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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科32巻5号

2004年05月発行

雑誌目次

リスクマネジメント

著者: 田渕和雄

ページ範囲:P.447 - P.448

 最近,ほとんど毎日のように全国各地で医療事故や医療訴訟の報道が流れていますが,それらの中でいったいどれだけが事故の背後にある諸々の要因と事故との因果関係について正確に伝えているでしょうか.われわれ脳神経外科医にとっても医療事故はいつ誰の身に起きてもおかしくない出来事ですが,どのような医療事故であれ,それが何故起こるのか,どうすれば防げるのかの検証の視点を欠いた報道には,医療従事者の多くが物足りなさを通り越して,強い不満を感じているのではないでしょうか.医療事故が明らかになった場合,それに直接関係した当事者の責任を追及することのみにとどまることなく,しかるべき必然性をもって生じたであろうその事故の背後にある組織や体制の問題点を見つけ出し,改善策を練り,同じような事故が再び起こらないように務めることも重要だと考えます.取り返しのつかない悲惨な医療事故はあってはならないことであり,それを皆無にはできないまでも,限りなくゼロに近づけるためには,いろいろな立場の人たちが知恵を出し合うなど,事故の防止に向けた地道な努力が必要なことは言うまでもありません.

 昨年末,毎日新聞医療問題取材班によって企画,編集された『医療事故がとまらない』という書名の新書(集英社)を読まれた方も少なくないと思います.

研究

もやもや病に対する大網移植術の工夫

著者: 東保肇

ページ範囲:P.451 - P.455

 Ⅰ.はじめに

もやもや病は両側内頸動脈先端部を中心に緩徐な閉塞が起こり,進行すると後大脳動脈にまで及ぶ原因不明の脳血管障害である.その代償としてそれらの末梢へ側副路が発達してくる.

 もやもや病の虚血に対しては間接吻合術,直接吻合術あるいは両者を組み合わせた方法が適用される.筆者は現在までに67例[男/女=19/48,年齢3~20歳(平均±標準偏差:8.3±3.7歳),前頭葉への移植/後頭葉への移植=47/20]に大網移植術を施行した.一過性脳虚血発作(TIA)が完全,あるいはほぼ消失した割合は63/67(94%)という成績であった.また脳表の静脈をrecipientとして使用すると,従来の方法に比しcollateralsの発達が有意によかったという報告をした4).従来の方法の場合,recipientとして頭皮下静脈を使用するため皮弁をもどす際にひきつれ閉塞してしまう危険性があり,長期的には,移植後,大網を介して両側前頭葉,あるいは後頭葉へ側路を形成させることには困難性があった.この場合むしろ,transdural anastomosis が優位なことも生じた2,3)

 間接吻合術の一法である大網移植術は前大脳動脈(ACA)領域の虚血発作である下肢のみの脱力,尿失禁あるいは大便失禁,あるいは後大脳動脈(PCA)領域の虚血発作である半盲や全盲,あるいは他の間接吻合術後でも両側の大脳虚血発作,例えば四肢麻痺や麻痺を伴う失語,両下肢脱力発作などが起こる場合のやり直しの血行再建術として施行されることがある手技であるが,今回この大網移植術1-7)の手技上の工夫の実際につき筆者の経験をもとに報告する.

ノカルジア脳膿瘍:外科治療と術後抗菌剤併用の有用性

著者: 米山智子 ,   山上岩男 ,   峯清一郎 ,   佐伯直勝 ,   山浦晶 ,   尾崎裕昭 ,   中崎将

ページ範囲:P.457 - P.462

 Ⅰ.はじめに

ノカルジア(Nocardia)はおもに土中に常在する放線菌類で,膠原病,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患などの基礎疾患を持つ患者や,副腎皮質ホルモン,免疫抑制剤,抗癌剤などを投与されている患者,成人免疫不全症候群などの免疫低下状態における日和見感染症として増加傾向にある4,11).通常,肺ノカルジア症を発症し,そのうち20~30%が中枢神経系に血行性転移を来すが,中枢神経系原発のノカルジア症も報告されている.中枢神経系ノカルジア症の多くは脳膿瘍の形態をとる3,15,16).ノカルジア脳膿瘍は一般の抗生剤治療に抵抗性であることが多く,他の細菌性脳膿瘍と比べて死亡率が高い7,15,20,26).診断・治療の進歩により転帰は改善しつつあるが,死亡率は30%に達する5).最近われわれは排膿ドレナージ・被膜外摘出を含めた外科治療と術後に比較的短期間の抗菌剤投与を組み合わせることで良好な結果を得ている.われわれの経験したノカルジア脳膿瘍4例を報告し,外科治療と術後抗菌剤併用の有用性について検討する.

