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総説
神経膠腫における遺伝子解析とテーラーメイド治療
著者: 渡邉学郎1 吉野篤緒1 片山容一1
所属機関: 1日本大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.537 - P.553
文献購入ページに移動近年の分子生物学の飛躍的な発展により,癌の発生,増殖,浸潤には,細胞周期関連遺伝子,ミスマッチ修復関連遺伝子,増殖因子受容体遺伝子,細胞浸潤・接着関連遺伝子,血管新生関連遺伝子などの様々な遺伝子の変異の重積が必須であることが明らかにされてきた.神経膠腫gliomaにおいても,複数の遺伝子異常が複雑に関与していることが判明してきている.もし,gliomaをその生物学的特性と密接にかかわる遺伝子異常の組み合わせに従って分類できれば,個々の症例に応じた治療法の選択,いわゆるテーラーメイド治療が可能になり得ると期待されるが,gliomaをめぐるこれらの分子生物学的知見が直接日常の診療に役立つには至っていないのが現状である.しかしながら,過去十数年間,ブレークスルーとは言えないまでも,oligodendroglial tumorおよびその化学療法感受性と関連する遺伝子マーカーの確立,O6-methylguanine-DNA methyltransferase (MGMT)をはじめとした薬剤耐性因子の解明など,臨床的に意義ある知見が確実に蓄積されてきている.最近ではDNAマイクロアレイ技術の発展により,数々の癌腫において遺伝子発現プロファイルリングの解析が急速に進んでおり,gliomaにおいても治療反応性を含めた生物学的特性にかかわる分子機構が網羅的に解明され,それに基づいた臨床応用も現実味を帯びてきている.ヒトゲノムの塩基配列が解読されたポストシークエンス時代におけるテーラーメイド治療に向けて,現在わかっている範囲でも臨床にどのように応用するか,常に考察し,システムをセットアップしていく必要がある.
本稿では,成人のdiffuse gliomaにおける遺伝子異常とその変化がもたらす生物学的・臨床的意義について概説するとともに,われわれが現在試みているテーラーメイド化学療法を紹介する.
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