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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科33巻3号

2005年03月発行

雑誌目次

コンピュータ支援手術雑感

著者: 渡辺英寿

ページ範囲:P.197 - P.198

コンピュータ支援手術という用語が使われるようになって,はや15年以上の歳月が経った.今では脳神経外科学会でも定番の話題である.

 振り返ると,私がニューロナビゲータを発表したのは1987年である.コンピュータ支援手術という用語が定着し始めたのはそれ以降であろうと思う.そのころ,工学者と医学者が合同でコンピュータ外科学会を発足させた.面白いことにほぼ同じころ,米国からもニューロナビゲータと同じようなシステムが報告された.これは超音波を発信して距離を測るもので,さらに手術顕微鏡内に目標物の輪郭を投影するという現在でも最先端の技術を統合したものであった.残念ながら,当時のコンピュータの処理能力が追いつかなかったためか実用化しなかった.私のものはアーム式で表示も比較的単純な仕様であったので,何とか商品化第一号となった.当時,コンピュータはパソコンとして普及しつつあったがOSはDOSの時代でマウスもなく,画像表示は初歩的でCT画像を表示するだけでも精一杯の状態であった.その後,パソコンの機能は急速に向上し,普通のパソコンでも三次元再構成が可能な時代となった.最初は,コンピュータに慣れないドクターでも違和感なく使えるように,“コンピュータらしくない”装置をつくることに腐心したものであるが,現在ではコンピュータはごく普通の存在となり,ようやく手術室の中でも市民権を得始めたように思われる.コンピュータ支援手術を行っていること自体が学会での“売り”にならなくなってきた現在において初めて,実用化技術としての地歩が固まったのではないかと思う.

総説

症候性未破裂脳動脈瘤

著者: 伊達勲 ,   徳永浩司

ページ範囲:P.201 - P.211

Ⅰ.はじめに

 未破裂脳動脈瘤には,無症候性のものと症候性のものがあり,脳ドックなどの普及によって無症候性のものが発見される機会が増えている.一方,症候性の未破裂脳動脈瘤は,脳神経障害,痙攣,塞栓性脳虚血症状,脳の圧排による神経症状などを呈し,無症候性のものに比較して破裂する危険性が高い90)ことから,外科的治療が必要となることが多い.筆者らはこれまで,症候性未破裂脳動脈瘤に関して,視力視野障害を呈したもの17, 20),海綿静脈洞部,硬膜輪近傍あるいは錐体部の巨大脳動脈瘤18,19,21-23)などの自験例をまとめ,報告してきた.本総説では,これらの経験を含め,症候性未破裂脳動脈瘤に関して,頭痛,視力視野,動眼神経麻痺,海綿静脈洞,その他の脳神経症状,周囲脳への圧排,てんかん,脳梗塞などをキーワードに,文献をまとめる.なお,本稿では通常の囊状動脈瘤について述べ,解離性動脈瘤に関しては,紙幅の関係もありふれない.

解剖を中心とした脳神経手術手技

脳血管の機能解剖

著者: 小宮山雅樹

ページ範囲:P.213 - P.224

Ⅰ.はじめに

 開頭手術時に局所解剖の知識が重要であると同様に,脳血管内治療を行うには局所脳血管解剖の知識は重要である.脳血管解剖は,血管発生の過程での変異や外傷・梗塞・感染などの種々のストレスによって機能的に大きく変化するため,この動的変化を考慮した機能解剖の知識が重要である.個体発生や系統発生の知識は,その理解に大きく役立つ11).発生学的な背景を考えながら脳血管の機能解剖について解説する.

経シルビウス裂到達法による選択的海馬扁桃体摘出術―手術法および手術成績について―

著者: 森野道晴 ,   宇田武弘 ,   内藤堅太郎 ,   川上太一郎 ,   石黒友也 ,   石橋謙一 ,   寺川雄三 ,   一ノ瀬努 ,   原充弘

