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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科33巻4号

2005年04月発行

雑誌目次

新臨床研修制度における脳神経外科選択

著者: 島克司

ページ範囲:P.307 - P.308

平成16年度より医師国家試験が1カ月前倒しになるのを受けて,今年の防衛医科大学校脳神経外科の卒業試験は,1カ月早く9月10日に終了した.毎年卒業試験の時期になると,試験の成績以上に気になるのが,卒業生の進路状況である.防衛医大のような自衛隊医官養成の職能大学でも科目の選択は基本的には学生の自由である.

 したがって,この時期になると他大学にみられるような科目選択のための説明会が各講座主催で開かれる.しかし,周知のように本学の学生は,卒業と同時に自衛隊医官となり陸海空の自衛隊に所属することになるため,他大学のような講座の入局制度は大学創設時からない.それでも各科が競って選択科目の勧誘を行う最大の理由は,講座のマンパワーの確保にある.もともと学生定員が少ない(2004年度卒業予定者54名)ため,これまで各診療部の選択は,年平均数人に過ぎず,当脳神経外科の選択も24年間の年平均は2.5人である.しかし,10年ほど前からみられるようになった外科系希望者の減少に加えて,女性医師倍増の影響などから,脳神経外科選択は全国的に減少傾向にある.当大学でも最近10年間に限れば,脳神経外科選択者は年平均2.1人に減少している.自衛隊医官としての脳神経外科医の必要性はともかく,首都圏の第三次救急病院や特定機能病院としてのactivityを保つには,厳しい状況が続いている.

総説

Lumbar narrow canalの手術

著者: 水野順一 ,   中川洋

ページ範囲:P.311 - P.324

Ⅰ.はじめに

 脊柱管狭窄症が最初に報告されたのは1803年にさかのぼり,Portalが報告したくる病に高度の脊柱変形を合併し四肢麻痺となった症例と考えられる26).それ以降脊柱管狭窄によると考えられる症例報告が散見されるようになるが,脊柱管狭窄という概念は提唱されていなかった.1949年Verbiestは特発性発育性狭窄(idiopathic developmental stenosis)という概念を提唱し,先天奇形などによる病的な狭小化がなくても脊柱管の狭小化は起こるとし,腰部脊柱管狭窄症の概念を確立した41).彼は椎弓,関節突起,椎弓根の発育異常による脊柱管の狭小化を基本とし,いわゆる骨性因子による脊柱管狭小化であった.さらに彼は1954年,1955年に馬尾の圧迫による間欠性跛行が存在し,これはdevelopmentalな脊柱管の狭小化と退行性変化や椎間板ヘルニアが関与して発生すると報告した42,43).1968年Schatzkerら32)はこれまでの報告を整理して,脊柱管狭窄症の分類を行った(Table 1).その後骨性因子ばかりでなく種々の後天性要因にて脊柱管狭窄が生じることがわかり,骨性因子に加えて靱帯因子も深く関与していることが指摘された1)

 腰部脊柱管狭窄症の分類については様々な試みがなされている.Verbiest 44)は先天性と発育性狭窄症に大別し,後天性狭窄症を除外している(Table 2).現在,最も広く用いられている分類はArnoldiら1)による国際分類であると考えられる(Table 3).しかしこの分類に対しては,degenerative stenosisの中に,病変部位と原因疾患とが並列になっている等の問題点も指摘されている.わが国では1970年前半まではその概念が一般化されておらず,lumbar narrow canalの定義はあいまいなものであったが,蓮江ら12)が国際分類をもとに腰部脊柱管狭窄症を分類した.このような歴史的変遷をたどり,現在の腰部脊柱管狭窄症の概念が確立されるに至った.

解剖を中心とした脳神経手術手技

補足運動野近傍の腫瘍に対する外科治療

著者: 山根文孝 ,   加藤宏一 ,   落合卓 ,   丸山隆志 ,   村垣善浩 ,   池田昭夫 ,   堀智勝

ページ範囲:P.327 - P.336

Ⅰ.はじめに

 補足運動野(supplementary motor area:以下SMA)に存在する腫瘍の摘出術について述べる.この部位の摘出においては従来より永続的神経脱落症状を残さない,あるいは残存してもごく軽微な症状であるとされている14,20,21).ただし,運動野に接して存在していること,また術後においてはしばしば難治なてんかん発作を合併することもあり,機能的によりよい予後を得るためには機能マッピングのみならず発作起始領域についても正確に同定しておく.SMA摘出によって生じる機能障害を補足運動野症候群(SMA症候群)と総称するが,SMA症候群の回復については,回復の期間や程度についての個人差が多く,症例によって差異を認める1,12,13)

 SMA近傍の腫瘍において,その摘出を前提とした脳機能マッピングにおいて問題となるのは,1)腫瘍周辺の詳細な位置関係,すなわち一次運動野およびSMAの正確な同定,2)皮質下線維の走行と腫瘍の位置関係,3)術中ナビゲーションの利用と摘出範囲の確認(根治性を高めるための術中MRIの応用),などである.以下,SMA野周辺の腫瘍に対する外科治療についてその現状と問題点について述べる.