軽症頭部外傷患者の初療指針に関する検討

著者: 塩見直人 ,   越後整

ページ範囲:P.465 - P.470

 Ⅰ.はじめに

脳神経外科の日常診療においては,比較的軽症の頭部外傷患者の診察に時間を費やすことが多い.現在では多くの施設にcomputed tomography(CT)が普及し,単純撮影と同様に容易かつ迅速に施行できるようになったため,頭部外傷患者にはルーチンにCTを施行する施設もある.しかしながら,受診時に意識が清明で神経学的異常所見が全くみられない場合には画像検査を行わないこともあり,CTの施行基準については議論が多い5,11,15,16).この背景として,本邦における軽症頭部外傷患者の初療指針に関する報告が少ないことが挙げられる.今回,受診時の意識レベルがGlasgow Coma Scale(GCS)score15の症例について主訴と画像所見をretrospectiveに調査することにより,軽症頭部外傷患者の初療に関して重要と考えられるいくつかの知見を得たので,文献的考察を加えて報告する.

イオンビーム照射ePTFEの脳動脈瘤ラッピング材への応用

著者: 世取山翼 ,   氏家弘 ,   高橋範吉 ,   小野洋子 ,   鈴木嘉昭 ,   岩木正哉 ,   堀智勝

ページ範囲:P.471 - P.478

 Ⅰ.はじめに

脳動脈瘤の治療法は開頭手術による動脈瘤ネック部分のクリッピング,または脱着型コイルを用いた血管内治療による動脈瘤部の血栓形成による方法が一般的である.しかし,ネックを有さない脳動脈瘤や動脈瘤そのものから穿通枝が出ている場合等,クリッピングが不可能な場合や部分的なクリッピングしかできない場合がある.その際には,ガーゼ7,14),筋膜3)などによる動脈瘤のラッピング後,フィブリン糊と呼ばれる生体組織接着剤による固定が行われる.しかし,筋膜は血管壁に対する密着性は優れているが吸収されてしまい永続的なラッピング材には適さず,また,綿ガーゼは操作性には優れているが強い異物反応,そして炎症性反応を示すため,ラッピング後に親動脈の狭窄および炎症性肉芽腫形成を起こす可能性が高い1,9).動脈瘤の理想的なラッピング材料の条件は,材料が生体内で異物反応,炎症反応,細胞毒性を起こさず,吸収されることなく永続的に動脈瘤壁に癒着し,動脈瘤の成長と破裂を防ぐことである.延伸ポリテトラフルオロエチレン(expanded polytetrafluoroethylene ; ePTFE)は,側鎖にフッ素を有する高分子素材であるため,生体内では組織との反応性が極めて低く,また構造的に極めて安定である.そのため,人工血管10,21),人工心膜2,6),人工腹膜12),人工腱索8),歯周組織再生誘導法における遮蔽膜4)などの生体材料として広く用いられている.

 しかし,ePTFEは血管壁への親和性およびフィブリン糊の接着性が乏しく,現在までラッピング素材として使用されたことはない.

 筆者らは,高分子ポリマー材料にイオンビームを照射することによって,その表層構造を改質し細胞接着性を付与することが可能であることを報告してきた15,18,19).ePTFEに関しても,Neを加速エネルギー150 keVで1×1015 ions/cm2照射したePTFEが,細胞接着性を付与されることを見出した.さらにウサギ頭蓋骨および背部筋膜上への留置実験によって,骨および筋膜組織との接着性を有することを明らかにした16,17,20).また,加速エネルギー150 keVでAr,Krイオンビーム照射したePTFE表面も同様に細胞接着性を有し,フィブリン糊との強力な接着を有することも明らかになった22)

 本研究では,in vitroで細胞培養実験を行い,加えてイオンビーム照射後のePTFE表面を走査型電子顕微鏡で評価し,イオンビーム照射したePTFEシートが動脈瘤ラッピング材料として有効な素材になり得るか検討した.

