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症例
頸静脈孔神経鞘腫を合併した結節性硬化症の1例
著者: 村井望1 金子隆昭2
所属機関: 1洛和会音羽病院脳神経外科 2彦根市立病院脳神経外科
ページ範囲:P.1007 - P.1011
文献購入ページに移動結節性硬化症(tuberous sclerosis)は神経皮膚症候群の1つとして,古くから知られた疾患である.古典的には,精神遅滞,てんかん,顔面血管線維腫を三徴とするが,これらの症状が出揃うことは3割程度に過ぎない2).近年,この疾患の原因遺伝子(TSC1,染色体9q34;hamartin,TSC2,染色体16p13.3;tuberin)が同定され,多臓器にわたって多彩な症状を呈する全身疾患と認識され,tuberous sclerosis complexと呼ばれるようになった.診断は臨床症状と画像所見に基づいた診断基準に沿って行われる.常染色体優性遺伝性疾患であるが,孤発例も稀ではない10).
中枢神経系では最も特徴的な所見を呈する.皮質,上衣下,白質にわたって複数の結節性病変と石灰化を認めれば,診断は困難ではない.さらに側脳室上衣下結節から発生するsubependymal giant cell astrocytoma(SGCA)がモンロー孔を塞ぎ,閉塞性水頭症を引き起こすことはよく知られている.しかし,それ以外の頭蓋内腫瘍合併の報告は少ない3).
われわれは結節性硬化症の患者で,小児期にSGCAを合併して治療を受け,成人してから頸静脈孔に神経鞘腫を合併した1例を経験した.頭蓋内神経鞘腫の報告は,自験例を含めても2例しかなく,特に頸静脈孔からの発生は初めての報告である.文献的考察を加えて報告する.
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