文献詳細
文献概要
研究
Brain fiber dissection法を用いた脳白質内神経線維束の解剖学的研究
著者: 森野道晴1 石黒友也1 内藤堅太郎1 川原慎一1 宇田武弘1 芝本和則1 原充弘1
所属機関: 1大阪市立大学大学院医学研究科脳神経外科学
ページ範囲:P.929 - P.935
文献購入ページに移動Brain fiber dissection法は17世紀初期に脳白質内の神経線維束を観察するため,解剖学者によって広く行われていた14).しかし,この方法は屍体脳の準備・作製法が複雑であること,また実際の手技が時間と労力を要すること,最近ではMRIなどの画像診断技術が発達し,脳の解剖学的情報が容易に得られる等が原因で,次第に行われなくなった.近年,頭蓋底外科の発展により,脳実質を損傷しないように脳深部へ到達する手術法が開発されたが,その反面,脳神経機能解剖学が軽視される傾向にある.しかし,悪性脳腫瘍やてんかんの手術では脳実質を切除,あるいは神経線維束の切断が必要になることが多く,脳の神経線維の走行や,どのような機能を伝達しているのか熟知していないと,術後に重篤な神経脱落症状を来すことになる.このため当施設では以前よりbrain fiber dissection 法を用いた屍体脳の解剖学的研究を行い,脳実質内の神経機能解剖の修得や手術方略の計画に応用している.これから脳神経外科手術を行う若い脳神経外科医にとって,脳内の神経線維束を自ら剥離して確認することは重要で,かつ手術に必要な“生きた”知識として役立つと確信する.本稿ではbrain fiber dissection法を円滑に行うために必要な脳白質内の神経線維束の解剖とその剥離法を,特に大脳半球の外側面を中心に示し,さらに本法を用いた脳機能解剖の研究が非常に有用であった難治性てんかん例に対する大脳半球離断術を提示する.
掲載誌情報