にもかかわらず,結果が患者側に満足のいくものでなかったために医療事故であると報道されれば,最終的に過誤ではないと判断されても,社会的には,この治療方法に対する,あるいは,当該の医療施設に対する不信感が持たれることは避けられない.患者・家族としては,治療に際して合併症のリスクについて十分説明を受け,納得して治療を受けるはずであるが,実際には,リスクはあくまでも一般的な数字であり,自分がその状況になることは実感していない,ということかもしれない.うっかりミス,明らかな技術的なミスなど,これらが今後繰り返されないようにするためにも,その原因が詳細に検証され,状況によってはしかるべき責任を取ることは必要である.しかし,先の例のように,治療方法そのものにある確率でリスクを伴う場合は,いわゆる医療ミス,医療事故とは異なるものではないだろうか.

研究

もやもや病の直接吻合術におけるより確実な方法

著者: 東保肇

ページ範囲:P.327 - P.331

 Ⅰ.はじめに

もやもや病は両側内頸動脈先端部を中心に緩徐な閉塞が起こり,その代償としてそれらの末梢への側副路が発達してくる.

 もやもや病の虚血に対しては間接吻合術,直接吻合術あるいは両者を組み合わせた方法が適用される.

 今回,中大脳動脈領域の虚血に対して施行される直接吻合術である浅側頭動脈(STA)‐中大脳動脈(MCA)吻合術1)の際の手技上の工夫につき筆者の経験をもとに,より確実な吻合の工夫を述べる.

特発性脊髄硬膜外血腫の臨床的検討

著者: 君和田友美 ,   高橋敏行 ,   清水宏明 ,   冨永悌二

ページ範囲:P.333 - P.338

 Ⅰ.はじめに

特発性脊髄硬膜外血腫(SSEH:spontaneous spinal epidural hematoma)は比較的稀な疾患であるが,近年その報告例は増加しており臨床像,画像所見が明らかになってきている.頸部痛あるいは背部痛に続発し神経症状を呈することが多いが,発症頻度も少ないため脳卒中や心大血管病変の精査が優先され診断の盲点となる場合もある.早期治療にて良好な予後が期待できるため,迅速な診断が要求される重要な救急疾患である.当院にて経験した10例のSSEHについて臨床的に検討したので報告する.

イオンビーム照射ePTFEの生体適合性

著者: 高橋範吉 ,   氏家弘 ,   鈴木嘉昭 ,   岩木正哉 ,   堀智勝

ページ範囲:P.339 - P.344

 Ⅰ.はじめに

クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfelt-Jakob disease : CJD)感染の危険性のため凍結乾燥ヒト硬膜が使用中止となって以来,代用硬膜としてexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)が広く使用されている18).ePTFEはpolytetrafluoroethylene(PTFE)を延伸加工したもので,生体内で化学的に非常に安定しており,組織との反応性がきわめて低い.そのため,人工血管5,11),人工心膜1),人工腹膜7),歯周組織再生誘導法における遮蔽膜4)等,生体材料として広く使用されている.しかし人工硬膜として使用した場合,生体反応性の低さは,長所であるとともに,ePTFEと周辺組織の間や縫合時の針穴から髄液漏が生じるという欠点となる.このような髄液漏を防止するため,縫合糸や縫合方法が工夫されフィブリン糊が使用されている3,8,9,17)が,確実に予防することは難しい.

 筆者らは,高分子材料にイオンビームを照射することによって,高分子表面を改質し,抗血栓性,細胞接着性などの性質を付与することができること,そして生体材料への応用が可能であることを報告してきた12-15).また,イオンビーム照射したePTFEを用いたウサギ硬膜を修復したin vivo試験でも良好な結果を得ている16)

 今回,ePTFE表面に対する線維芽細胞およびフィブリン糊の接着性がイオンビーム照射によってどのように変化するか,イオンの種類と照射量を変化させてin vitro studyを行ったので報告する.

小児頭蓋咽頭腫の治療経験

著者: 酒井圭一 ,   田中雄一郎 ,   本郷一博 ,   多田剛 ,   重田裕明 ,   小林茂昭

ページ範囲:P.345 - P.353

 Ⅰ.はじめに

頭蓋咽頭腫は組織学的に良性であるが20),腫瘍の再発は文献的に10~40%であり,知能障害や視床下部障害などの合併症を起こさずに全摘出することが困難な疾患である6).特に小児においては,内分泌障害や視床下部障害が精神・運動発達に大きく影響を与えるが,本邦では小児の頭蓋咽頭腫患者における機能予後を含めた長期経過観察の報告は少ない.

 われわれは,原則として次のような方針で頭蓋咽頭腫を治療してきた.①全摘出をめざすが,重篤な合併症は出さないようにする.②再発例または亜全摘例には再手術もしくは放射線療法を考慮する.このような治療戦略の妥当性を検証するため,われわれが経験した小児頭蓋咽頭腫の臨床経過,治療方法,合併症などを分析した.

症例

神経線維腫症1型に多発性脳動脈瘤,血管奇形を合併した1例

著者: 藤本基秋 ,   中原一郎 ,   田中正人 ,   岩室康司 ,   渡邉芳彦 ,   原田啓

ページ範囲:P.355 - P.359

 Ⅰ.はじめに

神経線維腫症1型(Neurofibromatosis Type1,以下,NF1)は通常,第17染色体の遺伝子異常によって引き起こされる常染色体優性遺伝疾患であるが,孤発例も多く,頻度としては3,000~5,000人に1人とされる8).臨床的には末梢のカフェオレ斑(café au lait spot),神経線維腫,虹彩の過誤腫など外胚葉系の異常8)が中心であるが,側彎症,蝶形骨大翼の低形成といった骨形成障害8)のほか,腎動脈,腹部大動脈の狭窄・動脈瘤などの血管病変3,8)も報告されており,中胚葉系の異常も認められる.今回われわれは,くも膜下出血を発症したNF 1の女性に,多発性脳動脈瘤に加え,遺残三叉神経動脈(Persistent primitive trigeminal artery,以下,PPTA),中大脳動脈窓形成(fenestration of middle cerebral artery)の合併がみられた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

頸髄神経根症状で発症した頭蓋外椎骨動脈解離の1例

著者: 上村春奈 ,   黒田敏 ,   牛越聡 ,   関俊隆 ,   石川達哉 ,   飛騨一利 ,   岩崎喜信

ページ範囲:P.361 - P.365

 Ⅰ.はじめに

頭蓋外椎骨動脈解離は,頭頸部痛,または,椎骨脳底動脈系のtransient ischemic attack(TIA),脳梗塞で発症することが多いといわれている5,7-10).しかし,頭蓋外椎骨動脈解離に起因して生じた動脈瘤が頸髄神経根を圧迫して症状を呈する例は極めて稀で,これまでに8例が報告されているのみである1-4,6).これまでの報告では,保存的治療により神経根症状は徐々に改善することが多いとされてきたが1-4,6),今回,われわれは血管内手術により積極的に治療した結果,良好な結果が得られた症例を経験したので報告する.

多発性頭蓋外転移により低血糖発作を併発したMeningeal Hemangiopericytomaの1例

著者: 宮本伸哉 ,   松田和郎 ,   角田孝 ,   佐々木司 ,   板橋正幸

ページ範囲:P.367 - P.372

 Ⅰ.はじめに

Meningeal hemangiopericytomaは全脳腫瘍の0.2%と稀な腫瘍であり,主として中年成人にみられ,大脳半球の硬膜や硬膜洞静脈洞壁に接して発生し,malignant meningiomaとの鑑別が困難なことが多い.そして,しばしば肺臓,脊椎,肝臓等に転移することは,良く知られている.今回われわれは肝臓,腰椎,右大腿骨に転移して,著明な低血糖発作を発症し,グルカゴン持続投与を必要としたmeningeal hemangiopericytomaの1例を紹介する.

重症頭部外傷14年後に髄膜炎にて明らかとなった潜在性髄液漏の1例

著者: 川本仁志 ,   田口治義 ,   湯川修 ,   黒木一彦 ,   大下純平 ,   石原博文

ページ範囲:P.373 - P.377

 Ⅰ.はじめに

外傷性髄液漏に,頭蓋骨骨折と硬膜損傷の存在が,強く関与しているといわれている3,7,14,15,20,22).正中側前頭蓋底骨折に多く,また,受傷早期,とりわけ24時間以内の出現が多いが,比較的稀ながら,数年以上経過後に明らかとなる例も知られている7,26).一方で,意識障害ゆえに,髄液漏に気づかれないことも,しばしば経験される6)

 今回われわれは,受傷当時,高度意識障害,内頸動脈損傷,水頭症などに対し手術加療後に自立生活に復帰し,14年以上後に明らかとなった,潜在性髄液漏の1例を経験した.水頭症術後で,髄膜炎を合併し気づかれた,潜在性髄液漏に対する治療方針について考察する.

頭頂後頭部打撲により両側の頭頂側頭部に対称性に発生した両側性硬膜外血腫の1例

著者: 出井勝 ,   島健 ,   西田正博 ,   山根冠児 ,   三原千恵 ,   畠山尚志 ,   恩田秀賢 ,   真辺和文 ,   横田晃

ページ範囲:P.379 - P.382

 Ⅰ.はじめに

両側性の急性硬膜外血腫は,従来稀とされていたが,CTの導入以来,診断能力の向上により報告例が増加しており,急性硬膜外血腫の2%から10%3,5)の頻度でみられるとされている.しかし,死亡率は近年改善してきているとはいえ,約20%3,7)といまだ高率である.

 今回筆者らは,頭頂後頭部打撲により両側性の線状骨折と,対称性かつ非連続性の硬膜外血腫を打撲部から離れた部位に形成した1例を経験し,両側同時開頭により血腫除去を行い,良好な結果を得ることができたので,文献的考察を加え報告する.

Blister-likeからSaccular typeへと変化した内頸動脈前壁動脈瘤の1手術例

著者: 古賀さとみ ,   原真弥 ,   宮城尚久 ,   広畑優 ,   安陪等思 ,   徳富孝志 ,   重森稔

ページ範囲:P.383 - P.387

 Ⅰ.はじめに

内頸動脈前壁動脈瘤は内頸動脈C2部の前壁に血管分岐とは無関係に生じる動脈瘤を指し,その頻度は全内頸動脈瘤の0.9~6.5%と報告されている9,11).一般に内頸動脈前壁動脈瘤は通常の囊状動脈瘤のようなneckがなく形態的にはチマメ型またはblister type aneurysmと表現され,動脈瘤壁が脆弱であることより直達手術のリスクが高く,根治術も困難とされている9,10)

 今回われわれは,初回脳血管撮影にてblister-like aneurysmの形状を認めたが,経過中に囊状増大様の変化を呈し,待機的にネッククリッピングを行い得た内頸動脈前壁動脈瘤の1例を経験した.そこで本症例の経時的な形態変化と治療方針を中心に文献的考察を加えて報告する.

胸部大動脈解離による一過性脳虚血発作の1例

著者: 安喰稔 ,   高田達郎 ,   野越慎司 ,   山田幸司

ページ範囲:P.389 - P.392

 Ⅰ.はじめに

胸部大動脈解離は診断が遅れると致死率の高い疾患であるが,約10%は特徴的疼痛を欠くといわれている4).また,神経症候の合併も稀ではなく,典型的疼痛を欠き,神経症候のみを呈する例も報告されている2,5,8-10).頸部血管エコー検査は頸部血管を非侵襲的に迅速に診断することが可能な検査である.近年,頸部血管エコー検査にて診断された疼痛を伴わない大動脈解離による脳血管障害の報告が散見されるようになった5,8-10).今回,われわれは頸部血管エコー検査にて総頸動脈起始部のintimal flapと総頸動脈の狭窄を認め,一過性脳虚血発作で発症した胸部大動脈解離の1例を経験した.

医療問題

アメリカの脳神経外科診療における医療危機

著者: 伊藤昌徳

ページ範囲:P.395 - P.401

Ⅰ.はじめに

わが国の脳神経外科医は“手術室で顕微鏡をのぞいてばかりいて視野狭窄状態に陥っており,医療問題に関しては疎い”との指摘があります.しかし一方では,最近の医療に対する信頼の低下,医療訴訟の増加,医療保険制度改革などに関する問題意識は否応なしに高まってきています3).筆者は2003年のアメリカ脳神経外科学会(AANS 2003):日米脳神経外科友好シンポジウムにおいて,わが国の医療保険制度について講演する機会を与えられました8).発表準備の過程において,アメリカの医療保険制度と比較しながら論を進める必要性を痛感したため,アメリカの医療の問題点について検討しました.アメリカの脳神経外科医とは発表前にE-mail交換により議論を煮詰め,発表時にも議論する機会を得ました.シンポジウムでの討論者のひとりであるDr. Jim Bean(ケンタッキー州レキシントン)に両国の医師賠償責任問題についても触れるようにすすめられましたが,限られた時間内にこれを述べることはできませんでした.アメリカの医師はMedicareやMedicaid(政府)やManaged Care(民間医療保険会社)からの過度な治療に対する支払い拒否と患者からの訴訟という厳しい環境の中で診療に当たっています4,5).わが国ではアメリカの医療危機の詳細については報道されておらず,われわれの関心はむしろ低いといえます.アメリカの医療問題を対岸の火事として捉えることなく,わが国の脳神経外科医自身の問題として意識する必要があります.

連載 定位脳手術入門(5)

視床手術(破壊術)

著者: 松井利浩 ,   富田享 ,   大本堯史

ページ範囲:P.403 - P.410

 Ⅰ.手術の歴史的背景と理論

パーキンソン病に対する外科的治療は,1930年代後半のMeyersによるレンズ核ワナ(ansa lenticularis)切截(open ansotomy)に始まる.Spiegel & Wycisはこのansotomyを定位的に行い,振戦を治療した.この頃,日本においても楢林博太郎らによって定位的にpallidotomyが行われ,pallidotomyは振戦よりも固縮に対する効果が著しいと報告された12).パーキンソン病に対する視床外側腹側核(VL核:nucleus ventralis lateralis)の破壊術は,1951年にHasslerらによって始められた5).その後HasslerらやCooperらにより,視床外側腹側核は振戦と固縮に対して最も有効な目標点とされた.

