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テクニカル・ノート
頭蓋骨腫瘍に対する簡便で正確な頭蓋形成法
著者: 園田順彦1 加藤秀明1 大山秀樹1 新妻博1
所属機関: 1仙石病院脳神経外科
ページ範囲:P.599 - P.603
文献購入ページに移動頭蓋欠損に対する頭蓋骨形成術の歴史は古く,最古の脳外科手術の1つである2).さまざま材料がimplantとして用いられてきたが,重要なポイントとしては,①十分な強度があること,②整形が容易であること,③長期間安定であること,④感染に強いこと,⑤炎症反応が低いこと,⑥発ガン性がないこと,⑦画像診断時のアーチファクトがでにくいこと,などが挙げられる3).②にも関係するが,美容上の問題も重要であり,特に顔面にかかる前頭部における頭蓋形成は,患者の手術の満足度,術後のQOLに大きく影響すると考えられる.Implantの材料としては,古くは金属が用いられていたが,近年は非金属のhydroxyapatite,siliconeが使用されている.欠点としては第一に整形が非常に困難であること挙げられる3).一方,1945年に導入されたmethylmethacrylateは本邦でも汎用されている7).硬化の初期段階では可鍛性であり,どのような形の欠損にも対応できる点12),金属のimplantと異なりCTやMRIなどの画像診断の妨げにならないことが長所である6).しかしながら頭蓋骨の形状は想像以上に複雑であり,methylmethacrylateでも正確に復元することはしばしば困難である.またmethylmethacrylateは重合時に熱を発生し周囲組織に障害を及ぼすことから,冷たい生理食塩水などを用い冷却する必要性がある8).
近年はこれらの欠点を補うべく,CT画像に基づきコンピューター計測されたセラミックス製人工頭蓋が使用可能となっている10).しかしながら頭蓋骨腫瘍の手術では,二期的な手術が必要になること,また高価であるためにルーチンに使用されるには至っていない.
そこでわれわれはmethylmethacrylateを用いた方法の問題点を解決するために,鋳型を骨セメントで形成し,それを基に人工頭蓋を形成することを考案した.この方法は,①極めて安価で簡便である点,②形状も正確であることから美容上問題ない点,③頭蓋骨とチタンプレートで固定できることから十分な強度が得られる点より,十分満足できる方法である.本稿では実際の症例を供覧しわれわれの工夫を紹介する.
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