文献詳細
文献概要
解剖を中心とした脳神経手術手技
Patch graftを用いた頸動脈内膜剝離術
著者: 徳永浩司1 田宮隆2 伊達勲1
所属機関: 1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経病態外科学(脳神経外科) 2香川大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.759 - P.774
文献購入ページに移動頸動脈内膜剝離術(carotid endarterectomy, CEA)は欧米の大規模randomized controlled trialにより症候性および無症候性の頸部内頸動脈狭窄症患者におけるstroke発生の危険性を有意に下げることが示されている12,29-32,61).最近では頸部内頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント(carotid artery stenting, CAS)の有効性に関する報告も多く36,76),当施設においてもCAS施行例が増加しているが,現在でも治療手段の第一選択はCEAであると考えている.今後もCEAによる治療の正当性を保つためには周術期はもとより,長期の経過観察においていても有効性を示すことが必要である.
CEAの手術手技に関してはそれぞれの施設ごと,術者ごとに異なる点があり,それらが治療成績に及ぼす影響については結論に至っていない点も多い.そのような手技の違いの1つとして動脈縫合時のpatch graft使用の有無が挙げられる50,52,56,71,72).European Carotid Surgery Trial(ECST)における手術手技に関する分析では,patchの使用頻度に関しては術者ごと,あるいは国ごとにvariationが大きいとされた16).イギリスからの報告では21%の術者は常にpatchを使用し,29%では時に使用,一方50%はまったく使用しなかった57).本邦ではCEAの際,patch graftを用いた動脈縫合(patch angioplasty)を行う施設は必ずしも多いとは言えない状況であるが,われわれは術直後の急性閉塞および長期再狭窄の予防を目的としてroutineにpatch graftを使用している.通常はpatchを使用しない術者にとっても,生来遠位内頸動脈が細い症例やCEA後の再狭窄例などではpatch angioplastyを迫られる状況となり3,45,48,58),CEAを行う術者にとって本手技は必ず習得しておくべきoptionであろう1,3).
CEAに必要な手術解剖に関しては本邦でも過去に多くの優れた論文があり28,37,40,41,64,77,78),本稿では解剖については実際の手術手技に関連したポイントを述べるにとどめる代わりに,術後の急性閉塞,再狭窄,patch graftに関する過去の論文をreviewし,同時にわれわれの行っているpatch graftを用いたCEAの手術手技について詳述したい.
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