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「Angel Glacier」
著者: 大熊洋揮1
所属機関: 1弘前大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.687 - P.688
文献購入ページに移動私がカナダ,エドモントンに留学在住したのは,平成7年4月からの1年あまりで,多くの日本の研究者がその地(アルバータ大学)で輝かしい業績を残された後に,廃墟となった研究室でぽつねんと研究を行っていた.研究の傍ら,もっぱらロッキーを訪れることが何よりの楽しみであり,6月,初めて彼の地を訪ねた後,しばしば足を運んだことが昨日のような記憶として思い出される.Angel Glacierを頂いた崖壁の下には深く掘られたvalleyが数kmに渡り続いており,さりげなく立てられた看板には,その谷が氷河の移動によって作られたこと,100年前まではその谷中が氷河に満たされ崖上のそれと続いていたことなどが記されていた.多くの氷河がrecedeしている中,この氷河も例外ではなく,天使の翼は自然の造形と言うよりは,取り残された「哀れな姿」と表現するほうが適当かもしれない.そうして眺めると氷河から絶え間なく崖を伝い落ちる融雫が天使の涙のようにも感じられた.人間の「文化・文明的営み」が多くの自然を犠牲にしてきたことは歴史が証明済みのことであるが,聞き慣れた「地球温暖化」の影響を如実に実感できた光景でもあった.
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