 今までの基礎実験の結果15-20)から,加速エネルギー150 keVでArイオンを5×1014 ions/cm2照射したePTFEと未照射のePTFEを用いて,ウサギの頸動脈を用いたラッピング実験を行って検討した.

症例

両下肢の慢性発作性疼痛を来した成人型Tethered Cord Syndromeの1例

著者: 原嶋志保 ,   平孝臣 ,   堀智勝

ページ範囲:P.481 - P.485

 Ⅰ.はじめに

Tethered cord syndrome(TCS)は,脊髄が,なんらかの原因で尾側に牽引・固定され,脊柱管内において長軸方向に係留されることによって,様々な臨床症状を引き起こす症候群である.実際には,tight filum terminale,spinal dysraphysm,lipoma,dyastematomyelia,myelomeningoceleなどが原因となる.一般的な臨床症状としては下肢筋力低下や感覚障害,膀胱直腸障害などが認められる.今回,成人期に激しい下肢の疼痛発作で発症し,数カ所の病院で診察や検査を受けたものの長期間にわたって診断がつかず,画像上でも明らかな異常所見のない症例を経験した.最終的にTCSと診断し,外科的治療が奏効したので報告する.

脳血管攣縮に対する塩酸ファスジル動注療法中に痙攣を起こした1例

著者: 佐々原渉 ,   小野成紀 ,   徳永浩司 ,   杉生憲志 ,   中嶋裕之 ,   伊達勲 ,   大本堯史

ページ範囲:P.487 - P.491

Ⅰ.はじめに

塩酸ファスジル(fasudil hydrochloride ; 以下FSD)静注療法は,破裂脳動脈瘤術後の脳血管攣縮予防に対する有効性が報告され,広く使用されるようになってきている9,10,14,18).また,症候性の脳血管攣縮に対しては,塩酸パパベリン動注療法6,7)や経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty ; PTA)14,19)が行われている.しかし,塩酸パパベリン動注療法の効果は一過性であり,痙攣発作,眼動脈流入による失明,椎骨脳底動脈系への流入による意識障害など多くの合併症が報告されている1,4,11).一方,PTAは永続的な血管拡張効果が期待できるものの,熟練した技術が要求されるうえに末梢血管に対しては施行不可能である14).これらに代わる治療法として近年FSDの選択的動注療法の有用性についての報告が,特に本邦からなされている8-10,18).われわれもFSDの超選択的動注療法を積極的に行い,良好な結果を得てきたが,今回,FSD選択的動注療法中に痙攣を起こした1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

中大脳動脈分岐部閉塞に続発した破裂細菌性脳動脈瘤の1手術例

著者: 山口真太朗 ,   坂田清彦 ,   中山顕児 ,   折戸公彦 ,   池田理望 ,   荒川正博 ,   重森稔

ページ範囲:P.493 - P.499

 Ⅰ.はじめに

感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)に合併する細菌性脳動脈瘤の大半は中大脳動脈の末梢部に発生する5,14).また発症形式としては,脳内出血やくも膜下出血であることが多いことはよく知られている5,6,11,14).今回われわれは,右中大脳動脈近位部閉塞による脳梗塞で発症し,その経過観察中に同部に紡錘状動脈瘤が新生して脳内出血とくも膜下出血を生じ,直達手術を施行した1例を経験した.本症例は手術および病理組織学的検査結果から細菌性脳動脈瘤と確認された.このような症例は稀であり,病態や治療上の問題点を中心に文献的考察を加えて報告する.