研究

無症候性もやもや病の臨床像と予後―全国アンケート調査の結果をもとに

著者: 山田勝 ,   藤井清孝 ,   福井仁士

ページ範囲:P.337 - P.342

Ⅰ.はじめに

 MRAなどの非侵襲的検査の導入や脳ドックの普及によって,あるいは家族性もやもや病の精査を行うようになったため,無症候性もやもや病(asymptomatic moyamoya disease)が発見されるようになってきた.しかし,無症候性もやもや病のくわしい疫学調査の報告はなく自然歴は不明であり,その治療法についてもコンセンサスはない.無症候性もやもや病の全国的な実態アンケート調査の結果をもとに,無症候性もやもや病の臨床像と予後を解析して,あわせてその適切な対応を考察した.

Bipolar irrigation systemによる破裂脳動脈瘤術中radical clot removalの脳血管攣縮予防効果

著者: 鶴野卓史

ページ範囲:P.343 - P.348

Ⅰ.はじめに

 くも膜下出血後の脳血管攣縮に対しては様々な対策があり,各施設で独自の工夫がなされている.代表的なものとしては,術中t-PA洗浄1,7),術後ウロキナーゼ脳槽洗浄6,10),fasudil hydrochloride11),ozagrel sodium12)などの薬剤,triple H療法8)などが挙げられる.当施設では過去5年間早期手術,術後2週間nicardipineおよびfasudil hydrochlorideの投与を基本としてきた.

 そのうちで術中にbipolar irrigation systemを使用してくも膜下血腫のradical removalを行ったグループと,通常の用手的洗浄によるclot removalのみを行ったグループに分け,両者での脳血管攣縮発生率,予後について比較検討した.

テクニカル・ノート

MRAによる視神経の3次元画像―前交通動脈瘤と頭蓋咽頭腫への応用

著者: 奥山徹 ,   福山篤司 ,   福山浩一 ,   池野邦弘 ,   荒良木宏之 ,   岡田欣也 ,   相馬紀子

ページ範囲:P.351 - P.355

MRAを用いて,視神経を動脈瘤や腫瘍と一緒に表示した3次元画像を作成した.その撮影方法と解析方法を報告する.

症例

器質化した慢性硬膜下血腫に対する開頭術

著者: 大川都史香 ,   小倉光博 ,   田中禎之 ,   寺田友昭 ,   板倉徹

ページ範囲:P.357 - P.362

Ⅰ.はじめに

 慢性硬膜下血腫は通常,1度の穿頭血腫除去術で治癒するが,器質化血腫のため穿頭術では血腫除去が困難な例や,再発を繰り返す例があり治療に難渋することがある.今回,穿頭術では治療困難な慢性硬膜下血腫に対して,開頭術を行うことにより根治せしめることが可能であった症例を経験したので,手術適応や手術方法について考察を加え報告する.

対側動眼神経麻痺を呈した破裂内頸動脈瘤の1例

著者: 斉藤群大 ,   太田原康成 ,   小川彰

ページ範囲:P.365 - P.368

Ⅰ.はじめに

 動眼神経麻痺を伴う脳動脈瘤としては内頸動脈瘤と脳底動脈瘤が知られている.この場合,動眼神経麻痺は通常動脈瘤と同側に生じる.今回われわれは,対側動眼神経麻痺を呈した破裂内頸動脈瘤の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

遠位部塞栓を繰り返した頸部椎骨動脈解離の1例

著者: 藤本憲太 ,   新靖史 ,   飯田淳一 ,   平林秀裕 ,   中瀬裕之 ,   川口正一郎 ,   榊壽右 ,   中川裕之 ,   吉川公彦

ページ範囲:P.371 - P.375

Ⅰ.はじめに

 椎骨動脈解離(vertebral artery dissection; VAD)は,患側椎骨動脈を閉塞する治療法をとることが多く,頸部痛,虚血症状などで発症した例については,治療の適応,タイミングはcontroversyである.今回遠位部塞栓を繰り返したVADを経験したので,治療の適応とタイミングについて検討する.

Hyperform occlusion balloonを用いて破裂急性期にコイル塞栓術を施行した脳底動脈先端広頸動脈瘤の1例

著者: 松本博之 ,   藤田浩二 ,   三木潤一郎 ,   辻直樹 ,   寺田友昭 ,   板倉徹

ページ範囲:P.377 - P.381

Ⅰ.はじめに

 広頸動脈瘤は標準的なコイル塞栓術だけでは十分な塞栓効果が得られず,いまだ多くの問題が残る治療困難な動脈瘤の1つである.これまでにバルーンやステントを併用したneck remodeling techniqueや3Dコイルの開発など,手技およびデバイスに様々な工夫がされてきた1,3-6,10).今回,われわれは新たなバルーンであるHyperform occlusion balloon(Micro Therapeutics, Irvine, CA)を用いてコイル塞栓術を行う機会を得たので,このバルーンの特性とneck remodelingにおける有用性を報告し,neck remodelingを行う際の問題点についても考察する.