ページ範囲:P.225 - P.233

Ⅰ.はじめに

 難治性側頭葉てんかんの外科治療において前側頭葉切除による海馬扁桃体摘出術(ATL)が最も標準的に行われているが,一方では側頭葉内側焦点を選択的に摘出するために多種の到達法が報告されている7,10-13,16,18).選択的海馬扁桃体摘出術の最初の報告は1958年のNiemeyerの中側頭回経由の経皮質到達法である11).その後,Yasargilら18)が経シルビウス裂到達法による選択的海馬扁桃体摘出術(TSA)を発表した.最近では上側頭溝12)あるいは下側頭溝10)経由の経皮質到達法,側頭葉下窩到達法7,13),TSAの変法16)などが報告されている.しかし,これらの選択的海馬扁桃体摘出術とATLの術後の発作予後については大きな差はなく,また左側頭葉てんかんについては選択的に海馬扁桃体を摘出しても術後に言語性記銘力が低下するという報告3)があり,側頭葉内側部に焦点が存在する症例に対しても選択的海馬扁桃体摘出術が絶対適応になっていない.選択的海馬扁桃体摘出術のなかでもTSAはシルビウス裂を末梢まで大きく開放する必要があり,また手術操作によって中大脳動脈にspasmを来す可能性が高いことなどにより,敬遠される傾向にある.しかしながら当施設では2001年よりTSAを行い,発作予後および術後の高次機能について良好な結果を得ており,非常に良い手術法と考えている.そこで本稿では代表症例の術中写真を提示しながら本手術法の要点と発作予後および術前後の高次機能を含む手術治療成績について述べ,TSAの有用性について報告する.

研究

Black blood MRIによる非侵襲的頸動脈プラーク性状評価

著者: 吉田和道 ,   後藤正憲 ,   舟木健史 ,   押本剛 ,   綿谷崇史 ,   鳴海治 ,   沈正樹 ,   山形専

ページ範囲:P.235 - P.241

Ⅰ.はじめに

 頸動脈狭窄症の治療においては狭窄率のみでなくプラークの性状を評価することも非常に重要である.特にcarotid stenting(CAS)が急速に普及しつつある現状では8,15,17),その適応を判断するうえで正確かつ侵襲性の低いプラーク評価法の必要性がますます高くなっている.

 近年,機器の発達と撮像法の進歩に伴い,高分解能magnetic resonance image(MRI)を用いたプラーク評価が新たな試みとして注目されている2,4,13,18).そこでわれわれは非侵襲的プラーク評価におけるblack blood MRI(BB-MRI)7)の有用性を検討したのでここに紹介する.

未破裂脳動脈瘤の治療におけるMRA volume renderingの有用性

著者: 成澤あゆみ ,   社本博 ,   刈部博 ,   清水宏明 ,   藤原悟 ,   冨永悌二

ページ範囲:P.243 - P.248

Ⅰ.はじめに

 未破裂脳動脈瘤の術前検査として,digital subtraction angiography(DSA),three-dimensional computed tomography angiography(3D-CTA),magnetic resonance angiography(MRA)などの方法が普及している.さらに近年はDSAやMRAの三次元画像処理法が進歩し3D-DSA,3D-MRA(volume renderingなど)として利用されるようになってきた.一方,未破裂脳動脈瘤の術前に評価すべき情報には,動脈瘤自体の形態,周囲の血管構築,周囲の脳・神経・骨との位置関係,術中一時遮断時の側副血行,などが挙げられるが,各検査法による得手不得手があり,さらに侵襲の度合いも異なる.特に,最近臨床応用可能となったMRA volume rendering(以下MRA VR)については,その有用性や限界に関する報告は少ない.そこで今回,未破裂脳動脈瘤における術前検査としての有用性を検討したので報告する.

症例

脳静脈洞血栓症を合併した縊首の1例

著者: 山本健太郎 ,   柳川洋一 ,   岩本慎一郎 ,   金子直之 ,   阪本敏久 ,   岡田芳明

ページ範囲:P.251 - P.254

Ⅰ.はじめに

 静脈洞血栓症の原因は,脱水・外傷・感染・妊娠・経口避妊薬等,多岐にわたる2).しかし,縊首により発症したという報告は,渉猟し得た範囲では認められなかった.今回われわれは,縊首後に意識障害を呈し,来院時の頭部CT上右側優位脳腫脹を認め,当初低酸素脳症による脳腫脹と考えたが,後の画像と臨床像から脳腫脹は静脈洞血栓症によるものと判明した症例を経験した.そこで,文献的にその機序を考察したのでここに報告する.

後頭蓋窩減圧術後C1後弓の再生により再狭窄を来したキアリⅠ型奇形の1例

著者: 吉藤和久 ,   今泉俊雄 ,   飯星智史 ,   宮田圭 ,   外山賢太郎

ページ範囲:P.257 - P.260

Ⅰ.はじめに

 キアリ1型奇形に対しforamen magnum decompression(FMD)は有効な外科的治療と考えられるが,効果不十分や再発のため再手術を要する症例もある.われわれはFMDおよび硬膜の外層切開を行ったあと,減圧が不十分であったことに加え,骨性要素の再生による再狭窄のため,再手術を行った1例を経験した.キアリ奇形における再手術の原因として減圧部の骨再生が一因となった報告は少なく,今回文献的考察を加えて報告する.