組織学的悪性度の異なったmulticentric gliomaの1例

著者: 郭樟吾 ,   寺尾亨 ,   田屋圭介 ,   大塚俊宏 ,   田中俊英 ,   沢内聡 ,   沼本ロバート 知彦 ,   村上成之 ,   大村光浩 ,   阿部俊昭

ページ範囲:P.501 - P.506

 Ⅰ.はじめに

Multicentric gliomaはRussellとRubinstein17)によると,脳実質内やくも膜下腔との連続性をもたず,脳内転移の否定できるものと定義されている.なかでも,悪性度や組織表現型の異なったmulticentric gliomaは非常に稀である.今回われわれは,発生部位,時期および組織学的悪性度を異にする2つのgliomaとして診断されたmulticentric gliomaの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

硬膜欠損部より上下方向に著明に脱出した特発性脊髄ヘルニアの1例

著者: 丸一勝彦 ,   飛騨一利 ,   関俊隆 ,   岩崎喜信

ページ範囲:P.509 - P.512

 Ⅰ.はじめに

特発性脊髄ヘルニアは進行性の脊髄障害を呈する疾患で,以前は稀な疾患であったが,近年はMRIの普及により報告数が増加している.今回われわれは,脊髄硬膜欠損部より腹側に突出した脊髄が著明に上下に進展した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

中大脳動脈に生じたlarge kissing aneurysms―症例報告および文献的考察(発生部位による分類)

著者: 原田克己 ,   織田哲至 ,   上田祐司

ページ範囲:P.513 - P.517

 Ⅰ.はじめに

2個の脳動脈瘤が相接して生じた場合,kissing aneurysmsと呼ばれるが,これは比較的稀な病態である.1978年にJefferson5)によって初めて報告され,現在までに22例1-12)の報告がある.

 今回,われわれは,脳内血腫を伴ったくも膜下出血で発症した中大脳動脈(MCA)部のkissing aneurysms例を経験した.これまで,MCAに生じたkissing aneurysmsの報告例はなく,診断,手術手技上において,このような病態を認識することが重要であると考え,文献的考察を加えて報告する.さらに,これらの動脈瘤のクリッピングがどのような点で困難であるのかを明確にするため,過去の報告を相互の動脈瘤の頸部の位置関係に注目して2群に分類した.

医療問題

脳神経外科診療における医療セーフティ対策―診療科特性の立場から

著者: 宮崎雄二 ,   大石敦宣 ,   杉本一朗 ,   日高充 ,   宮崎喜寛 ,   金井武

ページ範囲:P.519 - P.528

 Ⅰ.はじめに

1999年1月,横浜市立大学において患者を取り違え入院目的と異なる手術が施行される事故が発生して以来,わが国において医療安全が強調されたのに伴い医療事故防止のための諸対策が報告されているが1,5,10,12,13,17),それらは全診療科に共通したもので,脳神経外科診療を行うために発生する医療事故を予防する対策についての報告はない.

 筆者らは横浜宮崎脳神経外科病院(以下,当院)におけるアクシデントおよびインシデントの内容を検討することによって,脳神経外科診療においては医療事故予防一般対策の他に,脳神経外科診療を行うという特性に基づいた医療セーフティ対策を行うことが必要であると考え,各種対策を行ってきているので報告する.

連載 定位脳手術入門(6)

視床手術(刺激術)

著者: 杉山憲嗣

ページ範囲:P.531 - P.539

 Ⅰ.はじめに

人間が電気刺激の治療効果に気付いたのは古く,エジプト時代,またはギリシア・ローマ時代に遡る.エジプトやポンペイの壁画には,おそらく治療に使ったと思われる電気発生魚の絵があり,AD1世紀のローマの医師Scribonius Largusの著書には,頭痛,痛風の治療に「シビレエイ」を使用する記述が存在する4).脳深部や脊髄後索に対する今日的な意味での電気刺激療法も,当初の開発は頑痛症に対して行われたものであり6),その後,種々の不随意運動や姿勢異常に対して脳深部電気刺激療法が開発されていった1,3,5).以上のような過去の歴史があるため,現在でも視床に対する脳深部刺激療法には,大略すると頑痛症に対するVc核(Nucleus Ventro-caudalis)刺激と不随意運動に対するVim核(Nucleus Ventro-imter-medius),Vo核(Nucleus Ventro-oralis)刺激が存在する.本稿ではパーキンソン氏病を中心とした不随意運動に対する視床脳深部刺激療法に的を絞り,その具体的な方法などを紹介する.

頭蓋骨腫瘍の臨床と病理(2)

骨腫・良性骨芽細胞腫・骨肉腫

著者: 河本圭司 ,   稲垣隆介 ,   塚崎裕司 ,   龍尭志 ,   植村芳子 ,   坂井田由紀子 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.549 - P.556

 Ⅰ.骨腫(osteoma)

1.定義

主に層状構造を示す分化した成熟骨組織からなる良性病変で,ゆっくり成長し5),基本的には板間層から発生した腫瘍であり外板,内板の両方が膨隆する18).外傷や感染,髄膜腫などの浸潤により誘発されることもある15).Fibrous dysplasia等のいわゆるfibro-osseous lesion(fibro-osseous dysplasia)の陳旧化に伴う骨硬化性病変も含まれている可能性がある.組織学的には緻密(象牙様)骨腫(compact type)と通常の海綿骨に近い海綿状骨腫(cancellous type : spondy osteoma)とに分けられる.大脳鎌や,上矢状洞部の硬膜下面に付着してosseous plaquesが剖検時の偶発所見としてみられることがあり,無症状で臨床的意義に乏しく,osteomaと呼ばれる場合もあるが,これらは反応性・化生性の病変と思われ,慢性腎不全とともにみられる場合が多い6,10)

報告記

第7回アジア・オセアニア国際頭蓋底外科学会(2004年4月15日~18日)

著者: 吉田一成

ページ範囲:P.540 - P.541

 第7回アジア・オセアニア国際頭蓋底学会は,国立台湾大学脳神経外科の杜永光教授(Professor Yong-Kwang Tu,National Taiwan University)をPresidentとして,台北市内にある台北国際会議中心(Taiwan International Convention Center)にて,4月15日から18日まで行われた.近くに市政府や孫文を祭る国府記念館,101階建ての貿易センタービルがそびえる台湾の中心地である.本会は,当初は昨年の10月に開催される予定であったが,昨年冬の台湾でのSARS(severe acute respiratory syndrome)の流行のあおりを受けて,半年開催が延期され,この4月の開催となった.羽田から3時間余りで,台北中正國際機場に到着した.1時間の時差である.SARSの書類審査はあったが,入国手続きはシンプルで,空港から会場の隣のホテル「凱悦大飯店(Grand Hyatt)」へは,直行のシャトルバスがあり,所要時間は1時間ほどであった.Receptionが行われる15日の午後に到着したが,学会に先立って,14~15日には国立台湾大学でCadaver Dissection Workshopが開催され,日本からも,慶應義塾大学の河瀬 斌教授,名古屋大学の齋藤 清助教授などが,講師として参加した.米国から,動静脈に色素を注入した,cadaver headを10体ほど輸入し,顕微鏡や手術機器も整備され,実際の手術に近い恵まれた環境でのworkshopであり,非常に高い評価であった.

 16日からの学術集会では,特別講演,シンポジウム,一般口演,ポスターなど,250題余りの演題が発表された.参会者は20数カ国から300人前後であった.トルコ,イスラエル,ロシアなどからの参加者もあり盛会であった.来年モロッコで開催される世界脳神経外科学会の会長を務めるベルギーのJacques Brotchi教授や次期のアジア・オセアニア脳神経外科コングレスを主催される藤田保健衛生大学の神野哲夫教授なども参加され,特別講演を行った.

医療経済

特定機能病院における入院医療の包括評価(Diagnosis Procedure Combination : DPC)の概要について(第9報)―「未破裂脳動脈瘤」における医療行為別の包括評価点数比較

著者: 安達直人

ページ範囲:P.543 - P.546

 第1~3報では,特定機能病院における入院医療の包括評価における概要,診断群分類の決定方法,包括評価点数の算定方法のそれぞれについて述べ,第4~8報では「脳腫瘍」,「くも膜下出血・破裂脳動脈瘤」,「非外傷性頭蓋内血腫」,「脳梗塞」,「頭部・顔面外傷」の診断群分類における医療行為別の包括点数の比較を各論として示した.

 本報では,脳神経外科領域で手術適応や手術法の選択で常に議論となる「未破裂脳動脈瘤」を例にして,医療行為の違いにより診断群がどのように振り分けられ,さらにどれだけ請求点数が異なってくるか比較検討する.特に「クリッピングなのか血管内手術なのか」が最大の関心事であるが,単なる医学的適応でなくコストを主とした医療経済面から検討した.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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