Bihemispheric ACA分岐部に発生した破裂脳動脈瘤の1例

著者: 柏﨑大奈 ,   黒田敏 ,   堀内成好 ,   高橋明弘 ,   浅野剛 ,   石川達哉 ,   岩﨑喜信

ページ範囲:P.383 - P.387

Ⅰ.はじめに

 遠位部前大脳動脈(distal anterior cerebral artery;DACA)に発生する脳動脈瘤は,動脈瘤全体の2.0~9.0%とされており比較的稀である3-5,7-14).その中でもsupracallosal portion (A4-A5)に発生する脳動脈瘤は,DACA動脈瘤全体の約6%と極めて稀である9).また,DACA動脈瘤の特徴として,azygos ACA,bihemispheric ACA,third A2などの前大脳動脈(anterior cerebral artery; ACA)の走行異常を伴うことが多いとされているが,その大部分はazygos ACAに合併した例である1,5,10,15)

 今回,われわれは,bihemispheric ACAの分岐部に発生したDACA脳動脈瘤破裂によりくも膜下出血を来した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

開頭術後短期間で再増大した器質化慢性硬膜下血腫の1例

著者: 深澤恵児 ,   坂倉允 ,   丹羽惠彦 ,   山本順一 ,   倉石慶太 ,   毛利元信

ページ範囲:P.389 - P.394

Ⅰ.はじめに

 器質化慢性硬膜血腫は全慢性硬膜下血腫の0.5~2.0%と言われている.比較的稀な疾患であり,その手術方法については様々な意見がある.今回われわれは穿頭術では治癒せず,開頭術後,短期間に器質化血腫が再増大した難治性器質化慢性硬膜下血腫症例を経験した.開頭手術所見より検討した手術法に関するわれわれの考えを若干の文献的考察を加えて報告する.

報告記

1st ACNS/AASNS/WFNS Joint Educational Neurosurgical Meet and Cadaver Dissection Course in Bali, Indonesia 報告記(2004年12月1日~3日)

著者: 加藤庸子 ,   神野哲夫

ページ範囲:P.396 - P.398

さる2004年12月1日から3日にかけて,インドネシア・バリ島にありますUdayana大学の解剖教室と,クタ区域のDiscovery Kartika Plaza Hotelにおいて,第1回ACNS/AASNS/WFNS脳神経外科学合同学会および解剖ワークショップが行われました.参加者は,アジア10カ国から380名近い若手から中堅の脳神経外科医を中心とし,executive committeeであるシニアの先生方に御参集をいただきました.本会は,これから伸びようとする,特に若手の脳神経外科医の教育ということに主眼をおき,解剖ワークショップでは,米国Rohton先生の協力を得て,2体の柔らかい,現実の手術さながらのヘッドを入手し,また現地からは10体のヘッド,ならびに脊椎の解剖のための全身を準備していただきました.CadaverのHands-on Workshopでは,日本からも頭蓋底腫瘍や脳室内手術の第一線をリードされる先生方を講師としてお招きし,また,外国からもその道の一線の方共々,レクチャーに引き続く解剖Hands-onワークショップを,1日フルに行いました.

 2日目は,教育講演を主体として,血管障害,脳腫瘍,脊椎・脊髄部門,小児関係を含めて,WFNSの代表の先生方からも立派な講演をいただきました.講演数としては110題で,これに加え,モーニングセミナー,ランチョンセミナーなども盛りだくさんにランニングし,アジアからの若手の先生方に最新の知識のexposureと手術手技,患者の術前術後の管理,手術機器,モニターなどの幅広い領域に渡る教育講演を行うことができました.ディスカッションの時間が若干不足しましたけれども,フロアで多くの若手の先生からの質問を受ける場面も見受けられました.

連載 IT自由自在

手術室の映像を医局等の離れた場所に中継する方法

著者: 和田淳 ,   中島伸幸 ,   原岡襄

ページ範囲:P.400 - P.402

はじめに

 「手術の内容や進行を医局や病棟で確認したい」と思うことがあるのではないだろうか.手術顕微鏡の映像を,離れた部屋でリアルタイムに閲覧するには,どのようにすればよいか.数10mの距離であれば,たんに映像ケーブルを引き回せば済むため,手術室の医師控え室や麻酔科医室などで手術映像をモニターしている病院は多い.しかし,それ以上の距離の場合には,映像を伝搬する何らかの特殊な設備が必要となる.映像を離れた場所に伝送するためには,主に2つの方法がある.1つはNTSC信号を光信号に変換して,光ファイバーを通して遠方に伝達する方法,もう1つはモニター映像をデジタル化して,LANを利用して電送する方法である.本稿では,近年多くの病院で設置されている院内LANが利用可能な,後者に関して解説する.数年前までは大規模な設備と費用を要す内容であったが,昨今のIT技術の進歩により,医局単位での設置も十分可能となった.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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