icon fsr

文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科34巻6号

2006年06月発行

文献概要

テクニカル・ノート

頭蓋骨腫瘍に対する簡便で正確な頭蓋形成法

著者: 園田順彦1 加藤秀明1 大山秀樹1 新妻博1

所属機関: 1仙石病院脳神経外科

ページ範囲:P.599 - P.603

文献購入ページに移動
Ⅰ.は じ め に

 頭蓋欠損に対する頭蓋骨形成術の歴史は古く,最古の脳外科手術の1つである2).さまざま材料がimplantとして用いられてきたが,重要なポイントとしては,①十分な強度があること,②整形が容易であること,③長期間安定であること,④感染に強いこと,⑤炎症反応が低いこと,⑥発ガン性がないこと,⑦画像診断時のアーチファクトがでにくいこと,などが挙げられる3).②にも関係するが,美容上の問題も重要であり,特に顔面にかかる前頭部における頭蓋形成は,患者の手術の満足度,術後のQOLに大きく影響すると考えられる.Implantの材料としては,古くは金属が用いられていたが,近年は非金属のhydroxyapatite,siliconeが使用されている.欠点としては第一に整形が非常に困難であること挙げられる3).一方,1945年に導入されたmethylmethacrylateは本邦でも汎用されている7).硬化の初期段階では可鍛性であり,どのような形の欠損にも対応できる点12),金属のimplantと異なりCTやMRIなどの画像診断の妨げにならないことが長所である6).しかしながら頭蓋骨の形状は想像以上に複雑であり,methylmethacrylateでも正確に復元することはしばしば困難である.またmethylmethacrylateは重合時に熱を発生し周囲組織に障害を及ぼすことから,冷たい生理食塩水などを用い冷却する必要性がある8)

 近年はこれらの欠点を補うべく,CT画像に基づきコンピューター計測されたセラミックス製人工頭蓋が使用可能となっている10).しかしながら頭蓋骨腫瘍の手術では,二期的な手術が必要になること,また高価であるためにルーチンに使用されるには至っていない.

 そこでわれわれはmethylmethacrylateを用いた方法の問題点を解決するために,鋳型を骨セメントで形成し,それを基に人工頭蓋を形成することを考案した.この方法は,①極めて安価で簡便である点,②形状も正確であることから美容上問題ない点,③頭蓋骨とチタンプレートで固定できることから十分な強度が得られる点より,十分満足できる方法である.本稿では実際の症例を供覧しわれわれの工夫を紹介する.

参考文献

1)Blum KS, Schneider SJ, Rosenthal AD:Methyl methacrylate cranioplasty in children:long-term results. Pediatr Neurosurg 26:33-35, 1997
2)Dujovny M, Aviles A, Agner C, Fernandez P, Charbel FT:Cranioplasty:cosmetic or therapeutic? Surg Neurol 47:238-241, 1997
3)Dujovny M, Aviles A, Anger C:An innovative approach for cranioplasty using hydroxyapatite cement. Surg Neurol 48:294-297, 1997
4)Durham SR, McComb JG, Levy ML:Correction of large (>25 cm(2)) cranial defects with “reinforced” hydroxyapatite cement:technique and complications. Neurosurgery 52:842-845, 2003
5)D’Urso PS, Redmond MJ:A method for the resection of cranial tumours and skull reconstruction. Br J Neurosurg 14:555-559, 2000
6)Lake PA, Morin MA, Pitts FW:Radiolucent prosthesis of mesh reinforced acrylic. J Neurosurg 32:557-561, 1970
7)Kleinschmidt O:Plexiglas zur Deckung von Schadellucken. Chirung 13:273-277, 1941
8)McComb JG, Heiden J, Weiss MH:Cortical damage from methacrylate cranioplasty. Neurosurgery 3:233, 1978 (abstr)
9)Miyake H, Ohta T, Tanaka H:A new technique for cranioplasty with L-shaped titanium plates and combination ceramic implants composed of hydroxyapatite and tricalcium phosphate (Ceratite). Neurosurgery 46:414-418, 2000
10)Ono I, Gunji H, Kaneko F, Numazawa S, Kodama N, Yoza S:Treatment of extensive cranial bone defects using computer-designed hydroxyapatite ceramics and periosteal flaps. Plast Reconstr Surg 92:819-830, 1993
11)Replogle RE, Lanzino G, Francel P, Henson S, Lin K, Jane JA:Acrylic cranioplasty using miniplate struts. Neurosurgery 40:885-886, 1997
12)Sherburn EW, Silbergeld DL:A new method of acrylic cranioplasty. Surg Neurol 463:292-293, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら