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最近の医療事故報道に思う
著者: 本郷一博1
所属機関: 1信州大学脳神経外科
ページ範囲:P.323 - P.324
文献購入ページに移動 新聞,テレビにて医療事故報道のない日はないといってよいほど,日々多くの報道がなされている.確かに極めて悪質な医療事故,明らかな医療ミスに対しては,きちんと真実が報道され,裁かれなければならないことはいうまでもない.
しかし,最近の報道事例を見るに,あるリスクを持った治療を行い結果として十分な治療が行えなかった,術後合併症が生じたというような状況であっても,医療事故として報道されることが多くなったように思われる.たとえば,脳動脈瘤に対する血管内治療で,術中のカテーテル操作により動脈瘤が破裂した,として医療事故に問われたものである.現在,血管内治療の専門家の手によっても,数パーセントの術中破裂はあるといわれている治療手技である.術前,十分に説明がなされ,術中破裂の危険性も話されたはずである.患者側も数パーセントのリスクを了解しての治療選択であったと思われる.にもかかわらず,結果が患者側に満足のいくものでなかったために医療事故であると報道されれば,最終的に過誤ではないと判断されても,社会的には,この治療方法に対する,あるいは,当該の医療施設に対する不信感が持たれることは避けられない.患者・家族としては,治療に際して合併症のリスクについて十分説明を受け,納得して治療を受けるはずであるが,実際には,リスクはあくまでも一般的な数字であり,自分がその状況になることは実感していない,ということかもしれない.うっかりミス,明らかな技術的なミスなど,これらが今後繰り返されないようにするためにも,その原因が詳細に検証され,状況によってはしかるべき責任を取ることは必要である.しかし,先の例のように,治療方法そのものにある確率でリスクを伴う場合は,いわゆる医療ミス,医療事故とは異なるものではないだろうか.
しかし,最近の報道事例を見るに,あるリスクを持った治療を行い結果として十分な治療が行えなかった,術後合併症が生じたというような状況であっても,医療事故として報道されることが多くなったように思われる.たとえば,脳動脈瘤に対する血管内治療で,術中のカテーテル操作により動脈瘤が破裂した,として医療事故に問われたものである.現在,血管内治療の専門家の手によっても,数パーセントの術中破裂はあるといわれている治療手技である.術前,十分に説明がなされ,術中破裂の危険性も話されたはずである.患者側も数パーセントのリスクを了解しての治療選択であったと思われる.にもかかわらず,結果が患者側に満足のいくものでなかったために医療事故であると報道されれば,最終的に過誤ではないと判断されても,社会的には,この治療方法に対する,あるいは,当該の医療施設に対する不信感が持たれることは避けられない.患者・家族としては,治療に際して合併症のリスクについて十分説明を受け,納得して治療を受けるはずであるが,実際には,リスクはあくまでも一般的な数字であり,自分がその状況になることは実感していない,ということかもしれない.うっかりミス,明らかな技術的なミスなど,これらが今後繰り返されないようにするためにも,その原因が詳細に検証され,状況によってはしかるべき責任を取ることは必要である.しかし,先の例のように,治療方法そのものにある確率でリスクを伴う場合は,いわゆる医療ミス,医療事故とは異なるものではないだろうか.
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