文献詳細
文献概要
解剖を中心とした脳神経手術手技
拡大経蝶形骨洞手術
著者: 北野昌彦1 種子田護1
所属機関: 1近畿大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.853 - P.864
文献購入ページに移動Ⅰ.はじめに
経蝶形骨近接法(transsphenoidal approach)は,下垂体腺腫に対する第一選択の術式である.本法はアプローチに伴う脳損傷がまったくないという利点があるが,鼻腔という解剖学的に限られた空間より進入するため,術野が狭く深い欠点がある.標準的な経蝶形骨洞法では,前方や上方への術野の展開は後部篩骨洞の膨隆により制限され,左右は海綿静脈洞の下壁の一部を露出するのが限界である.このため,腫瘍の摘出において最も重要かつ危険な視神経,海綿静脈洞,内頸動脈周囲の操作が,盲目的にならざるを得ない.そして,このことが重篤な手術合併症を引き起こす原因となる.これを避けるために,上顎洞を経由する経上顎洞法や顔面を切開して篩骨洞を削除する経篩骨洞法など,多くの方法が報告されているが,いずれの方法も侵襲的なため一般化していない6).本稿では,従来の方法では手術治療が困難であるトルコ鞍近傍腫瘍に対する,粘膜下後部篩骨洞開放による拡大経蝶形骨洞法について解説する.
経蝶形骨近接法(transsphenoidal approach)は,下垂体腺腫に対する第一選択の術式である.本法はアプローチに伴う脳損傷がまったくないという利点があるが,鼻腔という解剖学的に限られた空間より進入するため,術野が狭く深い欠点がある.標準的な経蝶形骨洞法では,前方や上方への術野の展開は後部篩骨洞の膨隆により制限され,左右は海綿静脈洞の下壁の一部を露出するのが限界である.このため,腫瘍の摘出において最も重要かつ危険な視神経,海綿静脈洞,内頸動脈周囲の操作が,盲目的にならざるを得ない.そして,このことが重篤な手術合併症を引き起こす原因となる.これを避けるために,上顎洞を経由する経上顎洞法や顔面を切開して篩骨洞を削除する経篩骨洞法など,多くの方法が報告されているが,いずれの方法も侵襲的なため一般化していない6).本稿では,従来の方法では手術治療が困難であるトルコ鞍近傍腫瘍に対する,粘膜下後部篩骨洞開放による拡大経蝶形骨洞法について解説する.
参考文献
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