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コラム 医事法の扉
第6回 「因果関係」
著者: 福永篤志1 河瀬斌1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.1057 - P.1057
文献購入ページに移動 因果関係とは,先行事実と後行事実とが原因・結果の関係にあることをいいます.この定義だけをみると極めて明確ですが,結果に影響を及ぼす要因は医療行為だけではありません.そのため,医療過誤訴訟では,因果関係が不明瞭で,難しい問題が起こることがよくあります.具体的には,ある診療行為後に死亡等の損害が発生した場合に,その診療行為だけが原因なのか,患者の特異体質のためではないか,あるいは,診療行為後に予期せぬ事態が発生したためではないかなどが問題となります.
この点のリーディングケースといわれるのが「ルンバールショック事件」(最判昭和50年10月24日)です.もともと出血性素因のある化膿性髄膜炎の3歳の男児に,激しく抵抗されながらルンバールをしたところ,約15分後に痙攣が起こり,脳出血を発症し重篤な後遺障害を遺したケースに対して,最高裁は,「訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信をもちうるものである」とし,ルンバールと脳出血の発生との因果関係を認め,高裁に差し戻しました(高裁では,医師の対応の遅れに対し過失が認定されました).
この点のリーディングケースといわれるのが「ルンバールショック事件」(最判昭和50年10月24日)です.もともと出血性素因のある化膿性髄膜炎の3歳の男児に,激しく抵抗されながらルンバールをしたところ,約15分後に痙攣が起こり,脳出血を発症し重篤な後遺障害を遺したケースに対して,最高裁は,「訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信をもちうるものである」とし,ルンバールと脳出血の発生との因果関係を認め,高裁に差し戻しました(高裁では,医師の対応の遅れに対し過失が認定されました).
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