 1967年のL‐ドパの出現により,パーキンソン病に対する定位脳手術件数は世界的に激減した.しかしながら,L‐ドパの長期投与に伴う問題(薬剤誘発性ジスキネジア,on-off現象,wearing off現象)が出現したため,1992年のLaitinenらの後腹側淡蒼球手術の無動,寡動,歩行障害に対する改善効果の報告により定位脳手術がパーキンソン病の治療として再び脚光を浴びることとなった9).また,近年は脳深部刺激療法が安全性や調節性を備えた治療として登場し,ますますパーキンソン病の外科的治療への期待は高まっている.

頭蓋骨腫瘍の臨床と病理(1)

頭蓋骨腫瘍分類・軟骨腫・良性軟骨芽細胞腫・軟骨肉腫

著者: 河本圭司 ,   笠井治文 ,   吉村晋一 ,   大重英行 ,   櫻井靖夫 ,   山内康雄 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.427 - P.435

Ⅰ.頭蓋骨腫瘍分類と発生頻度

1.分類

骨腫瘍の分類として,最近では「悪性骨腫瘍取り扱い規約 第3版」(日本整形外科学会・編,2000年)1)や,2002年にWHOより出された「骨・軟部腫瘍の新WHO分類」2)がある(Table. 1).

 しかし,これらにおける分類は全身骨の分類であり,頭蓋骨腫瘍としての分類は今まで明確なものはない.便宜的な分類として下記のような分類がある.

読者からの手紙

医療事故とその公開,届出について

著者: 平野亮

ページ範囲:P.413 - P.413

 昨今,医療事故が盛んに報道されていますが,先日以下のような記事を読んで考え込んでしまいました.記事の内容は,未破裂脳動脈瘤の血管内手術中にくも膜下出血を来して患者が意識不明の重体となり,警察当局に事故届けを出したというものでした.残念で不幸な事態といえますが,果たしてこのような事例でも患者家族以外の第三者(報道機関)に事実を公開し,さらに警察を含めた関係当局に事故届けなどの報告をすべきものなのでしょうか.術者に明らかな過失があるならば別ですが,未破裂脳動脈瘤の手術の際に出血を来すことは,熟練者でも起きうることですし,手術に伴う危険性として術前に十分インフォームドコンセントがなされているはずです.当然のことながら,患者取り違えや薬剤の誤投与といった医療過失と,同じ次元で論ずべきものではありません.このように過失の有無を問わず,すべての医療事故を公開していくというならば,極端な話,脳室ドレナージチューブの固定不良のため,チューブが自然抜去し髄液漏れがあった場合も,記者会見で事実を報告し警察に事故届けを出さなければならないということになります.実際のところ,どのようなケースを事故と認識して公開し事故届けを出すかは,各医療機関の判断に委ねられており,混乱と戸惑いがみられるのが現状です.むしろ,脳神経外科学会でどのような事例の場合,積極的な事実公開と関係当局への事故届けをすべきかを示すような見解なりガイドラインなどを作っていただければと思います.このような試みは,他科で行われているとは聞き及んではおりませんし,予防的手術の占める割合の多い脳神経外科が積極的にやるべきものと考えます.医療事故の中には,限りなく医療過失に近いものから,過失というより不可抗力としかいいようのないものまであります.後者のようなものもすべて公開していけば,失敗は絶対に許さないといった無謬主義の風潮が蔓延していくのではないかと危惧しております.その結果,未破裂脳動脈瘤の手術をしようとする際に術後成績が悪ければ,業務上過失致死や過失傷害として罪を問われる刑事被告人となり,刑の確定後は医業停止などの行政処分が待っているということを,常に念頭に置かなければならないといった時代が来ないとも限りません.現在の脳神経外科医療は,多くの先人や諸先輩方が失敗を乗り越え,それを教訓として進んできたものであります.過度の無謬主義は,脳外科医をいたずらに萎縮させ積極的治療への意欲を減じるだけであって,決して先進的医療の進歩に寄与するものではありません.脳神経外科学会の早急な対応を切に希望するものであります.

How I Do It(7)

症例:斜台部脊索腫

著者: 本郷一博 ,   松本健五 ,   吉田一成 ,   谷口理章 ,   加藤天美 ,   吉峰俊樹

ページ範囲:P.415 - P.425

 提示された症例に対して,3名の回答者に,それぞれ自分が術者となるのであればどのような術式をとるか,その考え方,ポイントなどをご回答いただいた.回答のあとに,実際の治療経過について略述した.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?