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研究
イオンビーム照射ePTFEの生体適合性
著者: 高橋範吉1 氏家弘2 鈴木嘉昭2 岩木正哉1 堀智勝2
所属機関: 1理化学研究所中央研究所先端技術開発支援センタービームアプリケーションチーム 2東京女子医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.339 - P.344
文献購入ページに移動クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfelt-Jakob disease : CJD)感染の危険性のため凍結乾燥ヒト硬膜が使用中止となって以来,代用硬膜としてexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)が広く使用されている18).ePTFEはpolytetrafluoroethylene(PTFE)を延伸加工したもので,生体内で化学的に非常に安定しており,組織との反応性がきわめて低い.そのため,人工血管5,11),人工心膜1),人工腹膜7),歯周組織再生誘導法における遮蔽膜4)等,生体材料として広く使用されている.しかし人工硬膜として使用した場合,生体反応性の低さは,長所であるとともに,ePTFEと周辺組織の間や縫合時の針穴から髄液漏が生じるという欠点となる.このような髄液漏を防止するため,縫合糸や縫合方法が工夫されフィブリン糊が使用されている3,8,9,17)が,確実に予防することは難しい.
筆者らは,高分子材料にイオンビームを照射することによって,高分子表面を改質し,抗血栓性,細胞接着性などの性質を付与することができること,そして生体材料への応用が可能であることを報告してきた12-15).また,イオンビーム照射したePTFEを用いたウサギ硬膜を修復したin vivo試験でも良好な結果を得ている16).
今回,ePTFE表面に対する線維芽細胞およびフィブリン糊の接着性がイオンビーム照射によってどのように変化するか,イオンの種類と照射量を変化させてin vitro studyを行ったので報告する.
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