Methotrexate大量療法にて寛解後,乳房転移を来した中枢神経原発悪性リンパ腫の1例

著者: 大田正流 ,   竹下岩男 ,   松本健一 ,   松岡士郎 ,   池田公明

ページ範囲:P.263 - P.268

Ⅰ.はじめに

 本症例は中枢神経原発非ホジキン悪性リンパ腫で,いったん完全寛解が得られたが約2年後に乳房転移を生じ,最終的には脳内局所再発で死亡した患者である4,8).節性リンパ腫と節外性リンパ腫では臨床経過,形態的,免疫学的特徴が異なり,臓器特異的悪性リンパ腫としての特殊性を認識することが重要となってきている.特に中枢神経原発悪性リンパ腫の予後は節外性リンパ腫の中で最も予後不良であり,本症例を通じて,中枢神経原発悪性リンパ腫の再発後の治療の難しさについて報告する.

内頸静脈を通じ頭蓋外へと進展した髄膜腫の1手術例

著者: 宮城尚久 ,   盛満人之 ,   藤村直子 ,   福島慎太郎 ,   前田充秀 ,   広畑優 ,   徳富孝志 ,   重森稔

ページ範囲:P.271 - P.275

Ⅰ.はじめに

 われわれは後頭蓋窩起源でありながら内頸静脈内を通じ頸部へ達する頭蓋外進展を示し,さらに頭蓋内外で異なる組織像を呈した髄膜腫の1手術例を経験した.このような症例は極めて稀であり,本症例の手術所見および病理所見をもとに頭蓋外進展機序を中心に報告する.

急性リンパ性白血病に対する放射線治療後に発生した多発性髄膜腫の1例

著者: 松田良介 ,   二階堂雄次 ,   山田與徳 ,   三島秀明 ,   玉置亮

ページ範囲:P.277 - P.280

Ⅰ.はじめに

 小児白血病の75%を占める急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukaemia,ALL)は化学療法の発達とともに劇的に予後が改善してきた疾患である.1960年代までは平均生存期間が1年程度であったのが,現在では70~80%が完治するようになっている.

 しかし1970~80年代には中枢神経系白血病の予防のために画一的に予防的頭蓋放射線照射が行われていた経緯があるため,その後放射線誘発性髄膜腫の報告が散見されるようになった.

 今回われわれは,急性リンパ性白血病に対する放射線治療の27年後に発症した放射線誘発性髄膜腫の症例を経験したので文献的考察を含めて報告する.

腰部くも膜下腔―腹腔シャント術により脳PET所見が改善した上矢状静脈洞血栓症の1例

著者: 穂刈正昭 ,   黒田敏 ,   石川達哉 ,   岩﨑喜信

ページ範囲:P.281 - P.286

Ⅰ.はじめに

 静脈洞血栓症による静脈還流障害・頭蓋内圧亢進はよく知られた病態であるが,その脳循環代謝の所見についての報告は少ない7).今回,われわれは,腰部くも膜下腔-腹腔シャント術により脳PET所見が改善した上矢状静脈洞血栓症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

報告記

第2回日米脳神経外科親善シンポジウム報告(2004年10月5日)

著者: 宮地茂

ページ範囲:P.288 - P.289

第2回日米脳神経外科親善シンポジウムは第63回社団法人日本脳神経外科学会総会のサテライトシンポジウムとして,𠮷田 純会長(名古屋大学大学院)のもと総会前日の10月5日に名古屋市能楽堂にて行われました.あいにくの大雨で出足が危ぶまれましたが,参加者は180名余りあり,聴衆はup-to-dateな米国側のpresenterの発表に熱心に聴き入っておられました.

 テーマは,San Diegoで昨年行われた第1回と同様,脳神経外科領域全般をカバーしたうえで,下記の14のトピックスに集約しました.独米シンポジウムが同時期に行われたため,残念ながら演者の先生が直前に何名か来日不可能となり,演者変更のために最後までどたばたしたものの,1つも欠けることなくほぼ時間通りの進行で無事終了することができました.日本側のコメンテーターの先生方には,事前に演者の発表内容について打ち合わせが十分できなかったセクションが多いにもかかわらず,周到な準備で的を射たコメントをいただき,日本の実力を十分披露していただきました.

連載 IT自由自在

脳神経外科ビデオの高画質圧縮保存

著者: 片倉康喜

ページ範囲:P.290 - P.295

はじめに

 脳神経外科手術は主な操作を顕微鏡,内視鏡等光学機器下に行うため,手術の内容はビデオに保存され,術前後の検討や教育,学会発表に利用されてきた.近年,ビデオ信号のデジタル処理技術の進歩は著しく,従来では考えられなかった利用法が可能となりつつある.われわれは,デジタルビデオを適切に圧縮することで,ビデオ情報の有効利用を行っている.今回,Macintoshコンピュータを対象とした手法をご紹介する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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